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» 2011年04月06日 11時01分 公開

分からないものを素早く分かるようにするCAE踊る解析最前線(9)(3/3 ページ)

[柳井完司,MONOist]
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考えるサイクルを取戻しモノづくりの本質を理解するために

――CAPでモノづくりはどう変わるでしょうか?

于氏:CAPを活用してモノづくりの本質や原理を理解すると、モノづくりそのものが大きくスピードアップするでしょう。競合他社に比べ、高品質な新製品をはるかに早く出せるわけです。そうなると、もはやそこに競合は存在しなくなりますから、自動的により大きな利益が生まれるようになる。まさに「一人勝ち」ですね。これがどれくらいの差が出るかというと……、例えば、日本の一般的な大企業の利益率はおおむね3〜4%前後なのではないかと思いますが、原理を理解している企業は、確実に20%前後の利益をたたき出しています。この差は非常に大きいですよね。

――モノづくりの企業としては決定的な差になる?

于氏:逆に原理、本質を知らないままでモノづくりを行うということは、つまり「世の中でどんな製品が求められているかも分からないまま、「当たって砕けろ」で作っているのに等しい状態なのですよ。そんなリスクも分からないまま作っているようなものなのです。

――「当たって砕け」れば、問題に気付きそうなものですが?

于氏:これはむしろ構造的な問題なんです。昔はシミュレーションなんてありませんでしたから、モデルを作り実験し試験して設計していました。それには時間もコストも掛かるため、失敗すれば大いに責められ、次は失敗しないように一生懸命「本質」を考えてやり直していた。この「考える」サイクルがとても重要だったんですね。ところが、現在ではシミュレーションがあり強力なコンピュータがありますから、失敗しても「反省したり考えたりする前にリトライ」ということになってしまう。その方が楽だし、早いですからね。で、何度かやって当たったとしましょう。そうしたら「考える」でしょうか? いいえ、いつまでたっても考えるはずがありません。では原理がいつ分かるのか? 分かるはずがない。恐らく考えないまま「当たって砕けろ」の繰り返しが、延々と続くだけでしょう。

――システ厶自動化、コンピュータ高性能化の弊害でしょうか

于氏:でも、自動化を止められるかといったら止められないでしょう? 後戻りはできませんからね。だから今のこの環境を生かしながら、同時に「人間が考える」ことができるようにしていくしかないわけで、だからCAPが必要になるのです。CAPで選択肢を従来の3000分の1まで減らしてやれれば、今の環境のままでも、もう一度ちゃんと「考えるサイクル」が戻ってくるかもしれない。とにかく今の世の中、システ厶は確立されているのに、人間はそのシステ厶を使いこなせていません。逆にシステ厶に使われている。だからこそ人間はコンピュータを「自分の代わりに仕事をさせる」のでなく、自分がモノをもっと知るため、もっと考えるため、もっと進化するために使うべきなんですね。

――CAEの活用に関してもメッセージをいただけますか?

于氏:最先端を行くメーカーにとって、CAEは必須科目の1つと言えます。なぜなら、このフィールドでアプローチする方法は、CAE以外にまともなものは1つもないからです。実際、自動車メーカーには、シミュレーションせずに設計や評価できる部署は1つもありません。そのこともあって、現代のCAEは非常に完成度の高いツールとなっています。操作も決して難しくないし、後は使い方次第なんですね。それを「難しい」と言って使わずにモノづくりするのは、ある意味すごい度胸です。だって先が分からないまま手探りで作っているんですよ? 作り手として、あり得ないタフさだと思ってしまいます〈笑〉。

于 強氏  

Profile

柳井 完司(やない かんじ)

1958年生まれ。コピーライター、ライター。建築・製造系のCAD、CG関連の記事を中心に執筆する(雑誌『建築知識』『My home+』(ともにエクスナレッジ社)など)。



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