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» 2011年04月17日 00時00分 公開

拡がる電子機器設計の熱対策:第6回 カーナビ設計で設計者による熱流体解析の定着に成功(後編)

カーナビやカーオーディオなど、車載機器を専門に開発するアルパイン。同社ではカーナビの筐体の放熱設計において、設計者自身が熱流体解析ツールを活用している。導入後10年を迎え、いまや自動車メーカーの問い合わせの段階から熱解析を行うなど身近なツールとして定着した。前編では設計者の教育システムや解析しやすい環境の整備といった取り組みを聞いた。後編では引き続き解析環境の整備やその効果、今後の計画などについて紹介する。

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解析結果を見やすく表示

 解析結果の閲覧についても分かりやすく表示させるようにしている。結果はそのままでは数字の羅列のため、解析専任ではない設計者が情報を引き出そうとするのはなかなか難しい。アルパインではExcelマクロを利用して、解析結果の収束性やファンモーターの動作点、各部品の温度、熱流量などといった数値やグラフをボタン一つで表示できるようにした。

 電気回路設計とのデータのやり取りについては、情報共有ミスが多く発生しがちなため、慎重に行なわなければならない。アルパインでは、電気設計側から機構設計側へ電気CADの中間データであるIDFファイルとCSV形式の熱解析条件を受け渡すことになっている。その時にこれらのデータをExcelで読み込み、自動で内容がチェックされた上で機構設計側に受け渡される仕組みになっている。熱設計PACがCSV形式でデータを読み込めるため、やり取りがしやすいという。

解析ツール開発者との意見交換の機会を設けたバージョンアップ新機能説明会を実施

 熱設計PACがバージョンアップした際は、まず岩崎氏が精度を検証し、新機能についても同部での解析に適用できるか確認。これらを基に同部での解析ツール使用のルールを更新し、システムの修正を行い、テキストを作る。この際にもソフトウェアクレイドルと協力しながら進める。現在のバージョンで目玉となったのは「マルチブロック機能 」。メッシュを必要な部分だけ密にできて、メッシュ数を低減できるだけでなく計算収束性も改善され、アルパインではこれを運用に落とし込むことで解析時間を従来の約40%に短縮することができた。熱設計PACは約2年に一度バージョンアップがされ、その度に新機能が豊富に追加されている。

 バージョンアップの際にも熱設計PACを使用した講習が行われ、設計チームの代表者が集まって実施。講習後にはソフトウェアクレイドル側との意見交換会の場も設けている。「設計者にとってもソフトの開発者と接する貴重な機会となり、解析ツールへの理解を深め、より効果的に活用するのにプラスとなっています。解析ツールの開発元が国内にあるというメリットはこういう点でも大きいです」(岩崎氏)という。

解析精度向上の取り組みとライブラリデータの充実化

photo 図2 VIE-X08Sの背面。ファンモーターに保護ガードがついている

 解析ツールを展開する立場の人間にとって、解析精度の改善は宿命的なテーマの一つである。アルパインでは、物性データなど解析に必要なインプット情報を独自に調査、整備して設計者に展開している。特にファンモーターの特性は精度に大きく影響するファクターで、アルパインではツクバリカセイキ製の微少風量測定システムを導入して特性をライブラリ化している。測定器導入によって、使用状況によって異なるファンモーターの特性を的確に把握している(図2)。アルパインでは正確なインプット情報をすぐに引き出せる環境を作り上げることで、ユーザーである設計者の信頼を獲得し幅広く展開ができているということだ。

熱問題発生件数の低減に貢献/コストダウンに効果を発揮

 こうした取り組みの結果、熱流体解析は同部にしっかりと定着している。すべての製品に適用していることはもちろん、取引相手との引き合いの段階から使用しているという。顧客は熱とファンの騒音を真っ先に気にするからとのことだ。熱についてはカーナビの周辺に引きまわすワイヤーハーネスの耐熱温度の制限などがある。そのため顧客の提示する温度の範囲内に収められるかどうかをまず熱解析ツールで検討するのだという。また引き合い段階から使用しているため、量産手前になって手戻りが発生したりといった大きな問題が無いのはもちろんのこと、要求性能を満足させるために設計初期段階で大胆な構造変更を行うこともあるという。

 同部での解析回数は1年あたり約2000件とかなりの数に上っている。とくにいくつかのパラメータを自動で変化させて解析を繰り返し、最適な形状を求める「パラメータ設計(最適設計)」を始めてから、回数が増えたとのことだ。サイバネットシステムの最適化ソリューションツール「Optimus」を使用してCAD形状変更から解析結果処理まで一連の動作を自動化しているため、解析回数は増えていても解析作業工数は最小限に抑えられている。なお自動化処理には熱設計PACのマクロ機能が大いに役立っているという。

photo 図3 VIE-X08Sの熱流体解析例

 パラメータ設計では性能最適化に加え、材料費の削減といった効果も得られている。車載機器では近年とくに軽量化が求められている。ヒートシンクはアルミの塊のため、削減の対象になりやすく、またパラメータ設計との相性もよいことから頻繁に活用しているという。パラメータ設計によって、初期形状に対し平均10〜20%の軽量化と材料費の削減効果を創出している。またファンモーターについても、筐体の通風抵抗を調整しファンモーターの動作点を最適化した結果、従来品の2つついていたものを1つに減らした例がある。これはコスト面で大きな効果があったという。

手間は減らし、設計検討にあてる時間を増やしていきたい

 今後の目標としては、解析準備の工数を大幅に短縮したいという。解析後の作業についてはすでにある程度、設計者に分かりやすい形を整えているため、その延長のような形で解析前の準備についても簡単にしたいということだ。また従来は解析専用コンピュータで熱設計PACを使用していたが、設計者専用コンピュータもパフォーマンスが上がっていることから、ライセンス形態をノードロックからフローティングへ変更することも検討している。

 これらは設計者により手軽に解析を行ってもらうようにするためだ。近年とくに設計者が忙しくなっており、熱設計PACを使ってじっくり放熱構造を検討したり、実測値と解析結果をつき合わせて分析する時間が取りにくくなっている。そのため岩崎氏が部内で担当している受託解析依頼も増えているとのことだ。設計者の環境が時代の流れで変化することはある程度仕方がないため、ツールの使用環境をさらに進化させることによって作業時間を減らし、より設計者自身が熱設計について考える時間を取れるようにしたいという。これは今までの取り組みについても一貫した目標だが、単に解析作業を単純/自動化して楽に解析できるシステムを目指すのではなく、複雑なアッセンブリ解析に対して効率よくポイントを押さえられる解析手法を構築することで、設計アイデアを創出しやすい環境を目指すということだ。

 また新しい解析機能も使い始めている。熱設計PACの上位機能を持つSTREAMで粒子(塵埃)解析や結露解析などを実行している。STREAMを設計者展開するかは未定だが、熱設計PACでも実施可能な設計配慮方法は教育に盛り込んでいこうと考えているということだ。

 アルパインの例では教育プログラムをしっかり作り込み、忙しい設計者でも正確且つ効率的にツールを使えるような環境を構築することで、現場へ完全に熱流体解析ツールを定着させることができた。これから導入を検討している企業や、導入後の定着に頭を悩ませている企業には参考になるだろう。

Hot Topics一覧

第01回 熱設計でよく使われる解析の機能とメリット

第02回 設計に熱解析ツールを導入するときの留意点

第03回 客観的に解析結果を評価できる環境の構築がカギ(前編)

第04回 客観的に解析結果を評価できる環境の構築がカギ(後編)

第05回 カーナビ設計で設計者による熱流体解析の定着に成功(前編)

第06回 カーナビ設計で設計者による熱流体解析の定着に成功(後編)

第07回 ファンを含めた解析を実施、結果は多方面に活用(前編)

第08回 ファンを含めた解析を実施、結果は多方面に活用(後編)

第09回 VBインターフェースの活用でエンジン部品の設計解析を自動化[いすゞ自動車]

第10回 「作らずに創る」を実現する大規模流体解析

第11回 ポンプの理論・性能と設計の基礎

第12回 熱解析結果を効果的に設計につなげるSTREAMのHeatPathView

第13回 あの「下町ボブスレー」でもCFDが最適化設計で活躍

第14回 解析結果を過信しないで自分で判断! 送風機設計における流体解析

第15回 トンボの飛翔を風車に! マイクロ流体の面白さを産業に役立てる

第16回 “海のダイヤ”クロマグロの生態を流体解析で明らかにする

第17回 ファンの流体解析を手軽に! ファン設計ツールSmartBlades

第18回 日額単位で使える流体解析がモノづくりを変える!?

第19回 熱計測精度の向上から脳血管疾患の手術前シミュレーションまで、有用性が高まる解析技術

第20回 暴風をそよ風に変える――減風・発電風車とCFDの関わり



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提供:株式会社ソフトウェアクレイドル
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2013年3月31日

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