カイゼン案を効率的に検討するためのチェックリスト実践! IE:方法改善の技術(8)(2/3 ページ)

» 2010年11月08日 00時00分 公開

3. 5W1H(Why、What、Where、When、Who、How)のチェックリスト

 VE(Value Engineering:価値工学)活動の現状分析で、的確に現状を把握して改善案の漏れを防止するためのチェック項目をまとめた手法です。VEのみならず、あらゆる改善の着眼点に応用できる手法です。主な用途として、現状分析、改善案の作成、問題の摘出などに広く活用されています。

 状況を簡潔に、漏れなくとらえて表現するために、Why(なぜ)、What(何を)、Where(どこで)、When(いつ)、Who(誰が)、How(どのように)の5W1Hの視点で整理する手法です。また、Howをさらに分解して、How to(どのように)と、How much(どのくらい)の5W2Hとすることもあります。いずれにしても、改善に取り組むときのチェックリストとして、5W1H(5W2H)を自問自答していくことが役立ちます。

5W1H(Why、What、Where、When、Who、How)のチェックリスト
(1)目的を追求する質問 a 疑問詞 なぜ(Why)それを行っているのか?(目的・成果・理由)
・なぜそうするのか、何をすべきか
・それを行う必要があるのか
・それを行わないと良い結果が得られないのか
・それは絶対に必要なことなのか、除くことはできないのか
改善のポイント 「いまやっている仕事をすることが目的である」と考えていないか? または「いまの仕事をいかにうまくやるか」の面のみで考えていないか? 「なぜ、その作業が必要なのか」……と、作業目的を追求して、作業全体、あるいは一部を廃止できないかどうかを、あらゆる角度から考えます。「目的の追求は、改善のキーポイント」です
(2)ほかに方法がないかを求める質問 a 疑問詞 何(What)を行っているのか?(対象物・範囲・機能)
・何をしているのか、ほかに何かすることはないか
・なぜ、この作業が必要なのか
・それを行うことが本当に必要なのか、除けないのか
改善のポイント 現在の状況が分かり目的が明瞭(めいりょう)になれば、次のステップとして目的に対して、現状の手段と照合・検討を加えて、さらに、その手段が最適であるのか、もっといい手段がないかを考える。この場合、「目的は1つでも、手段はいくつもある」ということを忘れないことが大切です
(3)いまの方法が選ばれている条件を分析する質問 a 疑問詞 どこで(Where)行ったらよいか?(位置・経路・方向・場所)
・どこで行っているのか
・ほかで、できないか
・なぜ、そこでするのか
・どこですべきか
・なぜ、そこで行っているのか、ほかと一緒にできないか
・なぜ、そこで行わなければならないのか、変更できないのか
改善のポイント 同じ場所で作業できないか、運搬距離を短くできないか、レイアウトを改善できないか、または、その場所が作業に適しているところか、などの場所の問題について分析する質問です
b 疑問詞 いつ(When)それを行ったらいいのか?(時刻・時期・時間)
・いつ行っているのか
・ほかのときにできないか
・なぜ、そのときに行うのか
・いつすべきか
・なぜ、そのときに行わなければいけないのか(ほかと結合できないのか、作業順序を変えるなど、ほかのときに変更できないのか)
改善のポイント 時間軸以外に、工程の順序を変えたり、統合したりできないか、などの優先順序の問題についても分析する質問です
c 疑問詞 誰が(Who)それを行っているのか?(作業者・機械設備)
・誰が行っているのか
・ほかに誰かできないか
・なぜ、その人が行うのか
・誰が行うべきか
・なぜ、その人が行わなければならないのか(その人が行うのが適切なのか、ほかの人に行わせてはいけないのか、変えた方がいいのではないのか)
改善のポイント 経験の浅い人でもできないか、性別に無関係にできないか、1人でまとめてできないか、高齢者にもできないかなどの作業者の問題について分析する質問です
d 疑問詞 どのような方法(How)で行っているのか?(手順・方法)
・どのように行っているのか
・ほかに何か方法がないか
・なぜ、そのように行うのか
・どうすべきなのか
・このような方法で行わなければいけないのか(ほかの装置やレイアウトで行った方がいいのではないのか、それだけしか方法はないのか)
改善のポイント 補助具、治工具、ポカヨケや新しい装置の導入などで、作業をもっと容易にできないかなどの手段の問題について分析する質問です

4. サーブリッグによる動作改善のチェックリスト

 IEの基礎を構築した代表的な1人でもあり、動作研究を発展させたギルブレス(Frank Bunker Gilbreth)は、動作を細かく分析した結果、「探す」「選ぶ」「つかむ」「考える」「運ぶ」などの基本的動作要素を見つけ出しました。その動作要素を自分の名前を逆さにつづり、サーブリッグ(therblig)と名付け、個々のサーブリッグに対する改善点を見いだして効率的な作業方法を導き出すための手段としました。サーブリッグによる動作分析の着眼点は次のとおりです。

サーブリッグによる動作改善
(1)つかむ a 同時に多数をつかむ
b 容器にフチを付ける
c つかみやすくする
d 組み合わせ工具を作る
e 真空、磁石、ゴム、粘性などの利用
(2)運搬 a 距離を最短にする
b コンベア、シューターの利用
c 動力の利用
d 同時に多数を運ぶ
e 空手運搬をなくす
f 両手の同時対象運動
(3)位置決め a 「用意する」を完全に
b 工具、部品の位置と方向を一定に
c ホッパー、シューターの利用
(4)探す a 材料や部品、工具の「探す」をなくす
b 目の上下は、できるだけ左右の動きにする
c ピントは、一定位置になるように配慮する
d 身体部位の動きを減らす(例:体をひねる→首を回す→目を動かす)
(5)前置き a 持ち替えをしない
b 位置を正す必要のある動作の除去
c 自働化
(6)使う a 機械化
b 設備数台の同時運転
c 動力、工具の利用
(7)選ぶ a 工具、部品の標準化
b 部品や材料の混合置きをなくす
c 「探す」「見つけ出す」「運ぶ」がなくなる物の配置
d 互換性のあるものを考える
(8)保持 a 手以外の身体部位や機械力利用
b ひじ乗せ台の利用
(9)組み立て a ストッパーやガイドの利用
b カム、空気、油圧の利用
c 多数同時組み込み
(10)分解 a 次に起こるサーブリック(動作要素)を考えに入れて動作設計を行う
(11)避け得ぬ遅れ a 動作の組み合わせに配慮する
b 作業者のレベルアップを行う
c 管理上の欠陥や相手方作業者による遅れのときは速やかに適当な処置を取る
(12)放す a 運動の経路中で行う
b 注意しなくても放せる工夫
c 動力やほかの物理的力の利用
(13)避けられる遅れ a 作業をリズミカルにする
b 準備を完全に
c 前後工程の作業を考えて調和を図る
(14)休憩 a 休憩の取り方
b 作業姿勢の検討
(15)空手運搬 a 距離の短縮
b 障害物の除去
c 経路の円滑化
(16)考える a 作業方法を具体的に
b 他人の意見も聞く
(17)検査 a 除くか、他作業との同期化
b 数個同時加工(組み立て)
c 寸法、形、質、色の比較見本の利用

5. 合理化の3S(単純化、標準化、専門化)チェックリスト

 どのチェックリスト法にも共通していえることですが、「合理化の3S」は、改善の基本手法である一方、あまり頼り過ぎると環境の変化や進歩、顧客のニーズに弾力的な対応ができなくなったり、柔軟な発想を妨げたりする恐れがありますので、適宜に見直していく必要があります。そのことを念頭に置いて参考としてください。合理化は次の3つのステップを踏んで行います。

単純化Simplification)

標準化Standardization)

専門化Specialization)


(1)単純化

 材料、部品、製品、治工具などを整理して、種類を減らして単純化することが合理化の第一歩です。「Simple is the Best」といわれるとおり、単純化することは大変重要なことです。

(1)単純化
改善のポイント ・構造を単純化したら
・方法を簡単にしたら
・数を少なくしたら
適用例 ・部品点数を少なくする
・ガイドを使って位置決めを簡単にする
・機械の操作個所を少なくする

(2)標準化

 標準化は、まず漠然とした現状を整理・整とんして、これを一定の基準に従って分類し、次に、その種類を限定して統一し、最後に規格を定めて標準を具体的に設定し、実際に活用していく系統的なプロセスです。

 物の標準化は、材料・部品・製品・治工具などを単純化の観点からなるべく種類を減少させ、作業目的への適合に基づいて、一定の基準で類似の形状や性質のものを整理・統一していき、最終的には規格に定めていくことをいいます。また、方法の標準化は、作業方法・作業条件・管理方法などの最良の方法を決定したうえで、これを標準化し、作業標準や管理標準として明文化することをいいます。このような標準化によって、生産計画および生産統制が容易となり、作業の習熟を早く達成することが可能となります。また、部品の互換性が増えて在庫が減少し、コストダウンや品質の向上につなげていくことができます。

(2)標準化
改善のポイント ・方法や手続きを統一したら
・様式、帳票を統一したら
・規格、基準を定めたら
適用例 ・標準時間の設定
・JIS、ISO、MISなどの規格類
・標準作業方法の設定

(3)専門化

 製品や作業方法についての特色を打ち出し、同業他社に対して絶対的優位を獲得するよう、特化していくプロセスを専門化といいます。

(3)専門化
改善のポイント ・機種、品種を限定したら
・仕事を分担したら
・同じ仕事をまとめたら
適用例 ・事業部制
・設備、治工具の専用化
・業務や作業を専門に分ける

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