知っておきたいLINの基礎知識 その1車載ネットワーク「LIN」入門(1)(2/3 ページ)

» 2010年09月10日 00時00分 公開

2.LINハードウェア

 LINノードは、マイクロコントローラ(マイコン)とLINトランシーバによって構成されています。LINは、簡単・安価にセンサとアクチュエータとを接続するために、多くのマイコンを搭載しているシリアル通信装置「UART(Universal Asynchronous Receiver/Transmitter)」を使用して送受信を行います(図6)。

LINノードの構成 図6 LINノードの構成
(※ベクター・ジャパンの資料を基に作成)※マイコンは、LINトランシーバを介してLINバスと接続

 UARTの通信方式をLINで使用する場合、8ビットのデータの前後に「スタートビット」と「ストップビット」を付与した10ビット単位で送信します。また、8ビットのデータは、最下位ビット(LSB)から送信します。

 スタートビットとストップビットは、データの開始と終了を判断するために使われます。スタートビットは論理値「0」となり、電圧レベルはグランドです。ストップビットは論理値「1」となり、電圧レベルはバッテリです。論理値「1」を「リセッシブ」、論理値「0」を「ドミナント」と呼びます(図7)。

LINのデータ構造 図7 LINのデータ構造
(※ベクター・ジャパンの資料を基に作成)

 LINトランシーバは、基本的に「ISO 9141」に準拠したシングルワイヤを使用します。LINトランシーバでは入力電圧、信号の振幅、LINノードの省電力のためのスリープ・ウェイクアップ機能を制御します。最近では、LINプロトコル用にカスタマイズされた「LIN UART」なども増えています。

 最後に通信速度ですが、LINではEMC対策やクロック同期のために、最大20kbit/secと規定されています。一般的に2.4kbit/sec、9.6kbit/sec、19.2kbit/secがよく使われています。

 このように、CANと比較すると通信コントローラを必要とせず、マイコンに搭載されているUARTで通信できるので、ハードウェアのコストを抑えることができます。また、LINバスはシングルワイヤを使用するため、配線数を抑え、コストを削減することができます。

 次の項目では、LINの通信方式について説明します。

3.通信方式

概要

 LINの通信は前述のとおり、「マスター・スレーブ方式」「スケジュールに基づく通信(タイムトリガー方式)」で行われます。これはCANとは異なる通信方式で、LINの大きな特徴といえます。

 ここでは「電車」の例を挙げ、LINの通信方式の特徴を簡単に説明します。

 電車は、始発駅から時刻表どおりに出発します。この時刻表には、電車が衝突しないように出発時刻が決められています。また、駅では乗客が電車を待ち、乗車対象の電車が到着すると乗車し、目的の駅まで移動します。

電車を例にLINの通信方式を説明 図8 電車を例にLINの通信方式を説明
(※ベクター・ジャパンの資料を基に作成)

 LINの通信も、この例と同様の動作をします。LINでは、事前に定義された「送信タイミング」に従って送信を行います。そのため、メッセージの衝突は発生せず、各ノードは一定の間隔で確実にメッセージの送信および受信ができます。また、バスも過負荷にならないので安定した通信ができるといえます。

 しかし、送信するタイミングが決められているということは、各ノードは任意のタイミングでメッセージを送信できません。送信するタイミングが来るまで待つ必要があります。

 また、ネットワーク内に「送信するタイミングを制御する」という特別な役割を実行するノードが必要となるため、LINでは「マスターノード」と「スレーブノード」といった2種類のノードを使用して通信を行います。

 ここまでの説明を簡単にまとめますと、CANでは、各ノードは任意のタイミングで送信できますが、メッセージの衝突の調停によっては必ずしも周期性が保証できないなど、あらかじめ期待されたタイミングで確実にメッセージのやりとり(通信)ができないことがあります。しかし、LINでは送信するタイミングをあらかじめ定義することにより、期待されたタイミングで確実にメッセージの通信が行えます。

ライン型バス構造

 LINのネットワーク構造(トポロジ)は、「ライン型バス構造」です。1つのLINバスラインに1つのマスターノードと複数のスレーブノードが接続できます。また、LINネットワークの推奨最大ノード数は16ノード、最大配線長は40メートルです。

LINのネットワーク構造 図9 LINのネットワーク構造
(※ベクター・ジャパンの資料を基に作成)

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