車載ICの日本展開を強化、品質向上にも取り組むBernd Gessner氏 austriamicrosystems社 上級副社長

オーストリアのアナログICメーカーであるaustriamicrosystems社は、車載ICを成長分野に位置付けている。2010年後半には、日本市場における事業展開を強化する方針を打ち出した。同社上級副社長で車載事業部のジェネラル・マネジャーを務めるBernd Gessner氏に、車載ICの事業戦略について聞いた。(聞き手/本文構成:朴 尚洙)

» 2011年07月01日 00時03分 公開
[Automotive Electronics]

車載で3500万個/年の実績

 当社は、電源ICやセンサー用インターフェースICなどのアナログICを事業の中核としている。売上高は、2010年度で2億7700万米ドル。その用途別の内訳は、産業用機器と医療機器向けが54%、民生用機器と通信機器向けが33%、車載機器向けが13%となっている。

 車載IC市場への参入は、ドイツRobert Bosch社のABS(アンチロックブレーキシステム)向けにASICの出荷を始めた1986年からになる。その後、スウェーデンAutoliv社のエアバッグ向けにICを供給するなどして車載事業を拡大してきた。現在は、年間で3500万個の車載ICを出荷するまでになった。

 このような実績があるものの、現時点において、車載ICの売上高はまだ十分に大きいとは言えない。しかし、近年の売上高は年率で約20%伸びているので、成長分野としてとらえている。また、さらなる成長を果たすためには、有力な自動車メーカーや車載機器サプライヤが数多く存在する日本市場での事業展開をより積極的に進める必要がある。世界全体の車載IC市場のうち、約1/4が日本市場向けであり、その年平均成長率は8%に達するという調査もある。現在、当社全体の売上高のうち、日本市場が占める割り合いは5%にすぎないが、今後は車載ICを中心に伸ばしていきたい。

 日本における車載ICの事業展開を強化するため、2010年9月に富士通エレクトロニクスと販売代理店契約を結んだ。この契約からの約半年間で、140を超える顧客の部署を訪問して当社の製品を紹介した。そして、それらの顧客が抱える80以上の開発プロジェクトに、当社の製品が適合することがわかった。

ホールセンサーICで新機軸

 当社が出荷している車載ICのうち、75%が個別の顧客向けにカスタマイズしたASICで、残りの25%がASSPとなっている。日本市場における車載 ICの事業拡大を進めるためには、まずASSPの採用実績を積み上げていきたい。当社の車載ICの中で代表的なASSPとしては、電動パワーステアリングの角度センサーなどに用いるホールセンサーIC、2次電池管理IC、CAN(Controller Area Network)などの車載LANに対応するトランシーバICなどがある。

 ホールセンサーICでは、ICパッケージの平面に対して水平な2つの軸方向(X軸とY軸)と垂直な軸方向(Z軸)、計3軸の磁束変化を同時に計測できる「AS540x」という新製品を開発した。他社製品にない特徴を持っているので、積極的に拡販していきたいと考えている。また、2次電池管理ICについては、アクティブセルバランス技術を用い、2次電池パックを構成する各2次電池セルのSOC(充電率)を最適な状態に制御することが可能な製品の開発を進めている。

初期故障率は0.08ppm

 車載ICの生産については、前工程の処理をオーストリアの自社工場で行い、後工程は米Amkor Technology社などに委託している。オーストリアの前工程工場は、ウェーハサイズが200mmの0.35μmプロセスに対応しており、年間の生産能力はウェーハ枚数換算で10万枚以上を確保している。また、製造パートナーである米IBM社の工場では、同社と共同開発した0.18μmの高耐圧プロセスを利用したICの生産も可能だ。なお、試験については、前工程のプローブ試験はオーストリアの自社工場で、後工程の最終試験はオーストリアとフィリピンの自社工場で行っている。

 ここ数年は、車載ICの品質を向上させるための取り組みにも注力している。2005年に3.6ppm(1ppmは0.0001%)だった初期故障率を、 2009年には0.08ppmまで低減することができた。このことは、厳しい品質が要求される日本市場において重要な意味を持つと考えている。

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