EVの低価格化には電池の補強が必要、三菱自動車が採った手法とは電気自動車

EVに占める電池のコストは約半分にも及ぶ。EVを低価格化しようとすると、搭載する電池の容量を減らさざるを得なくなり、走行距離が短くなってしまう。三菱自動車は採用する電池を変えることで問題を解決した形だ。

» 2011年06月16日 15時51分 公開
[畑陽一郎,@IT MONOist]

 三菱自動車は、2011年6月16日、EV(電気自動車)「i-MiEV」の低価格グレードを2011年夏に発売すると発表した*1)。従来グレードの販売は継続し、1車種2グレードとする。

*1)2011年冬には、軽商用電気自動車「MINICAB-MiEV」を発売する。MINICAB-MiEVにも16.0kWh仕様のグレードと、10.5kW仕様グレードを設ける。

 新グレードの狙いは、経済産業省の補助金制度を適用した後のユーザーの負担額が200万円以下になるように価格を設定することだ。同社は2010年4月にi-MiEVの個人向け販売を開始しており、価格は398万円である。経済産業省の補助金制度を適用した後の価格は約284万円だ。

 EVの価格に占めるリチウムイオン二次電池の割合は、一般に、半分であるといわれている。販売価格を284万円から200万円に引き下げるには、二次電池のコストを約半分に引き下げる必要がある。

 三菱自動車が採った手法は2つある。1つは、搭載する二次電池の容量を従来の16.0kWh*2)から、10.5kWhに引き下げたことだ。もう1つは「10.5kWh仕様のグレードには、価格性能比に優れた東芝のリチウムイオン二次電池『SCiB』を採用したこと」(三菱自動車)である(図1)。

*2)16.0kWh仕様のグレードには、GSユアサと三菱商事、三菱自動車が設立したリチウムエナジー ジャパンが製造した二次電池を使用している。MINICAB-MiEVの16.0kWh仕様グレードも同社の二次電池を搭載する予定。

ATL 図1 東芝のリチウムイオン二次電池「SCiB」 左が電池セル、右が電池モジュール。従来、東芝が販売していたセルは、容量4.2Ah、端子間電圧2.4Vで重量155gだった。新セルの容量は20Ah。東芝によれば新セルでは単位容量当たりの走行距離が、一般的なリチウムイオン二次電池の1.7倍であり、充電・走行の繰り返し回数が同2.5倍であるという。なお、SCiBが量産車に採用されるのは今回が初めてである。

走行距離の減少をどう補うか

 2つの手法は相互に補い合う形になっている。なぜか。搭載する電池容量を減らすと、走行距離は従来グレードの160kmよりも少なくなる。i-MiEVの新グレードが従来グレードと同重量であり、車体側のエネルギー利用効率が変わらないと仮定すると、走行距離は約100kmになる計算だ。これではユーザーの利便性が下がる。

 しかし、電池の充電時間が従来グレードよりも短くなれば、軽自動車の日常的な使用条件ではあまり問題にならなくなるだろう。

 東芝によれば、SCiBをCHAdeMO方式の急速充電器(三相交流200V、50kW)で充電した場合、5分間で電池容量の1/4程度、10分間で半分、15分間で80%充電可能だという。これは一般的なリチウムイオン二次電池の約半分の時間である。i-MiEVの従来グレードでは同条件の場合、約30分で80%充電できるとしている。


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