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» 2010年10月29日 00時00分 公開

技術革新には勇気が必要――デザインファイナル第8回 全日本 学生フォーミュラ大会 レポート(3)(2/3 ページ)

[小林由美,MONOist]

横浜国立大学

 「より早く走るために、軽量でコンパクト、かつ高出力が得られる」――そういうマシンが必要だと考えた同校の今年度車両は、まず重量面で有利な10インチホイールを採用し、4気筒・600ccの高出力エンジンのパワーをダイレクトに後輪へ伝えるために直結プロペラシャフトを用いた駆動とした。

横浜国立大学

デファレンシャルユニットの独自開発

 同校の車両は、デファレンシャルユニットを独自で設計し、そのケースも砂型鋳造で製作。中にあるギアも独自設計をして、最終減速比を自由に決定できるようにした。

ユニークなレイアウト

 同校の伝統ともいえる、エンジンを縦置きするユニークなレイアウト。「なかなかたくみなレイアウト」と小野氏はコメント。横置きだと排気管がシートの後ろにあり、スペースを圧迫してしまうが、縦置きならそこに何も置かないため、無駄なスペースを作ることなくレイアウトすることが可能だという。

サスペンションジオメトリを熟成

 サスペンションについて、今年は、フロントとリアの対地キャンバの適正化を図ることをデザインゴールとしたとのこと。サスペンション設計ソフトで、さまざまな対地角度の変化を想定し、フロントとリアの外輪・内輪の対地キャンバを見ながら、旋回半径などを見直した。

 構造(強度)解析を繰り返し、旋回時や減速時、フレームに荷重の掛かる個所については剛性を重点的に確保するようなフレーム構造とした。

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10インチタイヤ(小さめなタイヤ)を採用したことで、対地や旋回性能などでデメリットはありませんでしたか?


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サスペンションの基本性能が高ければ、10インチタイヤでも十分戦えるとわたしたちは考えました。今年度車両は、小型化、軽量化、低重心化を達成することで、サスペンションの基本性能を向上させました。


大阪大学

大阪大学

 大阪大学の車両は、毎年、ドライバーの操作性に主眼を置き開発してきた。そのため、コーナリングにおける挙動の安定性には自信はあったという。今年はさらに、コーナー脱出性能に力を入れたとのこと。

 昨年度は、コーナリング時にリアの内輪が浮いてしまい、立ち上がりの際に駆動力がしっかりと掛からず、加速できないという問題が生じていたが、今年は低重心化することでその問題をクリア。具体的には、エンジンをドライサンプ化しマウント位置を下げ、重心高を昨年度比で20mm落とした。実際の走行データからも、リアの内輪の残存荷重、リアの内輪の浮き、駆動力の環境を観察して検証したとのことだ。

実際のコース走行で使う出力特性にこだわる

 エンジンもまた、コーナー脱出性能を向上させるという車両コンセプトに基づき、駆動力とアクセルレスポンスを向上させ、さらにドライバーが思い通りに力を取り出せることを目指したという。昨年度の走行データから車速ヒストグラムを作り、実際のコースを走行した際に使用する速度域などを見積もり、そこから最終減速比を決定。最終減速比は、コーナー脱出から素早く駆動力を掛けられるように、ややローギア側に設計したという。またシフトアップをセミオートマ化し、エンジン駆動力のロスを減らして、次のギアに素早く駆動力を伝えられるようにした。

 吸排気系のチューニングをする際、エンジン出力曲線の決定ではエンジン解析ソフトを使い値算出。さらにコース上で実際に検証した。直線部分でフルスロットル加速してタイム計測し、さらにコース全体のタイムを合計。そこで最もタイムがよかった吸気管の長さを採用したとのこと。

脱出性の改善

 昨年度車両の問題の1つとして、「脱出しにくい」(コクピットが狭い)という意見がチーム内で多く挙がったという。今年度車両は、まずはフロントフープの角度をフロント側に傾け、ハンドル角度も全体的に変え、スペースを広く確保。操作性をアップさせながら、コクピットスペースも広げることができたという。またドライバーが脱出時に手を掛けるサイドインパクトのパイプの高さも下げ、車両から起き上がりやすくしたとのこと。

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サスペンションジオメトリ的な工夫、あるいは前後のロール剛性のコントロールなどで、内輪荷重をアップさせるようなことはしなかったのですか?


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定常状態になったときに現在の重心高では内輪残存荷重がどうしても残せないと判断し、重心高を下げる設計を採用しました。


ロール剛性:車両が旋回(ロール)する際、車両の傾きを抑制するための剛性(バネレート)。



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