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» 2011年03月16日 13時55分 公開

ARMマイコン「Kinetis」で市場に再攻勢をかけるフリースケール電子機器 イベントレポート(29)(2/2 ページ)

[石田 己津人,@IT MONOist]
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MPUからKinetis乗り換えを支援するRTOS

 基調講演の後は、フリースケール製MCUのエコシステムを支えるパートナー各社からKinetis向けソリューションの紹介があった。

 まず、μITRONベースのARMコア向けRTOS「μC3シリーズ」で知られるイー・フォースの与曽井 陽一氏が「Cortex-Mコアに最適なRTOS+TCP/IP」と題して講演を行った。同氏は「Kinetisのような高性能な32ビットARM MCUには8/16ビットMCUからだけでなく、32ビットMPUからの乗り換えもある。ただ後者の場合、外付けメモリに格納していた既存ソフトウェアはMCU内蔵メモリに収まらないという問題がある。そこで軽量なMCU向けRTOS『μC3/Compact』を提案したい」と語った。

photo イー・フォースの与曽井 陽一氏

 μITRONの自動車制御プロファイルを採用し、Cortex-Mシリーズに対応するμC3/Compactは、カーネルの基本コードが2.4KBと極小サイズ。専用I設定ツールでカーネルやMCU内蔵回路の設定が行え、その設定情報から自動生成されたソースコードを適用できる。Kinetis版は20011年3月末から提供が始まるが、「第2四半期にはメモリ保護機能対応版、第3四半期にはFPU対応版と矢継ぎ早に投入していく」という。

 さらに、オプション提供されるTCP/IPスタック「μNet3/Compact」でもKinetis版の提供が3月末から始まる。同製品は軽量ながら主要なプロトコルに対応し、独自APIも提供される。与曽井氏は「μC3/CompactならRTOSにTCP/IP、USB、FileSystemを含めてもROMで150KB程度。MCU内蔵メモリで十分に動作する」と優位性を訴えた。国内ではKinetis向けのRTOSとしてμC3/Compactは注目されそうだ。


photo MPUからMCUへの乗り換えで求められるソフトウェアのコンパクト化

Kinetisで本格的な映像アプリを可能にする

photo テクノマセマティカルの米野 恵津司氏

 次にテクノマセマティカル 営業部 マーケティングマネージャーの米野 恵津司氏が「Cortexシリーズに最適化したビデオソリューション」と題して講演を行った。同社の主力製品は「DMNA(Digital Media New Algorithm)」と呼ぶ高効率な独自アルゴリズムに基づいて開発される、画像・音声コーデック向けソフトウェア・ハードウェアIPである。

 米野氏からは講演の冒頭、H.264コーデックでのベンチマーク結果が示されたが、同社製品は各処理のサイクルタイムが競合製品の5分の1程度しかなく、画質も段違いだった。実際、同社の各種コーデック向けソフトウェアIPは、携帯電話機からワンセグTV送受信機、車載情報機器、ゲーム機、プロジェクタ、セキュリティ機器と幅広い分野で採用されている。


photo Kinetis上でのビデオ再生デモ、メモリ使用パターン別の性能比較

 そして、「Kinetisが持つパワフルなインストラクションはDMNAの数学的手法と親和性があり、DSP、SIMDを最適化できる」(米野氏)として、Kinetis単体でもビデオを十分に扱えることを示すデモが行われた。そのデモシステムは、フリースケール製のKinetis向け評価ボード(MCU:K60N512、SRAM:128KB)にメモリモジュール(MRAM:512KB)の組み合わせ。これにMPEG-4デコーダを組み込み、SDカード内のMPEG-4ビデオ(QCIF/15fps/100Kbps)を実行し、PCで表示するというもの。QCIFサイズながらビデオは実にスムーズに再現された。米野氏は「もう少しメモリに余裕を持たせ、SRAM/MRAM間のオーバーヘッドを減らせば、さらに本格的なビデオ再現が可能」と自信を見せた。Kinetis+DMNAの組み合わせは大きな可能性を秘めているだろう。

省電力化も作り込めるソフト統合開発環境

photo IARシステムズの松田 直樹氏

 続いての講演は、組み込み向け統合開発環境「IAR Embedded Workbench」で知られるIARシステムズ・マーケティングチームリーダーの松田 直樹氏。「Kinetisにおけるグローバル・スタンダードの開発環境」として同社のKinetis評価キットを提案した。そのキット構成は、前述のデモでも使われたフリースケール製の評価ボード、拡張モジュールにIARシステムズ製のJTAG-ICE、ARMコア向けEmbedded Workbench(EWARM)の評価版を付属したもの。価格はわずか2.5万円である。

 EWARMは、個別デバイスのサポート、コーディング規約「MISRA-C」の標準搭載、シームレスなツール携と機能が充実する一方、前述のμC3シリーズにも対応したRTOS認識デバッグプラグイン搭載、日本語化、日本法人による技術サポートなどローカル対応もしっかりしている。

 さらにEWARMで目を引いたのは、松田氏が「ソフトウェア側から省電力化を図るアプローチ」と称した新機能「Powerデバッグ」。これはJTAG-ICEからターゲットに供給する電力量とSWD/SWOデバッグで得られる情報を連動させて解析し、プログラム実行と消費電力の関係をビジュアル表示する機能だ。「消費電力グラフの任意ポイントでソースコードを表示させたり、関数別に消費電力の一覧が見られる」(同氏)とした。KinetisとPowerデバッグを組み合わせると低消費電力化が進みそうだ。

photo 新機能「Powerデバッグ」ではグラフから該当ソースコードを即表示

 以上、Freescale MCU Summit 2011 in Tokyoの様子をお伝えした。いよいよ本格的に動き出したKinetisシリーズは、MCU市場のアプリケーションやベンダの勢力図に変化をもたらす可能性がある。そう感じさせるセミナーだった。

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