大空に羽ばたけ――「鳥人間コンテスト」開催メカ設計 イベントレポート(15)(2/2 ページ)

» 2010年09月29日 00時00分 公開
[永山昌克,@IT MONOist]
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旋回が決め手になる「人力プロペラ機タイムトライアル部門」

 続いて人力プロペラ機タイムトライアル部門をお伝えしよう。これは、パイロットがペダルを漕いで操縦するプロペラ機を使用し、スタート地点から500メートル先の折り返しポイントをターンし、ゴールするまでのタイムを競うもの。

 飛距離ではなく操縦性とスピードが求められるこの部門では、折り返しポイントでいかに効率よく旋回するかが勝敗の鍵を握る。機体には、旋回のための方向舵(ラダー)や昇降舵(エレベーター)または補助翼などを装備しているが、そこには各チームがそれぞれ工夫を凝らした仕掛けが盛り込まれている。しかし、人力飛行機にとって旋回は非常に難易度が高く、過去に完走を遂げたのはわずか3機しかない。

 そんな難関であるタイムトライアル部門に今年は強豪チームが多数参戦。特に注目を集めたのは、ディスタンス部門で優勝7回を誇る古豪「日本大学 理工学部 航空研究会」(千葉県)だ。同チームは、機体の揚力を減少させるスポイラーを翼に組み込むことで、スムーズな旋回を行い、2分26秒35を記録。準優勝となった。

 優勝したのは、これまでに鳥人間コンテストに出場した名門校のOBによって構成された初出場チーム「Team 'F'」(愛知県)。この部門では最軽量となる25キログラムの機体を使用し、設計速度は秒速10.5メートルという最速を実現。主翼に付けた補助翼「エルロン」によって効率よくターンし、1分55秒02という圧倒的な好タイムで1位を獲得。併せて審査員特別賞も受賞した。

「人力プロペラ機ディスタンス部門」には中国からも参戦

 最後は、鳥人間コンテストのメインイベントともいえる人力プロペラ機ディスタンス部門である。プロペラを回して飛行する機体によって飛行距離を競うもの。前回までは18キロメートル地点で折り返すというルールだったが、今大会では折り返しポイントを20キロメートルに延長。最大で往復40キロメートルを目指す競技である。

 今回の人力プロペラ機ディスタンス部門には13チームが出場。中でも、話題を集めたのは、中国上海から参戦した「TEAM 上海OXAI」だ。鮮やかな黄色の機体で登場した同チームは、大型ラジコン飛行機メーカーであり、ラジコン飛行機の世界大会で上位進出した実績もある。結果は533.45メートルで8位という成績だった。

画像6 中国上海から参戦した「TEAM 上海OXAI」。鮮やかな黄色の機体で登場

 また、前大会では前人未到の往復36キロメートルのフライトを果たし、完全優勝を成し遂げた「東北大学 Windnauts」(宮城県)は11456.97メートルを記録し、準優勝となった。

画像7 前大会の覇者「東北大学 Windnauts」(宮城県)は準優勝に終わった

 優勝したのは、それまでに優勝回数3回を誇る名門ながら、前回は無念のリタイアだった「東京工業大学 Meister」(東京都)だ。記録は18556.82メートル。折り返しポイントには達しなかったとはいえ、ほかの有力チームが距離を伸ばせない中、飛行時間約50分という見事なフライトだった。

画像8 前回は無念のリタイアだった名門「東京工業大学 Meister」(東京都)が念願の優勝を果たした
画像9 東京工業大学 Meisterの記録は18556.82メートル
画像10 優勝した東京工業大学 Meisterのパイロット・宮本 翔さん

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