設計・製造の一貫対応でFPGAソリューションを推進する組み込み企業最前線 − システック −(1/2 ページ)

静岡県・浜松市に拠点を置くシステックは、中核事業の受託設計・製造においてPLD(FPGA)ソリューションに力を入れる。“柔らかい”デバイスであるFPGAの利点を生かす、設計から製造までの一貫対応に強みを持つ企業だ。

» 2011年07月11日 11時30分 公開
[石田 己津人,@IT MONOist]

キャリアパスに即した事業モデル

 創業者で社長の梶村武志氏が脱サラで1974年に興したシステックは、6畳の“作業場”で基板実装を手掛けるところからスタート。40年近い歴史の中で地元浜松に集積する有力メーカーとの取引を中心に事業を拡げ、今では240名の社員を抱える。

 現在のシステックには3つの事業がある。ハードウェア/ソフトウェア/機構/LSIの設計者を顧客企業へ派遣する「エンジニアリングサービス事業」、受託で設計・製造を行う「ソリューション事業」。この2つの事業に社員の約8割が従事する。


 残る1つの事業は、自社製品を手掛ける「オリジナル事業」だ。ここには2つのビジネスユニットがあり、その1つが生産活動を支援する製品、サービス(商社機能)を提供するユニットだ。例えば、トヨタ自動車と共同開発したサーモキャップ(発熱を色の変化で知らせる端子キャップ)などの自社製品がある。もう1つのユニットでは、公共施設で多用されるミニ風力発電機を中心としたエコ製品を展開している。

photo ミニ風力発電機などエコ製品も展開(写真は羽ばたき式ミニ風力発電機「ウイングストローク」)

 同社 ソリューション事業部 営業部長の内山智介氏は「当社の事業モデルは、技術者のキャリアアップに即している。若い時にさまざまな顧客の現場で経験を積んだ後に、社内で受託設計・製造を手掛ける。次にニッチでも強い製品を自ら企画・開発し、ビジネスを展開していく。社員がステップアップしながら長期に働ける環境を用意し、企業としての魅力を高める狙い」と話す。

photo システック ソリューション事業部 営業部長の内山智介氏

設計から製造までの一貫対応が売り

 これら3事業で“柱”となるのは、受託設計・製造のソリューション事業である。通信、放送、アミューズメント、車載、設備など幅広い製品分野で基板設計からソフトウェア開発、基板の試作・量産、保守、リメイクを手掛ける。

 内山氏は「設計から製造まで一貫して請け負えるのが当社の強み。少点数、多点数に対応した2本の表面実装ラインを持ち、納期・数量で顧客の要望へ柔軟に応えられる。経営的にラインを維持することが厳しい時期もあったが、何とか踏ん張った。今ではライン新設の計画もある」と話す。

 最近では、“選択と集中”による事業の効率化が求められるが、システックはあえて集中させていない。社員が生き生きと働き、顧客に喜ばれるために、事業はどうあるべきかを考えているようだ。それは、オバマ米大統領の演説で有名になる前から、“YES WE CAN”という言葉を社是としていることからもうかがい知れる。

15年前から“ASICからFPGAへ”移行

 システックがソリューション事業でコア技術としているのがPLD、とりわけFPGAである。FPGA論理回路、CPU周辺回路、基板の設計からソフトウェア開発、基板の試作・量産、検査までを一貫して提供する。さらに、ザイリンクスの国内最大パートナーである東京エレクトロン デバイス(以下、TED)と強い協力関係を築いているのも見逃せない。

photo システック ソリューション事業部 PLDソリューション部 課責任者の鈴木孝佳氏

 システックは、国内で“ASIC全盛”だった15年も前からFPGAに注力してきた。同社 ソリューション事業部 PLDソリューション部 課責任者の鈴木孝佳氏はこう振り返る。「当時からASICは開発が大規模化していて、技術者の数が限られた当社では対応するのが難しくなっていた。それに加えて、ASICの開発期間が長引くにつれ、顧客からハードとソフトの開発を同時に進めたいという要望が出始め、ASICの技術資産を継承しつつFPGAへシフトしていった」。

 “柔らかな”デバイスであるFPGAは、“ホワイトボード(アイデア段階)から製造まで”の一貫対応と小回りの利くシステックにマッチしていたようだ。「何度でもロジックを書き換えられるFPGAを使う場合、顧客はギリギリまで仕様を詰める。仕様が固まっていない段階から顧客の技術者と一緒に考え、要求に応じて臨機応変に設計・製造の体勢を整えられる。一貫対応ならば、製造検査で不具合が出ても即座に設計から見直すこともできる」(鈴木氏)。


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