運も実力のうち! 天候が明暗を分ける!?第8回 全日本 学生フォーミュラ大会 レポート(1)(1/3 ページ)

学生フォーミュラ大会が開催される9月は天候が移ろいやすい時期。車両が走行する際の天候を上手に読まねば!

» 2010年10月06日 00時00分 公開
[小林由美MONOist]

 年に1回、学生の有志たちが協力し合い製作した自動車を静岡県袋井市のエコパに持ち込み、モノづくりの総合力を競い合う「全日本 学生フォーミュラ大会」(自動車技術会主催)。このシリーズでは、第8回大会当日の様子や、学生たちの車両設計を紹介していく。シリーズのラストには、優勝校 大阪大学のインタビューも掲載する。

 今回登場するのは、上智大学、横浜国立大学、静岡大学、東京都市大学、東海大学、京都大学の6校(カーナンバー順)。それぞれ個性あふれる車両の設計ポイントと戦績を紹介する。

大会結果に関するニュース(MONOist):
第8回 学生フォーミュラ大会開催――優勝は阪大 − @IT MONOist

 今年の第8回大会は、大型台風通過による雨、通過後の炎天下……、と天候的に非常にハードとなった。会期前半では、たびたびの雨に見舞われ、一部の学生チームは、ウェットタイヤを装着しての走行となった。会期後半、炎天下の場内放送では、たびたび熱中症への注意喚起が促された。気温が高い中の走行では、エンジンの過熱も懸念される。

大会4日目 炎天下のエンデュランス走行
車検の様子

 この大会が開催される9月は天候が移ろいやすい時期でもある。車両が走行する際の天候を上手に読んで車両をセッティングすることも重要なポイントだ。

またしても2位―― 上智大学(No.2)

 「今年の動的審査では、天候がうまく読めませんでした……」――そういったのは、第4〜6回(2006〜2008年)の優勝校 上智大学のチームリーダー 門倉 章太さん。同校はスキットパッドとオートクロスで、ウェットタイヤ装着の走行になったが、調子がいまいち振るわなかった。

上智大学 チームリーダー、金髪が際立つ門倉 章太さん

編集部より:それぞれのチームで役職名称が異なるため、本記事では「プロジェクトリーダー」も「チームリーダー」と統一し表記します。



上智大学

  • 総合得点:829.66点/1000点(総合 2位/85校中)
  • デザインファイナル上位5校
  • 総合優秀賞 第2位
  • 国土交通大臣賞(安全技術、環境技術、新技術の総合優勝)
  • 日本自動車工業会会長賞(完走奨励賞)
  • デザイン賞 第1位
  • プレゼンテーション賞 第2位
  • CAE特別賞 第2位

 上智大学の今回の結果は総合第2位(またしても2位……!)。静的審査一連は、例年どおり好調で、エンデュランス走行は晴天の中、車両性能をフルに発揮して走行し、大会ベストタイムも記録した。

上智大学の車両

 ちなみに今年の優勝校 大阪大学は、スキットパッドとオートクロスでドライタイヤでの走行にうまく当たり、タイムを好調に伸ばした。もし上智と阪大とで条件が逆だったら、結果は大きく違っていただろう。

 「運も実力のうちです」と門倉さんは苦笑い。

 門倉さんは、来年から後に続く後輩たちを見守る立場となる。「教え過ぎもよくないし、教えなさ過ぎもよくないし……。教え方のバランスが難しいですね」。

 上智大学は、昨年の車両からカーボンコンポジットモノコックを採用し、今年で2年目となる。昨年張り切って積層し過ぎて重くなってしまったカウルの製作過程を見直し、今年は大幅にカウルを軽量化して臨んだ。シャシー設計のリーダー 稲吉 太郎さんは、来年の車両ではリアの部分までモノコックにしたいとのこと。

 リアまでのモノコックといえば、豊橋技術科学大学。同校は日本大会で初めてモノコックを採用した。稲吉さんは、豊橋技科大の知恵を吸収しようと、同校のピットに入り浸っていたそう。このような学生たちの情報交換は、この大会では常。特に上智大のような出場常連校のピットは、さまざまなユニフォームの学生たちが所狭しとひしめき合っているような状態だ。情報交換だけではなく、部品や工具の貸し借りも行われる。

 今年、同校の2008年度の車両に付いていた格好いいリアウィングが、ひょっこり復活していた。案の定、デザインファイナル(デザインの最終審査)でもこの点を突っ込まれていた。この件については、後日公開予定のデザインファイナルに関する記事で触れたい。


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