バイオプラスチックの活用を進めるトヨタ自動車

» 2011年01月01日 00時00分 公開
[Automotive Electronics]

 トヨタ自動車(以下、トヨタ)は、内装部品の表面積の約80%に、植物由来の原料を使用したバイオプラスチックを採用する車両を2011年に発売すると発表した。この新車両発売は、同社のある計画の一環として実施される。その計画とは、自動車に用いている、石油化学系材料を原料としたプラスチックの総量の20%(重量ベース)を、2015年までにバイオプラスチックに置き換えるというものだ。

 トヨタは、ブラジルBraskem社が2010年7月に新工場の操業を開始したのに合わせて、バイオPET(ポリエチレンテレフタレート)の導入を加速している。この新工場で製造される材料を利用したバイオPETは、トヨタグループの商社である豊田通商との協力により開発されたものである。

 既存の石油化学系材料を用いたPETは、重量比で70%を占めるテレフタル酸と、残りの30%を占めるモノエチレングリコールを脱水縮合することにより製造されている。それに対し、バイオPETは、石油化学系材料であるモノエチレングリコールを、サトウキビ由来のポリエチレン材料に置き換えて製造したものだ。トヨタによると、「バイオPETは、バイオプラスチックとしては、従来のものより耐熱性、耐久性、耐収縮性などの性能が向上している。一方、PETとしても、既存の石油系PETと遜色のないレベルの性能を実現できている。また、製造コストについても、本格的に量産すれば石油系PETと同程度に抑えることが可能だ」という。

写真1トヨタ自動車の「LexusCT200h」 写真1 トヨタ自動車の「LexusCT200h」 

 Braskem社の新工場では、このサトウキビ由来のPET原料を製造している。トヨタは、Braskem社がブラジルの新工場でサトウキビから生産する年間20万t(トン)の植物由来ポリエチレンのうち、40%を購入することで合意している。また、Braskem社は、トヨタ以外にも、米Coca-Cola社の新しい飲料用ボトル「PlantBottle(プラントボトル)」向けに、このPET原料を供給している。

 トヨタは、2011年前半に発売するハイブリッド車「Lexus CT200h」(写真1)のトランクの内張材料として、このバイオPETを初めて採用する。その後は、採用車種を増やすとともに、ほかの内装部品での活用も進める予定だ。

2000年から取り組みを開始

 自動車へのバイオプラスチックの導入に向けて、トヨタが取り組みを開始したのは2000年のことだった。2003年には、自動車メーカーとして世界で初めて、量産車にバイオプラスチック部品を採用した。日本市場向けのコンパクトカー「ラウム」のスペアタイヤカバーとフロアマットにポリ乳酸(PLA)を用いたのだ。

 同社は当初、自動車部品用のプラスチック材料としてPLAを独自生産する戦略を進め、1000t/年のPLAの生産が可能な工場を保有していた。しかし、2008年には、この工場を帝人に売却しており、現在は自社生産は行っていない。ただし、PLAは、現在も自動車部品の材料として利用している。その供給元は、東レと米NatureWorks社である。

 トヨタが、2011年に導入を予定している新しい素材の1つに、シートやダッシュボード、ドアの内張に用いる塩化ビニルシートの芯材として使われる繊維がある。これは、カナダCanadian General-Tower(CGT)社が、トヨタの技術者とともに開発した塩化ビニルのシート素材「VEHREO」に使われている。VEHREOは、塩化ビニルシートの製造法として一般的なカレンダ製法と、既存の装置を用いて生産することができるシート材料である。VEHREOの下側にある繊維層は、原料の55%に、使用済みペット(PET)ボトルを用いたリサイクル材料を用いている。また、メインの塩化ビニルは、可塑剤のうち10〜35%に、大豆油とヒマシ油から精製したものを使用している。

 CGT社で先端技術担当のバイスプレジデントを務めるPatrick Diebel氏は、「次世代品では、塩化ビニルの可塑剤として使用されているフタル酸エステルのすべてを、大豆とヒマシ油由来のものに置き換える計画だ」と述べている。

(Design News誌、Doug Smock)

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