パラメトリックとシンクロナス・テクノロジが完全に同居シーメンスPLMソフトウェアのミッドレンジ3次元CAD新製品 Solid Edge ST3

» 2010年11月24日 00時00分 公開
[小林由美,@IT MONOist]

 シーメンスPLMソフトウェアは2010年11月22日、ミッドレンジ3次元CADの新製品「Solid Edge ST3」の記者説明会を開催した。同製品は同年10月13日にグローバルで発表したもの。

 大きな変化があったというより「成熟した」というイメージが強いというST3の新機能として、同社は以下を紹介した。

  • Solid Edgeの従来手法(パラメトリック)とシンクロナス・テクノロジ(ノンヒストリ)のGUIを統合
  • アセンブリ設計における幾何関係設定

 前バージョンST2までは、従来手法(パラメトリック)からシンクロナス・テクノロジの手法に変えたい場合、それ用にデータを変換して画面を切り替える必要があった。ST3からは、1つの画面の中で、フィーチャツリーを2つに分割して作業可能だ。従来手法のツリーのうち、シンクロナス・テクノロジで作業したいフィーチャを選択し、変換を実行すると、その部分がシンクロナス・テクノロジ化したツリーとして扱われる。変換していない部分は、従来手法のツリーを維持する。

(左)シンクロナス化したいフィーチャを選択(「オーダード」は「従来手法」)、(右)シンクロナス化したツリー

 例えばパラメトリックだけでモデリングすると履歴をロールバックして1つ1つ確認しながら行わなければならなかった修正が、シンクロナス・テクノロジをフィーチャツリーの中途から折り込めることで、履歴をロールバックせず、かつ設計意図の幾何拘束を維持して修正することができる(パラメトリック拘束は後付けできる)。

 同社デモのシャフト受けの例では、中央のシャフト受け部の高さを低くしたいとき、単に外形の高さ寸法を小さくするだけだと、切り欠きを作った段階でシャフトの受け部が低くなることが想定されていなかったため、ソリッドの存在を認識できずエラーになってしまう。このような拘束になっている場合も、シンクロナス・テクノロジは影響なく、シャフト受け部の厚み部分を寸法固定しておいて、ドラッグして下げれば修正が完了する。

シャフト取り付けの位置を下げたい
データがエラーになってしまった

 上記の2つの脚の角度を変えたい場合も、ロールバックせずにシンクロナス・テクノロジでドラッグして修正することができる。

 3次元曲面を作る場合は従来手法のサーフェスを利用したモデリングが向いているが、その場合も履歴をロールバックして修正をする際にエラーになりやすい。そういったケースでも、2手法を使い分けられることで、エラーを極力避けながら効率よく修正ができる。

 ST3は、アセンブリ上で直接部品形状を修正する際、他部品の形状を参照させ修正できる。以下の芝刈り機の例なら、座席後部にエンジンユニットを取り付ける場合、シートの背に沿って逃げながら、形状を作成することが可能(以下の図)。

背もたれ形状に合わせて部品形状を逃げる

 取り付け穴など組み付け関連の寸法関係も認識可能だ。他ブランドのCADから中間ファイルでインポートしたデータ同士をアセンブリした場合において、例えばプレート部品の端面を選択&ドラッグすると外形寸法が伸びるのにつられ取り付け穴ピッチも引き伸ばされるが、さらに取り付け先部品の穴ピッチと外形寸法も自動追従して修正されるよう設定できる。ST2までは、それらの組み付け関連の寸法は部品ごとで修正するしかなかった。

他CADから引っ張ってきたアセンブリを修正する

 ほかST3の新機能トピックとしては、2次元設計から3次元設計移行における支援機能の強化、シートメタル設計機能の改善などがあるという。

ライトユーザー向け製品の提供も

 同社は、企業規模によらないCADのライトユーザー向けとしてSolid Edgeのレンタル版提供を準備しているという。提供はWebでユーザー登録のうえダウンロードできる形を考えており、開始は2011年1月頃の予定。レンタル価格については「具体的なところはまだ明かせないが、あくまでライトユーザーに見合う価格設定を考えている」(同社)という。支払い方法については、クレジット決済のほかにも、さまざまな手段を考えているとのことだ。

本説明会でSolid Edge ST3およびライトユーザー向け製品の説明をしたシーメンスPLMソフトウェア アジア太平洋地域 Velocity Series 担当副社長 セイティアム・ゴー(Say Tiam Go)氏

 ライトユーザー向けとしてもう1つ、すでに提供開始している「Solid Edge Free2D」を紹介した。評価版とは違い、無償でありながら機能制限はない。またヘルプと併せチュートリアルも設置する。シーメンスPLMソフトウェアのページからダウンロードできる。こちらにユーザー登録すると、上記で紹介したレンタル版Solid Edgeへの移行もできるよう考慮しているという。

 クラウド版CADへの展開については「可能性はある」との回答。その課題としては、データ処理のレスポンス改善、データセキュリティを確保する手段を挙げている。

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