It's a Real World!
――バーチャル実験室が変える製品開発の未来
3次元流体解析ツールPowerFLOWが織りなすデジタル設計の世界

エクサ・コーポレーションは、格子ボルツマン法というユニークな解析手法を採用した3次元熱流体解析ソフトウェア「PowerFLOW」の開発元である。その日本法人 エクサ・ジャパン 代表取締役社長 石川 和仁氏いわく、「その手法がどういったものであるか理解していただくことよりも、あくまでお客さまが、ツールを用いることで開発において結果を出していただくことが大事」。独自の手法や取り組みを用いてバーチャル環境に作りだす「リアルワールド」で、世界のモノづくりを元気にする方法を探究し続ける。

» 2011年01月19日 10時00分 公開
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「リアル」。その2つの意味

 エクサ・ジャパンの販売する「PowerFLOW」は、「リアルワールドの流体シミュレーション」というキャッチを掲げる。その「リアル」には2つの意味がある。エクサ・ジャパンの代表取締役社長 石川 和仁氏は次のように説明した。

エクサ・ジャパン 代表取締役社長 石川 和仁氏

 1つは、現物に極めて近い形状で解析モデルを再現するという意。「一般的なCAEの解析モデルは、ぱっと見なら、実形状に近く見えます。しかし、詳細を見ていくと、実際は微細なすき間があるはずなのに、つぶれてしまっていることもあります。流体の場合、そういった、わずかな形状の違いが、解析結果に顕著な影響を及ぼしてしまいます」(石川社長)。PowerFLOWは、モデル形状を極めて詳細に表現できる技術を備える。

 もう1つは、流れ場をリアルに表現するという意。「従来の流れ計算で通常扱われてきたのは、定常状態(時間による変動のない流れ)や定常状態であると仮定した流れ場です。しかし実際の流れ現象で定常になるものはむしろ少なく、ほとんどの現象が、時を刻むごとに変動しているのです。その変動状態を取りに行くのが、わたしどものPowerFLOWです。細かい渦構造なども、時間的変化も含めてリアルに解きにいきます」(石川社長)。

 そのうえ、PowerFLOWは、上記のように詳細かつ高精度なモデルデータを高速に処理することが可能だ。高度な計算性能への寄与はさることながら、メッシングや形状簡略化などのプロセスを省くことができることで、従来、何週間もかけていた作業を数日程度にまで短縮することもできるという。

PowerFLOWによる流れ解析

格子ボルツマン法とは何か?

 同社の独自手法「格子ボルツマン法」は、流体を仮想的な粒子の動きとして扱う手法である。1つ1つの粒子の動きを計算する粒子法と異なり、空間格子上での状態量を扱うが、ユーザーは、その空間格子の生成処理を一切意識しなくてもよい。格子ボルツマン法をベースとしたPowerFLOWでは、どんなに複雑なモデルであっても、一切自動で、かつ確実に素早くメッシュを切ってしまうからだ。メッシュが切れない、あるいはメッシュの品質が悪い故に計算が流れない、といった問題への心配も無用だという。

 「格子ボルツマン法とは、いったい何なのか?」――たとえそれが理解できなくても、ユーザーが求める適切な解が確実に出ることが必要だ。

 「当社製品の解析手法は、先進的なものを使っています。しかし、その手法がどういったものであるか理解していただくことよりも、あくまでお客さまが、ツールを用いることで開発において結果を出していただくことが大事なのです」(石川社長)。

難解だった流体騒音解析を実現

 例えば、電気自動車は、動力音が非常に静かになるため、エンジン駆動車では気にならなかったような音――ドアミラーの風切り音や、HVAC空調ノイズなど――が気になるようになる。これから、どんどん市場に普及していくだろう電気自動車開発において、走行にまつわるさまざまな騒音の解消は、より一層重要となっていく。PowerFLOWの実力がフルで発揮されるシーンの1つは、流体騒音解析だ。従来のソフトウェアでは、風切り音のような流体と音が関連し合う現象を忠実に再現することは不可能で、せいぜい当たりを付ける程度しかできなかったという。

 「大学の研究機関などが、独自開発するコードを用いて比較的単純なモデルの音響流体解析をした事例はありますが、従来の商用流体ソフトウェアにおいて、音響と流れ場を同時に解くのはほぼ不可能でした。このため、企業が実用的な製品に適用するのは、ほぼ無理といわれていました」(石川社長)。

 それが、PowerFLOWなら騒音と流れの関係について、予測ではなく、数値化することが可能だという。

 さらに同社の「PowerACOUSTICS」というアプリケーションをPowerFLOWと連成させることで、結果の数値をさらに音源化できる。PowerFLOWで可視化したデータとともに、PowerACOUSTICSで再現した解析結果の音と、デジタル処理したリアルな実験音とで比較をすることが可能だ。解析結果の「見える化」だけではなく、「聞こえる化」まで実現してしまうというわけだ。

優れた並列化性能

 流体騒音解析は、非定常なデータまで扱うことが必須なために大規模なものとなり、ボクセル数は、5000万〜1億に及ぶという。大規模な流体騒音解析の計算時間をどのように減らしていくのか。そこではやはり、マシンパワーが非常に頼りになる。流体騒音解析に用いるハードのCPUは、最低64コアは欲しいところだと石川社長はいう。ちなみに、同社のPowerFLOWユーザーは、128コアかそれ以上で計算しているケースが多いとのことだ(当然、解析する対象により状況は異なる)。

 ここで、PowerFLOWの大きな利点が活躍する。それは、非常に優秀な並列化性能だ。従来解析ソフトウェアでは、CPUのコア数をどんどん増やしていっても、8、16コアレベルなら計算時間短縮に確実に効くが、それが128、256コアとなると、計算性能が飽和してしまうのが常だった。それが、PowerFLOWなら、たとえ256コアを超えても、増やせば増やすだけ、計算時間短縮が可能なのだという。そのような特性は格子ボルツマン法による処理が大きく寄与しているという。

 同社は、「1コア換算で何時間利用したか」により料金が決まる、プリペイド的なライセンスプランも用意している。「365日、常に128コア使うのではなく、スポット的にコア数を増やしたいというニーズが多々あります。1プロジェクトの開発期間の中でずっと解析を流しているわけではなかったり、年間を通して見れば、プロジェクトとの間に空き時間があったりしますから。あるいは、早く結果を出さないといけなくなったときなどにも利用していただけます」(石川社長)。

バーチャル実験室「TVA」への取り組み

 同社は、総合解析フレームワーク「TVA(トータル・ビークル・アナリシス)」を提供する。その名前通り、車両全体のさまざまな計算を一度に行う仕組みである。「物理的に試作したデータをPowerFLOWでリアルなモデルとして再現しておけば、仮想上の風洞で、空力やエンジンの冷却、騒音など、さまざまなアプリケーションを組み合わせて、複数の課題を一気に解くといったことが可能です」(石川社長)。

 TVAとは、まさに、バーチャル実験室だ。試作におけるモノづくりコストの大幅削減はもちろん、さまざまな課題のトレードオフになりがちな自動車開発を効率よく進められることも大きな利点だ。

「TVAなら複数の課題を一気に解くといったことが可能」と石川氏

 「例えばタイヤにスパッツ(部品)を装備して、タイヤ自身に空気の流れを直接当てないようにします。そうすれば、空力性能が良くなるからです。でも、それは一歩間違えれば、ブレーキに空気が流れていかなくなってしまう恐れもあります。ブレーキ設計側としては、ブレーキに空気を当てることで冷却したい。ブレーキが熱を持ち過ぎれば、機能しなくなってしまいますから」(石川社長)。TVAなら、このような、空力性能向上とブレーキ冷却が設計初期の段階から同時検討できる。

 またTVAでは、流体解析以外にも、他種の解析との連携や連成が可能であることが求められる。「流体解析ソフトだけでは、お客さまの課題に十分応えられません。例えば、車の冷却なら、ラジエータ内の水流を考慮する必要がでてきます。さらに、コンデンサや空調系のループといった制御の課題も絡んできます。制御には別の解析ツール(他社扱い製品)があるので、それと、当社の3次元ツール(PowerFLOW)を組み合わせることでリアルワールドにもっと近づいていく取り組みは、1つの有効な手法だと考えています」(石川社長)。

 TVAは、車両全体をまとめる自動車メーカーだけのシステムではない。部品サプライヤは自社でTVAの仕組みを持たなくても、エクサ・ジャパンが所有する一般的な車両モデルデータとTVA環境を利用することも可能だという。自社で開発した部品が、車両についた場合にどういう性能を発揮するか検証することができ、その検証結果を利用して自動車メーカーに自社製品を売り込むことも可能だ。

 さらにデザインと設計(解析)、それぞれの部門をうまく橋渡しできるようなツールも同社で提供している。「空力性能的にはこういう形状にしたいけれど、デザイン的には嫌だという場合があると思います。そのような場合には、設計者とデザイナーが同じ画面を一緒に覗きながらモーフィングできれば、スムーズな議論が可能です」(石川社長)。

PowerFLOWによる結果をレンダリング処理した画像

 もう1つ、最近同社が力を入れているのは、設計最適化ツールとの連携だという。ある課題について1回だけ計算し、それに基づいて人が判断するという手法ではなく、設計最適化ツールを用いて設計初期の段階で複数の条件を同時検討してしまう。同社では、最適化ツールと同社製品との橋渡しとなるインターフェイスも提供している。

専門部隊による手厚いサポート

 同社では、ユーザーサポートにも非常に力を入れて取り組んでいる。同社は、空力、音響、熱などのアプリケーションごとに専門のサポート部隊を設置している。彼らが顧客の抱える課題を的確に把握したうえで、手法開発もする。「わたしどももアプリケーションをよく理解したうえで、お客さまに単に使い方だけをお伝えするのではなく、あくまで設計開発に使えるようにするための設定や、信頼性の高い検証データ提供などしています」(石川社長)。

 単なる電話やメールの対応だけではなく、同社のサポートスタッフが企業に直接伺ったうえで、顧客とともに実際の課題に取り組んでいる。実験と計算のコリレーションを取るため、ときに顧客企業の実験設備に入って検討することもあるとのことだ。ソフトウェアだけではなく、ハードウェアも含めたコンサルテーションを行っている。

 汎用性を無理に求めず、高い専門性にフォーカスする製品を提供する。しかし、ツール自身の特殊性や高い技術について誇示することは決してない。あくまでその性質を生かして、世界のデジタルな設計を力強く支援していくことを同社のミッションとして掲げる。

 専門性の高い製品といえども、適用できる分野は広い。これまで強みとしてきた自動車分野だけではなく、家電や空調関係にも同社のツールをどんどん広めていきたいと石川社長はいう。世界の数々の名車を生み出してきたテクノロジーが、これからの製品開発のあり方を大きく変えるだろう。

■独自の解析手法を核に、さまざまなツールを展開するエクサ・ジャパン

エクサ・コーポレーションは、格子ボルツマン法という解析手法を採用した独自開発の3次元熱流体解析ソフトウェア「PowerFLOW」を開発している米国のCAEベンダだ。同製品は、数多くの大手自動車メーカーに採用され、その開発業務改善に多大な貢献をしてきた。1992年の創業以来、同社の収益は年々、著しい成長を遂げている。 エクサ・ジャパンはその日本法人で、2005年4月に設立。PowerFLOW以外にも、さまざまな設計・解析ツールおよびコンサルティング・サービスを提供する。

■流体解析におけるシステム性能の特徴
CPU性能が与える影響のほかに、メモリバンド幅(データ転送性能)がシステムに与える影響が非常に大きい。

■PowerFLOW CFDにお勧めなシステム構成は?
富士通 PCクラスタ おすすめ構成
Quick Start Suite「ベースモデル」

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提供:富士通株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2011年8月12日