被災地域のモノづくり企業向け支援情報まとめ〔前編〕モノづくり企業復興支援情報(1)

今回の震災は製造業にも大きな打撃を与えましたが、現在、各機関が続々と支援策を打ち出しています。本稿ではその一部を紹介します。

» 2011年03月24日 16時00分 公開
[原田美穂,@IT MONOist]

東北地方太平洋沖地震について

このたびの大震災で被災された皆さま、ご家族ならびに関係者の皆さまに心からお見舞いを申し上げます。


@IT MONOist編集部一同



 今回の震災は広範囲にわたり甚大な被害をもたらしました。編集部に送られてくるプレスリリースからは、いまもメーカー各社の安否確認や、生産・検査ラインなどの復旧に向けた設備点検に多忙を極めていらっしゃる様子がうかがえます。こうした中でも、比較的被害が軽微だった地域の生産ラインが徐々に復旧しつつあり明るい兆しも見えてきています。

 3月の決算期直前の時期ということもあり、被災地域の読者の皆さんの中には、当面の資金面で課題を持たれている方も少なくないでしょう。

 現在、被災地域を対象に、中小企業を対象とした公的機関からの各種支援策、インフラ提供企業からの減免措置などが続々と発表されています。本稿ではそのうち、まずは公的機関、インフラ関連を中心に紹介したいと思います。

被災者向けの融資・支援策

 操業停止や納品遅延などを考えると、当面の資金繰りは大きな課題となっていることと思います。中小企業庁や各地方自体が支援策を提供し始めています。本稿では3月24日までに確認した内容を基に掲載していますが、今後も同様の支援策が各地で提供されると思われます。

 地方自治体の取り組みを含め、中小企業向けの支援策は東北地方太平洋沖地震関連情報にまとめられています。このほか、下記のように地方自治体や商工会議所でも独自に支援を進めています。

茨城県商工会議所連合会 被災した中小企業向けの特別相談窓口を当面土日・祝日もオープンすると発表しています(3/16)。被災による建物の損壊、商品・製品の破損などの問題や、融資についての相談も受け付けています。

栃木県 「震災に関する中小企業者への金融支援」を示しています。

 このほか、東北・北関東地域だけでなく、愛知県、香川県、富山県、横浜市など、これら地域と取引のある地域でも支援策が出ています。今回の震災に関連して間接的に影響を受け、経営上の問題が出ている場合は、自治体や商工会などに相談してみることをお勧めします。


各種申請に必要な罹災(りさい)証明書の取得方法について

 各自治体や省庁が提供する支援(各種減免措置、支援制度)を受けるには、多くの場合、「罹災証明書」が必要となります。

 罹災証明書自体は、一般の住宅でも地震保険の申請などに必要です。ここでは事業者向けに、支援融資申請に必要になる罹災証明書の取得手順について紹介します。

 罹災証明書は原則として地域の消防署で発行されることになっています。今回の震災ではこうした機関が機能していない地域もあるかと思いますが、この場合は臨時で県が行政代行している拠点で相談してみるとよいでしょう。

 発効に必要なのは、事業所が被災していることを証明できる写真や、所在地が確認できる証明書などです。写真はデジカメや携帯電話のカメラなどで撮影したものでも有効です。

 復旧に向けて片付けを行いたいところとは思いますが、まずは被災状況の記録と証明書の申請をいち早く行われることをお勧めします。

「雇用調整助成金及び中小企業緊急雇用安定助成金」の適用について

 厚生労働省が3月18日に発表した「平成23年東北地方太平洋沖地震に伴う労働基準法等に関するQ&A(第1版)(PDF)」によると、震災で材料不足などにより操業停止したり、計画停電によって休業が発生した場合などにおいて、従業員への手当支払いに対して助成が行われます。詳しくは下記PDFのQ&Aや、厚生労働省のWebサイトを確認してみてください。


東北地方の関税の猶予・免除措置と被災貨物への対応

 今回の震災では津波により港湾の機能が一時停止する事態となりました。現在、大船渡税関支署、釜石出張所、都税関支署、仙台塩釜税関支署、気仙沼出張所、石巻出張所、仙台空港税関支署、小名浜税関支署、相馬出張所は業務再開のめどが立っていません。この影響により通常の税関手続きが行えない地域では「あらかじめ税関に相談のうえ、利便のよい税関官署で手続きを行うことが可能」となっています。

 また、輸入貨物について、貨物の変質・損傷があった場合はその度合いに応じて関税・消費税の減額を行うとしています。手続き済みの貨物が亡失した場合は、その関税納付義務を免除するとしています。決算期ということもあり、部材の入荷、製品出荷等の手続き再開では大変な手間を要する作業が発生していることと思いますが、いずれの場合も、申請手続きを軽減する措置が取られているため、業務を再開している税関に問い合わせることをお勧めします。


海外取引のトラブル相談窓口

 物流網に大きな影響が出た今回の震災では、取引先企業への納品遅延などによるトラブルが懸念されます。

 日本貿易振興機構(JETRO)は3月17日、緊急災害対策のための貿易投資相談窓口を設置しています。今回の震災の影響によるサプライチェーンの混乱に起因した海外とのビジネス上のトラブルが発生した場合の相談窓口となります。

 現在、JETROでは仙台・福島の事業所を閉鎖していますが、下記参考リンクにある問い合わせ先に電話もしくは電子メールで相談を受け付けています。


電力各社における電気料金減免・猶予措置

 東北電力では、「災害救助法が適用された市町村およびその周辺地区において」「申し出があった場合は」電気料金などの特別措置を講ずるとしています。該当地域に事業所があり、猶予が必要な方は申告することをお勧めします。


 同様に東京電力でも措置が講じられています。被災により設備そのものが使用不能になった場合の基本料金免除や支払い猶予期間が設けられています。

 いずれの措置においても、契約者からの申し出がない限りは適用されません。事業の状況次第ではこうした減免措置を申請し、少しでも負担を軽減されることを願います。


◇ ◇ ◇

 以上、各機関・各社の支援状況を中心にまとめました。

 ここでまとめた内容も随時アップデートされることと思います。また、筆者の理解に誤りがあるかもしれません。くれぐれも一次資料もご確認のうえ、ご判断ください。

 このほかにも、多数の企業が義援金の募金活動を実施していること、ボランティアネットワーク支援のために機材やインフラを無償提供していることなどが連日編集部に伝わってきています。

 編集部では1日も早く被災地域が復興し、いつものようにカイゼン活動や生産性向上のための議論を交わす平穏な日々が来ることを願っています。

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