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» 2011年06月16日 13時42分 UPDATE

グローバルPLM〜世界同時開発を可能にする製品開発マネジメント(6):どうすれば世界で勝てる設計・開発が実現しますか? (2/3)

[三河 進/NECコンサルティング事業部,@IT MONOist]

クラウドがもたらすPLMに対するインパクト

 ITコストを爆発的に引き下げるためのパラダイムとして、クラウド・コンピューティングに大きな期待が集まっています。本セクションでは、PLMコストの最小化戦略を立案する上で、PLMへのクラウド・コンピューティングがもたらすビジネスインパクトについて考察してみたいと思います。

 PLMシステムは、機密性が高く、企業にとって重要な資産である技術情報を取り扱います。よってPLMシステムを、文書作成アプリケーションのようにクラウド化することは容易な話ではありません。最近は、クラウド・コンピューティングに対応したPLMパッケージやサービスが登場しています。今後のこれらの活用による効果や、導入に当たって見直しや考慮が必要な点に関する考え方についてご紹介します。

クラウドの種類とメリット・デメリット

 PLMシステムは、機密性の高い技術情報を取り扱いますので、まずはプライベートクラウドとしての利用が考えられます。

 プライベートクラウドというのは、日本語で言うと「社内クラウド」と言われ、特定の企業グループで利用されることを前提に構築されたクラウドサービスのことです。特定企業に最適化された利用方法や機密・安全性を考慮して利用できるメリットがありますが、半面、「規模の経済」が働かないデメリットがあります。

 これに対し、パブリッククラウドは「公衆クラウド」とも呼ばれ、インターネットを介して、不特定多数の人に同じサービスを提供するものです。費用的には無料のことも多く、有料であっても比較的安価なサービスであることが多いようです。

 われわれがよく利用しているYahoo!やGoogleのメールサービスや、マイクロソフトのMicrosoft Office Live WorkspaceのようなWordやExcelアプリケーションをクラウド上で利用できるサービスなどが代表的なものです。

……で、PLMクラウドであなたの会社の業績はどうなるの?

 ここではクラウド技術を利用したPLMシステムを「PLMクラウド」と呼びます。PLMクラウドがビジネスにもたらす効果・影響についてまとめていきます。

自社システム構築からPLMクラウドの共同利用へ

 従来の典型的なPLMシステム構築プロセスでは、導入する事業の業務プロセスや情報管理方式に合うように、パッケージに対してカスタマイズを行います。そして、構築したシステムを資産として保有し、導入された事業の中で運用します。

 PLMクラウドの場合には、企業グループ、または企業間で共同利用することが前提になります。前述の従来型とは異なり、クラウドでは企業グループレベルで仮想的に構築したシステム(あるいは、パブリッククラウドとして提供されるアプリケーション)を利用するといった概念に変わります。

運用保守のセンター一元管理が容易に

 個別最適化されたPLMシステムの場合には、事業部別や拠点別の個別の生産性向上のために施された多数のカスタマイズが存在します。仮に拠点で何かの問題が発生した場合、センター側で実施したカスタマイズに原因があるのか、拠点別のカスタマイズに原因があるのかを特定する必要があります。問題が容易に特定できない場合は、センター側の情報システム部員が拠点に訪問し、拠点の運用要員と協力して原因を特定、問題解決を図ることになります。

 PLMクラウドの最終的な運用(あるべき姿)では、カスタマイズのソースコードなどをセンター側で一元的に管理し、各拠点における運用状況や利用方法をセンター側から統制をかけます。そうすると、仮にある拠点で問題が発生した場合でも、短時間にセンター側から原因の特定と、解決策の提供を行うことができるようになるのです。

投資回収から利用に応じた課金方式へ

 システム資産を保有する概念から、システムを利用するという概念に変わりますので、投資回収の考え方も変化します。

 従来はPLM(PLMに限りませんが)のシステム企画をする際に、企画部門では必ず「投資対効果」を算出しているはずです。投資はシステム開発や運用に掛かる費用、効果は業務効率化などにより定量的に得られる金額換算したもの(定性的なものも効果として考慮します)です。これらの情報を使って、システム投資が何年で回収できるのかを推定し、システム投資の判断を行います。このことから、従来型のPLMシステム導入は、少なくとも数年から10年単位で評価する投資回収プロジェクトに位置付けられます。

 これに対して、PLMクラウドにおいては利用に対応して発生する費用(課金)を、クラウドサービスの提供者に対して支払います。事業部視点(=ユーザー視点)では、投資回収という概念ではなく利用に対して発生する費用に対する効能(業務効率化効果)を短期的に評価していくことになります。(プライベートクラウドの場合には、企業として投資しますので、企業全体としての投資回収計画は必要となります)。

専用サーバから仮想サーバへ

 クラウド・コンピューティングでは、一般的に物理サーバではなく仮想化されたサーバ(ネットワーク的に接続され、ユーザーは物理的にどのサーバを利用しているのか意識をしない)を利用する、という概念になります。

 従来の専用PLMシステムの場合には、専用のサーバが用意されています。例えば、部品表データは日本の情報システム部門が保有するデータベースサーバに物理的に保管される、といった概念です。

 PLMクラウドの場合では、ストレージやアプリケーションサーバは仮想化されますので、ユーザーにはどのストレージにデータが保管されているか、という意識はなくなります(もっとも最近はレプリケーションやグローバルでのWeb経由のPLM利用が一般化してきていますので、ユーザーにとっての変化は少ないかもしれません)。



世界同時開発を推進するには?:「グローバル設計・開発コーナー」

 世界市場を見据えたモノづくりを推進するには、エンジニアリングチェーン改革が必須。世界同時開発を実現するモノづくり方法論の解説記事を「グローバル設計・開発」コーナーに集約しています。併せてご参照ください。



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