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» 2011年04月14日 11時00分 UPDATE

リスク対応で見る企業の“明暗”(2):サプライチェーンのリスク管理、阻害要因とその克服 (3/4)

[毛利光博/日本IBM,@IT MONOist]

3)縦割り組織の弊害

 前述の事例の場合、絶対にグローバルでトラッキングをする仕組みが必要かと聞かれれば、それはケースバイケースだと考えます。

 そもそも安全在庫があり、かつリードタイムの順守率が高ければ、トラッキングの仕組みなど必要ないわけです。しかし、サプライチェーンの改善が進み、在庫が極小化されてくると状況は違ってきます。ちょっとしたミスや事故が、送り先(顧客・生産の後工程)に即、迷惑を掛けしまいます。計画通りにモノが動いていることを監視し(通常は自動で監視)、事故があったら誰よりも先にその情報をつかみ、代替策を考えて送り先へ状況を報告できる能力が必要になってきます。グローバルで高い業績を上げている会社には、こうしたインフラが備わっています。

 これまで、可視性を向上するため数々の取リ組みがなされ(見える化)、多くの情報が入手できるようになりました。しかし、まだ多くの企業では、適切な情報を「見える化」し、それに基づいて行動することができていません。ビジネスパフォーマンスの測定や異常発生時にアラートを発するイベントマネジメントなど、情報が伝達された後に次のアクションへとつなげるという取り組みが不完全なのです。また、サプライチェーンのパートナーと連携して、共同でリスクの軽減策を検討することも重要です。企業をまたいだ「見える化」を実現し、問題が発生した場合に協働で迅速に対応する、この活動がリスク分散につながっていくのです。

 調査では、情報の可視化が課題リストのトップに挙がっている(図1参照)にもかかわらず、可視化の前提となる、情報を収集しその情報に基づいて意思決定を行うために必要なコラボレーションはあまり注目を集めていないことが分かります。

 むしろ、サプライチェーンの責任者は戦略の整合、継続的プロセス改善、コスト削減の方に意識が向かっているように読み取れます。社内情報の統合と可視化の推進は優先順位リストの4位、外部の可視化に至っては7位を占めているに過ぎません。さらに、企業間の可視化プロジェクトの効果については、サプライチェーンの責任者が取り組んでいる全ての施策の中で最も評価が低いことが分かります。つまり、外部の可視化向上に取り組んだ経験のある人の大半は、概してこの取り組みは効果が上がらないと考えているということなのです。

 ここから、可視化や協働を阻害する要因はテクノロジーの問題ではなく、むしろ「縦割り組織」「個々人が忙しい」さらには「協働そのものが重要と見なされていない」といった「人」に起因する声が数多く出ています。そのため、こうした阻害要因を排除する組織上の取り組みが必要であるといえます。

図4 協働や可視化の阻害要因 図4 協働や可視化の阻害要因

 いま、地震の対応でまた同じことが起こっていると筆者は感じています。各社のWebサイトを見てください。社員の安否、工場の被災状況、支援の方針、事業所の再開日程、など多くの情報が次々と掲載されています。友人の会社が心配で、かといって電話するのはばかられ、友人の会社のWebサイトを検索した人が読者の中にも多くいたことでしょう。

 Webサイトに掲載されている内容や掲載日を観察していると、情報スピードの速さ、こうした状況への対応の温度差が見えてきます。当然、被災状況の大きさや会社の方針によってこうした情報は変わってくるとは思いますが、その会社の持つ危機対応力の一部が垣間見れるものだと思います。


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