Liイオン電池搭載の電動2輪車、ヤマハ発動機とホンダが発売

» 2010年10月01日 00時00分 公開
[Automotive Electronics]

 2輪車大手のヤマハ発動機と本田技研工業(以下、ホンダ)が、リチウム(Li)イオン電池を搭載する電動2輪車を発売する。発売日は、ヤマハ発動機の「EC-03」(写真1)が2010年9月、ホンダの「EV-neo」(写真2)が同年12月となっている。

一般向けの「EC-03」

 表1に、EC-03とEV-neoの主な仕様を示した。両車とも車両区分は、第1種原動機付き自転車、いわゆる“原付”である。ただし、それぞれ想定している用途が異なることもあり、Liイオン電池セルや充電器に関する仕様が異なる。


写真1ヤマハ発動機の「EC-03」 写真1 ヤマハ発動機の「EC-03」 
写真2ホンダの「EV-neo」 写真2 ホンダの「EV-neo」 
表1「EC-03」と「EV-neo」の比較 表1 「EC-03」と「EV-neo」の比較 

 EC-03は、ヤマハ発動機が2002年に発表した「Passol」、2005年に発表した「Passol-L」、「EC-02」など、一般向け電動2輪車の後継モデルである。Passol-LとEC-02は、日立ビークルエナジー製のLiイオン電池セルを採用していた。これに対して、EC-03は、三洋電機が供給している18650サイズ(直径18mm×高さ65mm)の民生用機器向けLiイオン電池セルを採用した。ノート型パソコンなどに広く用いられている18650サイズのLiイオン電池セルは、すでにある程度の規模で量産されていることもあり、車載専用に開発したLiイオン電池セルよりも低コストかつ短納期で調達できると言われている。

 EC-03の電池モジュールは、この18650サイズのLiイオン電池セルを112本搭載している。電池モジュールの出力電圧は、Passol-LとEC-02の2倍となる50Vとなった。これによって、EC-03のモーターの動力性能を向上することができたという。具体的には、Passol-LとEC-02のモーターと比べて、最高出力が16.7%増の1.4kW、最大トルクが28%増の9.6Nmとなった。出力/トルクが増えたことに加えて、新たに設計した制御システムを採用したことにより、発進時から低速走行時までにおけるトルクも10〜15%向上したとしている。

 Liイオン電池の電流容量は、Passol-LとEC-02の24Ahに対して、EC-03は14Ah。出力電圧と電流容量の積から導かれる電力容量で見ると、Passol-LとEC-02は600Wh、EC-03は700Whである。ただし、満充電からの走行距離が43kmであることは変わらない。なお、EC-03の電池モジュールの寿命については、電力容量がゼロの状態から満充電になるまでを1回とした充電サイクルを500回繰り返すことにより、電力容量が初期の約70%まで低下するとしている。電池モジュールは、手数料や工賃を含めて7万5000円で交換することが可能だ。また、EC-03は、運転席の下に搭載した充電器と充電用ケーブルを用いて充電できることを特徴としている。アース付きの3穴100V電源コンセントに接続して充電することにより、約6時間で満充電となる。

 EC-03の価格は25万2000円。これは、ガソリンエンジンを搭載する一般的な原付と比べて10万円ほど高い。国による2万円の購入補助金を考慮しても約8万円の価格差がある。

「EV-neo」は業務用

 EC-03が一般向けの電動2輪車であるのに対して、ホンダのEV-neoは、配達などに用いる業務用の電動2輪車として設計された。EC-03とEV-neoのLiイオン電池セルと充電器は、大きく分けて3つの点で異なっている。

 1つ目の違いは、Liイオン電池セルの特性である。EC-03が、コストや納期の観点から民生用機器向けの18650サイズの電池セルを採用したのに対して、EV-neoは、東芝のLiイオン電池セル「SCiB」を採用している。SCiBは、負極にチタン酸Liを使用することによって、寿命が長く、急速な充放電が可能であることを特徴としている。SCiBは、約9000回の充電サイクルの後でも、電力容量が初期の約90%までしか低下しない。また、200V電源を用いる急速充電器を使えば、電力容量の80%までの充電を約20分で完了することができる。ただし、SCiBは、1セル当たりの出力電圧が通常のLiイオン電池より約1V低いことから、電力容量で劣ると言われている。このこともあってか、満充電からの走行距離は30km以上となっており、EC-03の43kmよりも短い。

 2つ目は、EC-03が充電器を内蔵しているのに対して、EV-neoは外付けの充電器を用いる点である。ホンダは、「充電器を内蔵するよりも、集配拠点に複数個の充電器を設置し、それらを使って充電するほうが効率的だと考えた」と説明している。

 3つ目は、EC-03が内蔵の通常充電器しか使用できないのに対し、EV-neoは、通常充電器に加えて急速充電器も利用できる点である。業務用車両であるEV-neoの場合、昼休みや配達業務から戻ったときの休み時間などを使って、短時間で充電しなければならないことも多い。そのため、20分間で電池モジュールの電力容量の80%までを充電できる急速充電の機能を実現する必要があった。

 なお、EV-neoはリースで販売される予定で、リース料金は非公開となっている。ただし、「リース料金と充電に必要な電気料金の3年分の合計と、ガソリンエンジンを搭載する原付の価格と3年分の燃料費の合計が同じくらいになるようにしたい」(ホンダ)という。

(朴 尚洙)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.