日本向けに原価追跡機能を強化したDynamics NAV「NAV-MANUFACTURING」で中堅企業の海外進出支援を狙う

パシフィックビジネスコンサルティングが製造業界向けERP製品の最新版「NAV-MANUFACTURING」を発表。原価追跡機能などが強化されている

» 2010年12月17日 00時00分 公開
[原田美穂,@IT MONOist]

 パシフィックビジネスコンサルティング(以降、PBC)は2010年12月16日、製造業界向けERP製品の最新版である「NAV-MANUFACTURING」(日本語版、中国語版)を発表した。

 同製品はマイクロソフトが展開するERP製品群「Microsoft Dynamics NAV 2009 SP1」(以降、Dynamics NAV)をベースに、PBCが日本語化およびアドオン機能追加、テンプレート化したパッケージ。提供開始は2011年1月末からを予定している。パッケージ価格は下記表のとおり。

パッケージ 価格
Dynamics NAV基本ライセンス 25万円
Dynamics NAVユーザーライセンス(11ユーザー) 247万5000円
Dynamics NAVオプションライセンス 30万円〜
Dynamics NAV言語ライセンス 14万4000円
Dynamics NAV日本語画面+マニュアル 50万円
Dynamics NAV中国語画面+マニュアル 50万円
Dynamics NAV日本向け機能 150万円
Dynamics NAV中国向け機能 150万円
Dynamics NAV生産管理モジュールライセンス 500万円〜

 Dynamics NAVはもともと欧州で「Navision」として普及していたERP製品ベンダをマイクロソフトが2002年に買収、Dynamics製品群に中堅向け製品として組み込んだもの。同製品群には、より大規模向けにマイクロソフトが開発してきたDynamics AXや、Dynamics CRMなどがある。Dynamics NAVは欧州、南北米州、アジア各地にパートナーや拠点を置いており、ローカライズも行われている。一部マイクロソフトが直接サポートを行っている地域もあり、ほかの大手ERPベンダと同様にグローバルでシステムの共通化を図りやすいのが特徴。

 欧米系のERPパッケージの多くでは標準原価を採用しているため、「日本企業の多くが求めている月次総平均で原価を見たいというニーズに応えられない」(PBC 取締役社長 小林 敏樹氏)点が問題となるケースが多いという。今回の製造業界向けNAV-MANUFACTURINGでは、Dynamics NAVの日本向け追加機能パックで階梯式配賦機能、月次総平均法など、原価まわりの処理の強化を実現している。これにより、工程別、製品別の積み上げ計算が可能になり、棚卸評価計算や多角的な製造原価分析が可能になっている。また、日本独自の商習慣である「無償/有償の支給品」もERP上で管理できる。例えばサンプル品や試作機など、売り上げとはかかわらないものの在庫引き当てが必要であったり製造オーダーをかける必要があるものもERP上で管理可能になる。

 ほかのERP製品では、原価を追跡する際にBIなどの別システムでバッチ処理を行ってデータを再集計する必要があるため、別途システム投資が必要だが、同製品の場合はERPの中で同様の処理を行うことができ「IT投資額低減にも寄与する」(小林氏)としている。システム上では標準原価管理機能も用意されており、「標準原価の情報自体は別のTable上で管理できる」(PBC 取締役 戦略事業推進室 吉島 良平氏)ようにしているという。

パシフィックビジネスコンサルティング 取締役社長 小林 敏樹氏 パシフィックビジネスコンサルティング 取締役社長 小林 敏樹氏
「従来はモノの流れとコストを、現場と経理部門とで別々に見る仕組みが多く、現場は月末にコスト状況を確認することがほとんど。現場ではコストを追跡したいと考えても、多くのERPパッケージが標準原価の考え方を採用しているため、詳細な情報が得られない」と、既存ERP製品の問題点を指摘した

 このほか、「ショップフロアコントロール」機能では、工程ごとの作業負荷やタスクが視覚的に確認できるUIが用意されていたり、アスプローバのスケジューラ「Asprova」との連携機能も追加されている。Dynamics NAVとスケジューラの双方向で連携できる。また、「品質関連の機能をここまで統合しているERPはほかにはないもの」(小林氏)という言葉のとおり、材料受け入れ検査管理や製品検査管理といった品質管理関連の機能も統合されている。

 Dynamics NAVはもともとのライセンス料が手ごろで、同時接続者数をベースにした料金体系である点もほかのERP製品との差別化のポイントになっている。

 PBCではいままでもDynamics NAVの日本語化、中国語化および導入コンサルティングを行ってきており、中国現地の商習慣や要件の実装を得意としてきた。主に日系企業のアジア地域での展開支援や保守を受け持っている。現在は、マイクロソフトが独自に言語対応している地域だけでなく、同社が中国語、広東語などへのローカライズを行っている。「英語以外の言語が使えることの利点は、英語スキルの高い労働者が比較的多い都市部以外の拠点であっても現地のオペレータが理解でき、帳票などを入力できること」(吉島氏)と、賃金上昇に伴う中国拠点の内陸シフトを考慮した言語対応の利点も示された。同製品は1製品の中で複数の企業を管理することもでき、IFRS施行を考慮した子会社連結にも柔軟な対応が可能になっているという。

 同時に発売される中国向けパックでは、インターフェイスの中国語化のほか、現地の税務・会計系のルールに対応、用友や金蝶といった中国国内ベンダが提供する機能の90%の機能をカバーしている。

 製造大手各社の海外進出は当たり前になりつつあるが「いまは中堅・中小企業の海外進出が増加傾向にあり、Dynamics NAVの現地拠点への導入やプライベートクラウドでの利用の引き合いが多くなっている」(吉島氏)という。

 なお、同社では現在貿易関連の機能をテンプレート化したパッケージ「Dynamics NAV-TRADE」を開発中で2011年3月に発表するとしている。このほか、言語パックの拡大にも意欲的で、台湾、韓国向けのパッケージも開発中だという。

日本語版と中国語版のセットアップ画面 日本語版と中国語版のセットアップ画面
機能やメニュー構成が完全に一致しているのが分かる
ショップフロアコントロール機能 ショップフロアコントロール機能
ERPの中で生産工程の状況を視覚的に把握できる


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