横弾性係数を知らないのにCAE?甚さんの「技術者は材料選択から勝負に出ろ!」(2)(2/3 ページ)

» 2011年06月30日 11時39分 公開

 まず、縦弾性係数とは何かを説明します。読み方は、「たて・だんせいけいすう」です。縦弾性係数とは、高校1年の物理で習った「ヤング率」そのものです。ヤング率といえば、ばねが登場し、「フックの法則」が出てきました。覚えていますか?

 それでは、下記に「フックの法則」を書きます。

  フックの法則:E(縦弾性係数)=σ(応力)/ε(ひずみ)

 例えば、鋼材や鋼板の場合、図3の特性を有しています。これを、「軟鋼の応力−ひずみ線図」といいます。各種の資格試験や入社試験における出題の定番ですから、今すぐに丸暗記しましょう。

 縦弾性係数(E)は、グラフにおける傾き(=σ/ε)であることに気がついてください。線分の「傾き」とは中学1年生の数学で習いました。Y=aXの「a」の部分を「(グラフの、直線の)傾き」と習いました。

図3 図3 軟鋼の応力−ひずみ線図(「ついてきなぁ!材料選択の『目利き力』で設計力アップ」日刊工業新聞社刊より)

 図3の原点(0点)からσp(比例限度)の間で成立するのが、フックの法則であり、そこには縦弾性係数が存在します。

良

あっ、これは富士山麓大学の大学院入学試験と、就職試験にも出ました。試験によく出るということは、昔から非常に重要な「目利き力」だったのですね。


甚

良君! その通りだ。さすがに実務はダメでも、受験には強い。なんか、最近はやけに冴えているじゃねぇかい、あん?


 図3は、何とも変わったカーブを描いていましたね。

 一方、鋼材や鋼板以外の場合は、図4の特性を有しています。今度は、何とも特徴のないカーブです。「以外」の単語がキーワードです。

図4 図4 軟鋼以外の「応力−ひずみ線図」(「ついてきなぁ!材料選択の『目利き力』で設計力アップ」日刊工業新聞社刊より)

★目利き力ポイント!:軟鋼以外の材料は、図4に示す特徴のない「応力−ひずみ線図」を描く。

 ここで、重要なメッセージがあります。

 筆者は、設計コンサルタントとして生計を立てていますが、そのクライアント様から、設計審査員としてよく呼ばれます。

 ここで気づいたのですが、応力計算や安全率の計算式のなかで、多くの箇所で使われているのが縦弾性係数(E)であり、ほとんど横弾性係数(G)に巡り合うことがありません。なぜでしょうか?

 実は、横弾性係数(G)という用語の存在を知らないのです。これが日本の設計力であり、「設計書がない日本企業の弱点」が露呈してしまいました。


甚怒

じょ、ジョ……冗談だろう? あん? 料理人における「調味料の全てが醤油(しょうゆ)」……みてぇなもんよ。大工の全ての工具が、「チェーンソー」ってかぁ? ドヒェツ〜〜!


 縦弾性係数(E)と横弾性係数(G)の「使用目的の明確化」を確立しましょう。


 一流の職人になるために、くどい解説はあえて避けました、図5の画像で理解してください。そして、図5の「画像」で記憶してください。「画像」の単語がキーワードです。

★目利き力ポイント!:縦弾性係数(E)と横弾性係数(G)の区別は、図5の画像で理解/記憶すること。

図5 図5 各種の応力と縦弾性係数/横弾性係数との関係(「ついてきなぁ!材料選択の『目利き力』で設計力アップ」日刊工業新聞社刊より)
甚

このまま「目利き力」の解説を進めていくと、学校における「材料力学」や「材料工学」になっちまうからよ、また次回に説明するぜぃ。


良

助かりました。ちょっと、退屈してきましたから。


甚

退屈なのは、オメェの顔だぁ。こっちだって、美人のエリカちゃんを教えていたほうが楽しいんだぜぃ!


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