製造業×品質、転換期を迎えるモノづくりの在り方 特集
連載
» 2010年07月30日 00時00分 公開

本質から分かるタグチメソッド(1):本当の「タグチメソッド」を誤解していませんか? (2/4)

[長谷部 光雄/タグチメソッドコンサルタント,@IT MONOist]

どんな課題に、どんな効果があるのか

 タグチメソッドに興味を持った人から、よく次のようなことを聞かれます。「タグチメソッドはどんな課題に適しているのか、そしてどんな効果があるのか」という質問です。

 タグチメソッドは、開発設計の技術者のための汎用性の高い手法です。特定の専門技術を対象としているわけではないので、ほとんどの技術課題に適用が可能です。技術者の創造性を高め、それによって技術改善を行うという思想だからです。その結果、具体的な技術課題の解決にとどまらず、技術力全般の向上や人材育成、さらには品質を低下させずにコストダウンできる効果も期待されているのです。

 本連載の後半で、品質工学会に報告された実施例を紹介します。実際の例を見てもらえば、適用している技術分野は多種多様であり、汎用性が高い方法論であることが理解できると思います。

汎用性の高い品質工学の対象分野は、広範囲の産業に及ぶ


真のコストダウンとは

 ここで、品質とは対極にあると考えられているコストダウンについて、説明しておきましょう。一言でコストダウンといいますが、内容は2種類あるのです。競争力のないコストダウンと、競争力のあるコストダウンです。

 競争力のないコストダウンとは、例えば生産拠点を人件費の安い地域に移設するとか、設計段階で機能を削除したり、製造時に部品の品質を落としたりしてコストダウンするやり方です。比較的簡単にできるので即効性はありますが、競合他社もすぐにまねできるので、競争力は継続的に維持できません。

 それに対して競争力のあるコストダウンとは、他社にまねのできない技術を使って品質を高め、その高めた品質レベルからコストダウンするやり方です。その結果、他社と同等品質を確保しながら、低コストを実現するので、継続的に競争力を維持できます。

 つまり、品質とコストは互換性があるということです。科学技術を工業製品に応用してきた歴史を考えると、一貫して新技術の開発がコストパフォーマンスの向上に寄与しています。エネルギーの使用効率は飛躍的に向上し、そのおかげで多くの人が普通に快適な生活ができるようになりました。

 白熱電球から蛍光灯への転換、真空管から半導体への転換、ブラウン管テレビから液晶テレビへの転換など枚挙にいとまがありません。これほど表立ってはいませんが、似たような技術革新は製品内の至る所で起きています。技術開発が成功すると確実にコストダウンに結び付くのです。

 技術者は、競争力のないコストダウンに目を奪われずに、基本となる技術開発を重視し競争力のあるコストダウンを目指すべきです。つまりタグチメソッドは、技術力を高めることで高品質・低コストが両立する製品開発を目指しているのです。 そして、それが継続的に行える企業体質の構築が最終目的なのです。

コストと品質は、表裏一体のもの

品質の改善で、真のコストダウンが可能になる


誤解されているタグチメソッド

 タグチメソッドとは、「SN比を使う統計解析ツールの一種にすぎない」「直交表を活用する実験計画法だ」と思っている人も多いのではないでしょうか。

 いままでの説明で分かると思いますが、タグチメソッドは効率化のツールではありません。技術と技術者を育成することで市場での高品質を確保し、コストダウンも達成する技術の管理手法(MOT)なのです。従来の品質管理とは根本的に異なる考え方ですから、違った取り組み方が必要となります。

 マネジャーや経営者は、タグチメソッドの戦略的狙いを理解し、自らが取り組むべきです。そして技術者は、従来の問題対策とは異なる技術開発の手法というものをマスターし、自らの技術力を高める努力をすべきです。その両方が相まって、強い組織力、技術力が生まれるのです。

  • タグチメソッドは、技術マネジメントのツールである
  • タグチメソッドは、個人の技術力育成ツールである

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