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» 2010年12月14日 00時00分 公開

組み込みイベントレポート:組み込み業界“不断の進化”を再認識 (2/2)

[石田 己津人,@IT MONOist]
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組み込み機器でのマルチコアプロセッサ活用

 ここ数年来、マルチコアプロセッサをいかに生かすかは、組み込み機器で大きなテーマの1つだが、ET2010でもそれに向けた提案が見られた。

 リンクスは、x86ベースの組み込みハイパーバイザ「Real-Time Hypervisor」(開発元:独Real-Time Hypervisor社)を展示していた。同製品は、x86マルチコアプロセッサ上において、Windowsなどの汎用OS、VxWorksなどのリアルタイムOS(RTOS)をAMP(Asymmetrical multi processing)型で並列処理。汎用OSにはインテルの仮想化支援技術「VT-x」をかませ、遅延の許されないRTOS側はコアに直接アクセスさせる。「このアーキテクチャの組み込みハイパーバイザは業界で唯一。Windows的なリッチなGUI画面とリアルタイム制御が求められる産業用機器で活用できる」(説明員)。


Real-Time Hypervisorの構造 画像8 販売元のリンクスが「このアーキテクチャを持つ組み込みハイパーバイザは業界唯一」というReal-Time Hypervisorの構造
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リンクス

 一方でイーソルは、独自のスケジューリング技術によりSMP(Symmetrical Multi Processing)/AMP型を1つのシステムで混在させられるマルチコアプロセッサ対応リアルタイムOS「eT-Kernel Multi-Core Edition」を積極的にアピールしていた。

 同OSはルネサス エレクトロニクスのカーナビ向けマルチコアSoC(System On a Chip)をサポートするなど、以前より次世代カーナビ向けOSとして注目されてきたが、興味深かったのは、Androidソリューションとしても位置付けられていることだ。「Androidデバイスの中でJavaアプリと既存のμITRONアプリを混在させたいというニーズが生まれ、適用領域が広がっている」(説明員)。

eSOL for Android 画像9 イーソルはリアルタイムOS「eT-Kernel」ベースのソリューション体系「eSOL for Android」を打ち立て、Android分野に力を入れる

 仕組みとしては、「eT-Kernel Adaptor for Android」によりAndroidが使用するOS部分をLinuxから同OSに置き換えると、性能が求められるAndroidアプリはSMP型、リアルタイム性が求められるμITRONアプリはAMP型とマルチコアを柔軟に使い分けられる。シングルコアにしか対応していない既存のμITRON資産も再利用しやすくなるのだ。また、「カーネルメモリ保護とコア別ソフトウェア分離によるメモリ保護技術を備え、システムの安全性も高まる」という。

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イーソル

 リンクスとイーソルの展示を見ると、組み込み機器でのマルチコアプロセッサ活用法としては、AMP型とSMP/AMP混成型が主流になる可能性が高そうだ。

組み込みソフトウェア品質を高める検証・テストソリューション

 ここ2、3年のトレンドどおり、今回のETでも組み込みソフトウェア品質を高める検証・テストへの提案が目立っていた。

 静的解析ツールのリーダー的存在であるコベリティは、最新製品「Coverity 5 Static Analysis」のデモを行い、静的解析の有効性をアピールしていた。同製品は、ソースコードを包括的にとらえる“Software DNA Map”、全パス・プロシージャ間解析などにより検出領域の広さ・深さ、低い誤検出率を誇る。「静的解析は競合製品が増えてきたが、いまでも第三者のベンチマークテストで負けていない」(説明員)という。

コベリティ 画像10 自他ともに認める静的解析ツールのリーダー的存在のコベリティ。同社のCoverity Static AnalysisではUI刷新やレポート機能追加で解析結果の見える化が進む

 今回のETでは、2010年末に予定するバージョンアップ(Coverity 5.3)の新機能で目玉となるレポート機能「Software Integrity Report」も披露。コベリティが毎年行っている「オープンソース品質評価レポート」で先ごろ発表したAndroidカーネル(2.6.32)に対する解析結果も同レポート機能で分かりやすくビジュアル表示していた。

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コベリティ

 一方、実機ベースでの動的解析を訴えていたのが国内ベンダのハートランド・データである。同社の動的解析ツール「DT10」は、実機上で実行するプログラムを止めずに、あらかじめソースコードに自動・任意で埋め込んだテストポイントごとデバッグ情報を収集・表示。このトレースデータを一括で解析してレポートを生成する。そのため、プログラムを長時間実行しての動的解析も容易だ。「組み込み機器の場合、タイミングの問題などは実機ベースの動的解析でなければ十分に解析できないが、トレースデバッグ方式なら、その作業を効率化できる」(説明員)と強調していた。

ハートランド・データの動的解析ツール「DT10」 画像11 ハートランド・データの動的解析ツール「DT10」は、オプション装置を利用するとプログラム実行と同期した信号出力もトレースできる
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ハートランド・データ

 テクマトリックスは、2010年11月にリリースしたC/C++対応自動テストツールの新版「C++test 7.3.2」を前面で訴求していた。同製品は動的解析(単体テスト・アプリ検証)、静的解析(コーディング規約チェック・静的フロー解析)をカバーしており、その範囲で国際電気標準会議(IEC)が定めた電気・電子関連の機能安全規格「IEC 61508 Ed2.0」の認証も取得している。「欧州では今後、多くの産業機器でIEC 61508準拠が要件になってくるため、認証取得は大きな意味がある」(説明員)。

C/C++対応自動テストツール「C++test 7.3.2」 画像12 国際的な機能安全規格「IEC 61508」の認証を取得したC/C++対応自動テストツール「C++test 7.3.2」を訴求するテクマトリックス

 そのほかにC++test 7.3.2では、自動車分野にも適用される機能安全規格向けコーディング規約「ISO 26262 Recommended Rules」を新たに追加したり、ルネサス エレクトロニクスのSHコンパイラに対応するなど、車載分野に向けた機能強化が目立つ。一方、「HIS Source Code Metrics」「FDA C++ Phase 1-3」など医療機器向けコーディング規約もサポートし出した。

 C++test 7.3.2の例を見ても分かるとおり、クリティカルな組み込み機器では、比重を増すソフトウェアに対する国際的な規制や標準化の動きは今後も強まるだろう。その中で開発プロセスやそれを支える開発ツールがどう変わっていくのかは注目に値する。

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テクマトリックス



 以上、全体のごくごく一部ではあるが、ET2010のレポートをお届けした。まったく目新しいトピックがあるわけではなかったが、組み込み技術は“不断の進化”過程にあることは感じられた。2011年に生まれるイノベーションに期待をつなげたい。

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