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» 2010年11月10日 11時00分 公開

マイクロモノづくり〜町工場の最終製品開発〜(2):町工場の技術が詰まった“男の美顔ローラー” (2/2)

[三木康司/enmono,@IT MONOist]
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折りたたみ傘がヒントに

――そのほかのこだわりについて教えてください。

鈴木氏:このiShapeではビジネスマンが外に持ち歩いてもコンパクトに持ち歩けるように縮められるようにしました。ほら、このように「カチ、カチ」と2段階のノッチ方式になっていて、長さを2段階に調節できるのです。この機能は、皆さんの顔の大きさや、肌に当てる場所によって調節できるようにしてあります。これまでのほかの美顔ローラーではない機能です。

 この機能は日本の折り畳み傘からヒントを得て、その構造を参考にしました。この機能に関してはシャフトの中に多数の構造を入れる必要があり、技術的に難しい面もあったのですが、周りの皆さんの協力もあり、このサイズに収めることができました。

ALT ローラーの試作品

 例えばビジネスマンなら、ちょっとした出張の際、内ポケットに入れて持ち歩けます。重要な商談の前夜、このローラーで顔を整えておけば、翌朝はすっきりした顔で重要な商談に臨める、など考えられます。これまでのフェイシャルローラーですと、その大きさ故に、寝る前に使うように家に置きっ放しになるケースも多いようです。折り畳んで一回り小さくすれば、持ち歩くのにも邪魔にならず、カバンの中に入れておくこともできる、ということで携帯性を重視しました。

 また、実際に手で持った重量感や質感も十分に考慮して作ってあります。重さというのは非常に重要で、肌に無理に押し当てないで、軽く転がすだけでもマッサージ効果が得られるようにしてあります。数百種類の試作品を作りながら、ちょうど重過ぎず、軽過ぎず……、最適な重さを割り出しました。

――マイクロモノづくりにおいては、作り手側が、ユーザー側と自分をダブらせたときに、よりマーケットのニーズに合った商品ができると考えています。単純に「売れそうだから」ではなく、自分が本当に「欲しい」という作り手の想いを最も重要にするべきであると考えています。今回の事例では、考案者の鈴木氏自身が男性です。自分が美顔器を持ち歩く場合、どのような機能が必要なのかを考えた結果、出てきたのが、「折りたためる美顔器」というコンセプトなのです。

よく転がる形にするには?

――開発で一番苦労したポイントは何ですか?

鈴木氏:コストもそうでしたが、この形状フォルムを作るまでのデザインにはとても苦労しました。デザインフォルム、重さ、持ったときの金属の感触や質感などすべてのポイントについて、擦り合わせを何度も行いました。「これだ!」というベストなバランスのレベルにいくまで、本当に難渋しました。

 先ほどもお話ししましたが、この形になるまでに、何百個という試作をし試行錯誤を繰り返しました。それぞれ1個ずつ作って、デザインを変えて……、という具合に、です。その甲斐(かい)あって、モニターさんからは、従来品とは違って「高級感があり、よく転がる」「実際にほうれい線や、目尻の笑いジワ、おでこのシワが薄くなった」など良い反応がありました。

企画やコンセプトについて

――製品のネーミング「iShape」について教えてください。

鈴木氏:日々戦うビジネスマンの必需品は、ノートパソコン、手帳、万年質、そして携帯電話などです。この美顔ローラーは、そのアイテムの1つというイメージで考えました。またビジネスマンは、さまざまな情報を駆使して仕事をしていくイメージです。そこで、情報「Information」の「i」と頭に付けて、それに「Shape」という「お肌を整え、体の無駄な肉をそぎ落とす」という言葉を付けて、「果敢にビジネスに向かっていくビジネスマンの必需品」というイメージを込めて、「iShape」としました。

――男性にどんな場面で使ってもらいたいでしょうか?

鈴木氏:先ほどもちょっとお話ししましたが、女性と違い、男性は毎日肌のお手入れしているわけではないと思います。それが「iShapeを使って毎日3分間お手入れすることで、美肌の効果が出ている」と男性モニターの方々から反応がありました。やり手のビジネスマンがiShapeを毎朝利用すれば、より若々しい顔を手に入れて、その結果として自分に自信を持ち、積極的になれるでしょう。そして良い商談を取ったり、大きなプロジェクトをまとめたり。この製品を手に取れば「ずっと持っていたい」というように感じる「適度な重量感」や「質感」「高級感」が出るように、日本の職人魂を賭けて仕上げました。

販路開拓について

――多くの中小製造業が、製品の製造はできるが、販路開拓に苦労されていますが?

鈴木氏:現在は、Amazonのマーケットプレイスに掲載し、直接購入可能にしています。

 ほかの通販サイトでは定額の掲載料などを払わなければならなかったのですが、Amazonの場合、定額の掲載料も手軽で、あらかじめ一定の数量の製品を送っておけば、オーダーがあるたび、Amazonの倉庫から直送してもらえるので非常に楽です。製品が売れた分だけ口座に売り上げが振り込まれるような形式になっています。

ALT 鈴木氏の肌ツヤも良好?

 従来、この手の商品は大手のギフト系の卸問屋などを経由して売るしかなかったのですが、そのような場合、ひどいときでは50%近くのマージンを取られていました。そのため、材料や素材の質を落とすなどして原価を落とさざるを得なかったのです。しかし最近は、Amazonのような通販サイトに掲載すれば、中間マージンをかなり削減できます。その結果として、より品質の良い製品をより低価格でお客さんの手元にお届けすることができるようになっています。

 またネットに特化した外部企業さんの協力を得ながら、FacebookやTwitterなどのソーシャルメディアを活用し、製品のホームページで個人的なファンを増やすことで、ユーザーに対して、より深く訴求できることができています。

 この手の商品は高額なので、「買おう」と納得いくまでに時間がかかるようです。従って、ホームページのコンテンツには非常に力を入れて、充実させています。このあたりは、協力企業さんと二人三脚で最適なやり方を模索しながら拡販をしています。

――マイクロモノづくりでは、町工場自ら販路を作り、自分たちが生み出した製品を売っていくことを想定しています。そのために、ネットを活用した販売手法は必須です。どんなに魅力的な製品でも、最初から大手の百貨店など扱ってもらうのは困難です。マイクロモノづくりで定義する製品は、趣味性が高く、マーケットとしては極めてニッチです。従って、まずは製品ホームページを充実させ、さらに最近ではTwitterやFacebookに代表されるソーシャルメディアの活用もしつつ、個人の懐(ふところ)に深く入り込んで訴求することが極めて重要になってくるのではないでしょうか。

日本モノづくりの新たな潮流

 今回はインタビューと、マイクロモノづくりのコンセプトとの対比ということで、文章を書き進めました。本記事で、マイクロモノづくりについて、より深く理解していただけたならば幸いです。

 今回紹介したiShapeは未知数ではありますが、多くの町工場が、これまでの量産の仕事がなくなる中、自分の意思で高付加価値の製品を企画し、それを自らで販売していこうという日本のモノづくりの新たな潮流の1つを示す事例になるのでないでしょうか。


Profile

三木 康司(みき こうじ)

1968年生まれ。enmono 代表取締役。「マイクロモノづくり」の提唱者、啓蒙家。大学卒業後、富士通に入社、その後インターネットを活用した経営を学ぶため、慶應義塾大学に進学(藤沢キャンパス)。博士課程の研究途中で、中小企業支援会社のNCネットワークと知り合い、日本における中小製造業支援の必要性を強烈に感じ同社へ入社。同社にて技術担当役員を務めた後、2010年11月、「マイクロモノづくり」のコンセプトを広めるためenmonoを創業。

「マイクロモノづくり」の啓蒙活動を通じ、最終製品に日本の町工場の持つ強みをどのように落とし込むのかということに注力し、日々活動中。インターネット創生期からWebを使った製造業を支援する活動も行ってきたWeb PRの専門家である。「大日本モノづくり党」(Facebook グループ)党首。

Twitterアカウント:@mikikouj



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