連載
» 2011年01月13日 00時00分 公開

実践! IE:方法改善の技術(9):運搬・レイアウトを極限まで効率化するための分析手法 (3/3)

[福田 祐二/MIC綜合事務所所長,@IT MONOist]
前のページへ 1|2|3       

4. 運搬の機械化

 運搬はかなりの労力を必要とする人力操作を含んでいることが多いものです。また、個々の操作は、比較的単純ですので機械化の可能性も必要性も高く、大きな力を必要とするということでもそうですし、人体の保護ということから見ても機械化するメリットは大きいといえます。しかし、軽率に便利だというだけで運搬の機械化を導入すると、かえってムダになることが多いことも事実です。そこで、運搬の機械化に当たっての注意事項は以下のとおりです。また、運搬物の特性や全体としてのユニット運搬か連続運搬かということは、そのことよりも先に考えておかなくてはなりません。部品供給などによく使われる手法と機器をまとめると「図5 部品供給の手法と機器」のとおりです。

  • 実用時の採算性
  • 故障の際の代替方法
  • 実用時の有効な稼働率
  • 仕事量が設備能力を超えたときの処理方法
  • 保全の難易さと、その方法
  • 運搬の難易度と、その成立条件
  • ほかの仕事との関連性
  • 建屋と通路との関係
  • 安全性
  • 荷姿との関係
図5 部品供給の手法と機器 図5 部品供給の手法と機器

5. レイアウト改善と現場管理者

5.1 レイアウトの目的

 レイアウトの目的は、人の動作回数や移動距離の削減、材料・製品の運搬距離や手扱い回数の削減ですが、運搬の改善ばかりではなく、仕掛かり品の削減、人や機械設備の稼働率の向上、床面積の節減など広範囲に及ぶため、立案に当たってはレイアウト改善の目的を明確にしなければなりません。そのためには、レイアウトの動機と、1つの考え方にこだわらずにいろいろな方面から考え、比較検討して効果のある方法を選択すべきです。

 また、組立工場のような場合のレイアウトは固定的ではなく、そのときの所要人員や工程編成に応じ、コンベアーなども移動してすぐにレイアウトが変更できるような融通性が高いことも大切です。

5.2 レイアウトの程度と現場管理者

 レイアウトは、作業を行うのに最も経済的で、しかも作業者に安全で快適な作業環境を提供できるように建屋、機械、設備、作業場を有効に組み合わせることが要点です。このことは、工場を新しく建設する場合においても、または以前からある工場の設備のレイアウト変更を行う場合においても変わりはありません。

 従って、機械設備の入れ替えや生産量の変動、生産方式の変更などがあれば、諸条件に合ったようにレイアウト替えすることが望ましいのです。これらの小規模なレイアウト変更は、頻繁に発生するものであり、現場管理者は、日常の管理としてレイアウトがもたらす運搬の硬直化現象や作業環境の不具合を常に発見できる感覚を身に付ける、積極的な心構えが必要です。

 また、そのためには、適宜に職場の総合的なレイアウトを見直すことも有効です。これらのレイアウトを検討する際に有効なチェック項目を「表2 レイアウト検討のためのチェックリスト」に示しておきました。

区分 項目 チェック内容
運搬 逆行交差 ・モノの動きは単純、簡潔なルートになっているか
・極力製品や部品の流れに沿って設備を配置したか
運搬距離 ・移動距離の短縮はもとより運搬をゼロにする配置を考えてみたか
・類似工程の製品グループによる共通作業ラインの採用を考えてみたか
・運搬頻度の高い工程を互いに近付けたか
・人のカラ戻り(空荷)を避ける配置にしたか
運搬方法 ・運搬手段や補助具は標準化し、統一したか
・いつ誰が運搬するかなど、運搬方法は標準化したか
廃材屑(くず)処理 ・廃材、屑(くず)などの処理方法は考慮したか
作業性 経済動作 ・作業台やコンベアの高さは適切で作業点の高さに段差はないか
・ハンドリングのすべてが経済的な動作範囲内になっているか
・掛け持ち作業(多台・多工程持ち)での人の動きは最小に計画されたか
・品物の搬入、部品供給は最も良い荷姿で持ち込まれ、操作しやすいか
・搬入、搬出のためにムダな操作(再取り扱い)がなく移動できる位置、向き、置き方が取られているか
面積 余裕、空間(作業スペース、機械スペース、保管スペース) ・工程ごとにスペースの余裕を付け過ぎてはいないか
・立体的に空間を利用しているか
・作業スペースは適切か
・作業者の前後の仕掛かり面積、部品や製品などの保管スペースは適正か
表2 レイアウト検討のためのチェックリスト

◇ ◇ ◇

 全9回にわたって紹介してきた「方法改善の技術」は、ひとまず今回で終了です。「方法改善(作業改善)」は「ムリ・ムダ・ムラ」の排除から始まるといっても過言ではありませんが、第一線で働く人たちや現場管理者の人たちの改善活動における役割は非常に重要なことですが、「モノづくりに携わる人たちの業務はいかにあるべきか」は、次のように考えてもらいたいと思います。

 改善内容に規模の大小はあっても、改善のヒントや問題の発見に関して、実際の第一線の現場の人たちは、実施された改善結果の成否が誰よりも早く、しかも確実に目撃できますので、すべての改善活動において、その中心にいることは間違いありません。

 従って、職場での問題解決に対する手法の展開や詳細な分析はもちろん、「IE概論」で述べた「IEマインド」や「モーション・マインド」を身に付け、日常業務の中で常に無意識のうちに改善にアプローチできることが必要です。

 作業に関する効率向上のカギは、現場の人たちが握っているといっても過言ではありません。ですから、常識として作業効率をチェックできることが必要です。問題発見がタイムリーに、かつ正確に行われ、迅速に処置できることが作業改善には最も重要なことだといえます。

 次回からは「すぐに役立つ<品質管理技術>」に進みます。IE(Industrial Engineering)は、生産資源である「人(Man)・材料(Material)・設備(Machine)」を効果的に活用して、「良い(Quantity)モノを安く(Cost)、速く(Delivery)」市場へ提供するための実践活動であると定義付けられています。とりわけ、私たちの事業成果の1つでもある「良いモノを造る」ための「品質管理技術」はますます重要視されています。また、中小企業庁編纂の「中小企業白書」によると、「品質の安定性」が企業間取引を解消する際の最も多い要因であると記載されています。「品質の安定性」を維持していくためには「品質管理技術」は欠かせません。

 IE的視点から、品質管理とは何か、品質管理の方法、品質管理に必要な手法などについて、より実践的に説明していきたいと思っております。ご期待ください!!


筆者紹介

福田 祐二(ふくた ゆうじ)

MIC綜合事務所所長

(株)日立製作所にて、高効率生産ラインの構築やJIT生産システム構築、新製品立ち上げに従事。退職後、MIC綜合事務所を設立。部品加工、装置組み立て、金属材料メーカーなどの経営管理、生産革新、人材育成、JIT生産システムなどのコンサルティング、および日本IE協会、神奈川県産業技術交流協会、県内外の企業において管理者研修講師、技術者研修講師などで活躍中。日本生産管理学会員。



前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.