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» 2011年01月19日 10時00分 公開

MD(複合領域解析)は単なる連成解析ではない
――中堅企業も要注目な新・解析環境
FEM一筋40年の老舗 MSCが生み出したMD Nastran

エムエスシー ソフトウェア コーポレーションは、満を持して、新製品「MD Nastran」を発表した。同製品ではなんと、MSC Nastran、Marc、Dytran、LS-Dynaなどの解析ソルバをMD Nastranという1つの環境に統合してしまったのだ。この製品の手法である「MD(複合領域解析)」とは、いったい何なのか。また、連成解析との違いはどこなのか。斬新な手法について紹介しつつ、そこで欠かせないHPCへの取り組みについて触れていく。

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 エムエスシー ソフトウェア コーポレーション(以下、MSC)の新製品「MD Nastran」――その背面で動くのは、Marcだろうが、Nastranだろうが、ユーザーには意識させない。また、設計開発における各部門間の壁も、感じさせない。MD Nastranの「MD」とは、マルチディシプリン(Multidiscipline:複合領域)の略だ。そして、「MDO(Multi Discipline Optimization)」は、「複合領域最適化」という意味になる。つまり、応力、流体、衝撃・衝突などさまざまな解析領域をまたぎながら、最適化設計を行う解析手法だ。

 製品のライフサイクルコストの7割は、概念設計の過程で決まってしまうといわれる。品質や性能もまた、概念設計の段階でほぼ確定してしまう。MDOは、その概念設計段階で、製品性能、機能、品質に関する問題の洗い出しが効率よく行える。つまり、後行程で発生する問題を減らすことで、品質を落とさずに開発期間の短縮ができるのだ。

エムエスシーソフトウェア Business Development部 部長/工学博士 立石 源治氏

 MDOのような解析は、従来、ユーザー側の工夫と努力、つまり自力で構築してきた部分だという。システムも高価になりがちだった。ある意味、一部のユーザーしか扱えなかったといえる解析の世界における裾野が、MD Nastranの登場によって、ぐっと広がった。

 MD Nastranは、一部の超大手企業を対象としたシステムでは、決してない。「MD Nastran Desktop」という中小規模の企業用の製品は、年間リース価格で100万円〜で提供するというのだから驚きだ。 当然、システムとしてはスケールダウンをしているが、MD Nastranと基本機能は何ら変わらない。また、テンプレート(ワークフロー)作成機能も備え、例えば解析チームの専任者がテンプレートを作成し、解析の専門家ではない設計者がそれを用いて高度な解析を行うなど、作業連携も可能となる。

 企業の規模は、解析の規模と直接関係はない。小さな企業や組織における設計開発だからといって、そこで開発される製品が必ず、単純であるわけでは決してないのだから。そこに大規模解析がまったく不必要だったわけではなく、資金やリソースがそのネックになっていただけだった、という場合も大いにあった。MD Nastranは、まさにそこに一筋の光を差した。

HPCと試作レス

 実現象のシミュレーションを許容できる時間で――例えば1週間かかる解析を一晩で――終わらせたい。MSCは、MD NastranにおけるHPC(PCクラスタ)対応でかなえる目的の1つに、「試作レスを目指す」ことを挙げている。

 「試作レスについては、100%実施されているという企業はまだありません。やはりフィジカルテスト(実験)と併用しているのが現状です。フィジカルテストのごく一部をバーチャルテスト(コンピュータ解析、CAE)に置き換えることに成功した企業はあるかもしれませんが」とエムエスシーソフトウェア(MSCの日本法人) Business Development部 部長で工学博士でもある立石 源治氏は説明した。

 ここでいう試作レスとは、例えば、1回だけ実機を作り量産試作をして、OKなら量産を開始する、といったことを指す。「実機試作は1回だけ行いますが、これまでのような設計改良をするための試作ではなく、単なる最終確認としてなのです」(立石氏)。MD Nastranで、設計初期にて品質バラツキを考慮しながら問題対策を行っていけば、試作レスの実現にどんどん近づいていける。

 また、設計のロバスト性の確認(ばらつきの考慮)、設計の最適化(MDOの実現)も、HPCのパワーが重要となる。

 立石氏は、MSCにおける開発の方向性について重要なポイントとして以下を挙げた。

 まず、「プリポストの機能強化」ならびに「大幅な改良」。「プリポスト(GUI)が良くなければ、設計・開発における生産性は上がってきません」(立石氏)。

 次に「ソルバの強化」および「ソルバ同士の連携」。「MDOでは、非常に計算量が増えてきます。大規模な計算であっても高速に計算ができるソルバ機能も併せて開発していかないと、現実的に使える製品にはなっていきません」(立石氏)。

 例えば非線形解析ソルバ「Marc 2010」では「DDM」(Domain Decomposition Method:領域分割法)という技術を進化させた。この手法により、非線形解析を含むすべての大規模計算を並列化し、高速化できるとのことだ。

 そして、「PIDO(Process Integration & Design Optimization:ピド)」。すべての製品開発フローをプロセス化し、統合環境で、自動的にCAEを回し、最適化設計を行うこと。この手法をユーザーに提供する。

 すなわち上記に基づいて開発されたのが、MD Nastranだ。また同製品において、HPCが、非常に重要な位置を占めているということになる。

 MDOの計算がいくら高速だとはいってもやはり、その計算は大規模なマトリクスになり、一般的なハードウェアではその能力を十分に発揮できない。その解析を現実的な時間、あるいは開発現場が求める時間で終わらせるとなれば、HPCによる高速な計算は必須だ。

MDOとは何なのか

 よく疑問に思われるのが、MDと連成解析との違い。しかし、それらは「まったく違う」と立石氏はいう。

 通常の連成解析は、例えば振動騒音解析の“モデル”、応力解析の“モデル”、2つのモデルが単につながり合い、計算をする。

 一方、MD解析の目指すものは複数の性能領域の解析を1つの解析モデルで可能にすることである。そしてその進化型のMDOは、前述と同様な例で説明するなら、振動騒音解析の“計算プロセス”(FEMの基本となる剛性マトリクスなどブラックボックスとよくいわれる部分)と応力解析の“計算プロセス”をつなげ、それぞれの感度を算出し、それら2領域(分野)における最適解を求める。

 MDOの大きな利点は、設計パラメータ(変数)が非常に多くかつ細やかな場合であっても、高速かつ確実に収束解が得られること。

 連成解析と最適設計を組み合わせた解析を行ったとしても、計算はあくまで別個にソルバを回しているに過ぎないし、最適解を求めるプロセスもまた別で存在する。すなわち連成解析では、たくさんの変数を振ろうとなれば、計算時間は膨大になるし、収束しない場合すら出てきてしまう。

 「ある1つの製品に対して求められるのは、例えば、耐熱性、耐落下性、耐振動性……といった、さまざまな“領域”における性能です。さらにやっかいな場合というのは、それぞれの性能領域が背反してしまう場合です。ある部分をよくすれば、ある部分は悪くなってしまう、といった状態ですね」(立石氏)。

 つまりMD NastranでMDOを行えば、そのような複数の性能領域にまたがる設計パラメータを変化させることにより発生する各領域での性能のトレードオフを考慮した設計開発を効率よく進めることができる。

HPCとメッシング技術

 メッシュを細かく切っていけば、解析精度は上がるけれど、メモリは食うし、計算時間もかかってしまう。そこで、「取りあえず、ざっくりと全体の変形を見たい」ときは、粗めのメッシュを切ってみる。また、詳細な応力分布を見たいときは、細かいメッシュを切ってみる、というふうにメッシュを切り分けるのが常だ。

 解析について熟知していない人がメッシュを切れば、その結果はバラついてしまう。また、結果によってはメッシュを切り直すという面倒な事態も発生してしまう。

 MD Nastranの「局所アダプティブメッシング」は、そのような問題をすっきり解決する機能だ。この機能では、必要な個所に精度を確保するために、プログラムが自動でメッシュを増やしてくれる。

 ここで、やっかいな問題がある。非線形の解析を行う場合では、解析の進展に応じてメッシュが自動的に変更される。そこで並列計算を行う場合、メッシュが途中で切り替わる際に、ロードバランス(複数のプロセッサに分散させたタスクのバランス)が取れなくなってしまうことが多々ある。今後は、これらの状況にも対応できる機能の開発を行う必要がある。

 MSCの独自技術である「グローバルリメッシュ」および「リゾーニング機能」では、解析をして得られた結果の精度を評価したうえ、精度が悪い個所については、解析の途中でリメッシュエンジンを回してメッシュを切り直す、といった処理を自動で実行できる。

 またMSCでは、そういった取り組みと併せ、GPUへの対応にも力を入れ、性能測定も進めており、良好なスケーラビリティも認めているとのことだ。

アダプティブメッシングによるピーク応力 53万自由度モデルへの適用例(エムエスシーソフトウェア提供)

MDOの裾野は、広がる

 「わたしどもでいっている『HPC』は、あくまで、実際の製造業に対して、直接的に利益が出せるようにするものです。すなわちそれは、試作レスの実現であり、従来の定性的なCAEから定量的な判断が可能なCAEへと進化させることです。そこで重視しているのは、より複雑かつ大規模なシミュレーションを与えられた時間で計算可能とするような技術です」(立石氏)。

 そのような環境を実現すれば、バーチャルの世界で確実な性能評価ができ、より短期間、かつクオリティの高い設計・開発が行える。

 「これまで開催してきたセミナー、あるいはお客さまとの直接のやり取りを通じて、MD Nastranの反響を見てきましたが、MD Nastranの複合領域解析は、大変好評をいただいています。また、非線形解析は非常に時間がかかります。MD Nastranの並列性能の部分についても、『いつも3〜4日かけていた計算が、一晩で可能になる』といった直接的効果について、大きなメリットを感じていただいています」(立石氏)。

 FEM一筋40年、長年にわたり製造業の設計開発を支えてきた経験豊富なベテラン・MSC。同社が提供するのは、単なる壮大なスケールの製品ではなくて、あくまで設計開発現場で役に立つ、現実的な製品だ。MD Nastranは、「NASTRANやMarcは高価」「難しくてマニアック」「なんだか壮大過ぎないか」と思い込んでいたユーザーにこそ試していただきたい製品だ。

■有限要素法(FEM)ソルバの王様、Nastranが進化した

1960年代、NASA(The National Aeronautics and Space Administration)で行われていた、航空機の機体強度におけるコンピュータ解析をテーマとした「有限要素法プログラム作成プロジェクト(SADSAM:Structural Analysis by Digital Simulation of Analog Methods)」。そこで開発された解析プログラムは、「NASTRAN(NASA Structural Analysis Program)」と名付けられ、やがてそれがMSCから商用としてリリースされたのは、1971年のこと。その後、NASTRANは、航空・宇宙分野ばかりでなく、自動車や造船、産業機械、建築、土木などにおける構造解析現場に普及していき、「有限要素法(FEM)ソルバの王様」ともいうべき地位を築いてきた。 そして2010年、MSCは、「MDO(Multi Discipline Optimization)」というまったく新しいテーマを引っ提げ、満を持して、新製品「MD Nastran 2010」を発表した。同製品ではなんと、MSC Nastran、Marc、Dytran、LS-Dynaなどの解析ソルバをMD Nastranという1つの環境に統合してしまったのだ。

■構造解析におけるシステム性能の特徴
あらゆる面で、強力なパフォーマンスが要求される構造解析には、CPU、メモリ容量の影響が大きい。

■MD Nastran、MSC Nastran、Marcにお勧めなシステム構成は?
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提供:富士通株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2011年8月12日