製造業×品質、転換期を迎えるモノづくりの在り方 特集
連載
» 2010年07月30日 00時00分 公開

本質から分かるタグチメソッド(1):本当の「タグチメソッド」を誤解していませんか? (3/4)

[長谷部 光雄/タグチメソッドコンサルタント,@IT MONOist]

2.従来型QCの限界とTQMへの展開

 本稿1ページ「1.注目され、そして誤解されているタグチメソッド」で、タグチメソッドの全体像を理解いただけたと思います。ここからは、なぜ従来の品質管理の手法でリコールが防ぎ切れないのかを明確にしましょう。それはタグチメソッドの必要性そのものになります。

出荷検査は市場での品質を検査していない

 なぜ品質管理の考え方では、リコールに対処できないのでしょうか。出荷検査に合格した製品が、なぜ市場で不具合を起こすのでしょうか。その問題を突っ込んで考えましょう。理由は意外に簡単なのです。要するに、検査した時点とは異なる環境で製品が使用されるからです。

 出荷検査の時点では、もちろんすべてが新品の状態です。検査場所の温度や湿度も比較的快適な環境でしょう。検査の作業者も製品の取り扱いには慣れていますから、ほとんど不具合は起きないでしょう。

 しかし、いったん市場に出ると様子はがらりと変わります。必ずしも慣れた人だけが使うわけでもありません。予測できないような変わった使い方もあるでしょう。温度や湿度に関しても、寒冷地から高温多湿までのさまざまな地域がありますし、かつ四季を通じていろいろな環境条件で使われます。経年劣化したり汚れたりもします。そのような条件下でも、問題なく機能することが要求されます。

 これだけいろいろな条件が変動するので、製品にストレスが加わり、多少の不具合が起きても不思議はないですね。ですから、検査に合格した製品が市場で不具合を起こすのです。どんな優れた製品でも、いつかは必ず壊れます。人間の死亡率が100%であることと同じです。未来永劫、問題を起こさない製品など存在しません。

市場での多様な使われ方すべてを、事前に検査することはできない


検査の目的は、製造工程を維持管理すること

 つまり出荷時の検査は、市場での品質を検査しているのではないのです。さまざまな環境での品質は、新品の製品検査では分からないからです。びっくりですね。「検査をきちんと行えば不具合は起きないはず」と思っていませんでしたか。 実は、そうではないのです。

 その理由は、検査の目的や意味を考えれば分かります。「工程をきちんと管理することで安定した製品を作る」、これこそが製造現場の役割です。製品検査の内容を一言で表現すると、チェックリストによる作業項目の管理です。あらかじめ決められた仕様値や作業項目が守られているか、その結果、製品に予定の性能がきちんと再現されているかを確認しているだけなのです。

 つまり検査で行っていることは、「製造工程の品質」を検査しているのです。製品をチェックすることを通じて、作業の品質を管理しているのです。決して「製品の市場での品質」を検査しているわけではないのです。それは、検査の役割ではないからです。

市場品質のチェックは、検査の役割ではない


リコールの原因は、設計にあり

 設計者がベストだと考えた設計条件の中に、仮に市場に出てからの環境変化で不具合が発生しやすい「性質」が隠されていたら、どうなるでしょうか。隠れた性質は出荷検査では検出できませんから、市場で不具合が発生します。

 そんなことはないと思いますか。しかし、リコールが多発する現状は、このような見過ごされた性質が多数存在していることを暗示しています。リコールの増加は、従来型の品質管理の限界を示しているのです。

 誤解しないでください。品質管理の方法が間違っているとか、もう古い手法とかいっているのではありません。モノづくりの現場では品質管理は有効でしたし、今後とも重要な手法であることに変わりはありません。しかし現在の消費社会の厳しい要求に対しては、いままでの限界を超える新しい方法論も必要になっているのではないかといっているのです。

 品質管理でリコールが防げない理由は、リコールの原因が設計段階で仕込まれているからです。したがって設計の方法と考え方を革新しない限り、リコールを減少させることは難しいのです。

 この指摘は、すでに多くの人からされています。例えば国土交通省が行ったリコール検討会の資料にも、リコール原因の68%、つまり約3分の2が設計に由来すると報告されています(注)。

リコールの主な原因は、設計開発にあり


 したがって、品質管理の限界を超える新しい方法論は、モノづくりの源流である設計段階を革新するものでなければなりません。製品開発の方法を根本から変革する、それがタグチメソッドの狙いです。当然ながら、人材育成や組織体質の変革も含みます。


注:国土交通省 リコール検討会 第2回 参考資料2「リコール届出分析調査実施報告書
(平成19年11月 国土交通省自動車交通局)参照。


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