モノづくりの環境対策と環境配慮、何が違う?モノづくり最前線レポート(26)(1/2 ページ)

NECがグループ内で実践する「環境配慮設計」とは? グローバル設計・開発時代にObbligatoが提案する手法と仕組みを聞く

» 2010年12月07日 00時00分 公開
[原田美穂,@IT MONOist]

 2010年11月11〜12日、「NEC C&Cユーザーフォーラム&iEXPO 2010」が東京国際フォーラムで開催された。毎年、NECグループのソリューションを一堂に会して行われるイベントだ。本フォーラム読者にも利用者が多いであろうNECの提供するBOMを中核としたPLMソリューション「Obbligato III」も登場していた。ここでは会場内で開催されたNEC 第一製造業ソリューション事業部 マネージャー 相馬 史郎氏によるセミナー「グローバルものづくりを支える次世代PLMソリューション『Obbligato III』」の内容を中心に製造業界向けソリューションを紹介しよう。

グローバル設計・開発の現場を考慮したObbligato

 NECのObbligato IIIは、下記引用記事のとおり、2010年10月に発表されたばかりだ。Obbligato IIIは、従来のオンプレミス型のほかに個別対応型クラウド、SaaS型クラウド環境での提供が追加されているのが大きなポイントとなっている。扱う情報の性質によってオンプレミス、個別対応型、SaaS型を機能ごとに選択することが可能で、かつ、RIAインターフェイスを採用したことで、複数の情報を統合的に1画面で確認できるようになっている。

 当日は上記記事で紹介したObbligato IIIの新たなコンセプトのほかに、グローバル設計・開発に向けた最近のトレンドについても話題が及んだ。

 まず、機動的な開発組織を作るために必要な業務プロセスの標準化と効率化が必須であるという点が挙げられた。「部門ごとの開発プロセスに差があれば人材流動性が低下し、企業にとって大きなロスとなります」(相馬氏)。ここで必要になるのは、設計・開発のモジュール化、分業化、業務プロセスの標準化だ。

 また、開発がプロダクトアウトからマーケットインになりつつある中でグローバルで製品を展開する企業が増えてきたいま、「現地でのフロントローディング開発は必須」(相馬氏)とし、プラットフォーム開発は日本で行い、VoCに基づく企画部分を現地に任せる方法が各社で進んでいることを指摘し、Obblogato II/IIIではこうしたトレンドを踏まえ、機動的な開発体制の構築に向けたモジュール設計のための機能や国際化ならではの機能強化が行われていることを示した。

 このほか、特筆すべきは、設計情報のセキュリティへの対処法だろう。グローバル向け製品プラットフォームを日本で開発し、ローカライズを各拠点で行う場合、国境をまたいだ設計情報の共有が必要となるが、ここで最も懸念されるのがセキュリティだ。機密性の高い部品を含む製品情報を海外拠点と共有する場合、機密情報が漏えいする危険がある。また、設計情報そのものが流出する懸念もある。

 暗号化ソフトウェアを使ったセキュリティ対策も考えられるが、例えば中国のように暗号化ソフトウェアの利用そのものを禁止・規制している地域ではデータ持ち出しが難しくなることがネックとなる。一方で暗号化せずにファイルサーバ経由の情報交換に頼ると情報漏えいリスクが高く、課題が多い。

 グローバル設計・開発ではこうした面にも注意を払う必要があるため、同社では「セキュリティソリューションスタートパック」を用意している。OS側のユーザー認証機構を利用した仮想デスクトップ環境を提供するというものだ。これについては別途展示ブースでもデモが行われていたので、その取材内容も併せて紹介したい。

 一般的なセキュリティ対策ではディレクトリごとの権限設定が行われるものが多く、プロジェクトのディレクトリの中で一部のファイルのみコピーや印刷を制限することが難しかった。これに対してセキュリティソリューションスタートパックは、ディレクトリではなく、個々のファイルごとに権限設定が可能であり、暗号化技術を伴わないセキュリティ対策のため、利便性が高いのが特徴。

 「例えばプロジェクトをフォルダツリーで管理している場合では、共有したいデータと対象者を都度設定して別の共有フォルダを用意する必要があるなど、管理が煩雑になりがちです。場合によってはプロジェクトのツリー上のデータと同期していないなど、致命的な人為的ミスにつながることもあります。セキュリティソリューションスタートパックを利用し、専用クライアントからのアクセスに制限したうえで、ユーザーごとの権限を集中管理できれば、こうした煩雑な管理や人的エラーを回避できます」(ブース説明員)。

 このソリューションは、既存のファイルサーバに対してアドオンとして追加することでOSレイヤで操作権限をコントロールするものだ。暗号化を伴わない実装で済むため、中国拠点などとの情報共有もスムーズに行える利点もある。

Obbligato IIで提供されるセキュリティ対策ソリューションの概念図 Obbligato IIで提供されるセキュリティ対策ソリューションの概念図
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