ラベル印刷もこれからはLED光源へ、京セラが業界最速うたうUV硬化システムを発売実装技術

京セラのUV硬化システム「KVL-G3シリーズ」は、業界最速の処理性能と消費電力の削減を両立させたことが特徴だ。

» 2011年07月15日 18時55分 公開
[前川慎光,EE Times Japan]

 京セラは、光源に紫外線LEDを使ったUV硬化システム「KVL-G3シリーズ」を発売した。日用品や飲料といった商品パッケージの印字に使われているラベル印刷を対象にしたUV硬化システムで、業界最速の処理性能と消費電力の削減を両立させたことが特徴だ。

 具体的には、1分当たり最高80mのラベルを印刷できるUV硬化特性を実現した。「今までは1分当たり20〜30mのラベルを処理できれば、速いと言われていた。これに比べると、大幅な特性向上だ」(同社)という。

ALTALT 写真左は、今回発売したUV硬化システムの下面。紫外線を照射している様子。写真右の手前にあるのは同社の業務用インクジェットヘッド「KJ4シリーズ」。後方にあるのが、UV硬化システム。

 優れたUV硬化特性を実現できた理由は、放熱性の高いセラミック基板にLED素子を面状に高密度実装したことにある。通常は、高密度に実装するとLED素子が生み出す熱によって、LED素子の寿命特性や照度特性が劣化してしまう。そこで同社は、高密度実装と高い放熱性を両立させる実装技術を新たに開発した。「空冷ヒートシンク構造も一緒に基板に作り込むなど、構造と材料の双方に独自の工夫がある」(同社)という。

 一方の消費電力については、LED光源を採用したことで、一般的に使われているメタルハライドのランプ光源に比べて70%削減した。紫外線を均等に対象物に照射する独自のマイクロレンズアレーも低消費電力化に貢献したという。

図 写真左は、今回のUV硬化システムの開発を担当した山中省作氏。京セラの薄膜部品事業本部の薄膜部品開発部のEPデバイス開発2課責任者。写真右は、マーケティングを担当している松寺拓氏。同社薄膜部品事業本部の事業本部室 事業戦略部の事業戦略課責任者を務めている。

高速インクジェットの性能を引き出す

 現在、紫外線を照射してインクを硬化・定着させる「UV硬化型印刷」が、ラベル印刷の分野で広く使われている。耐水性のある用紙やプラスチックフィルムにも迅速に印字できるからだ。

 同社はこの分野に向けて、インクを用紙やフィルムに照射する業務用インクジェットヘッド「KJ4シリーズ」を2009年8月に発売していた。この業務用インクジェットヘッドの特徴は業界最速をうたう印字性能だったものの、インクを硬化させるシステムが印字のスピードに追い付いていなかった。すなわち、UV硬化システムが、印刷システムを高速化する上のボトルネックになっていた。そこで、当社のKJ4シリーズの性能を最大限引き出せるUV硬化システムの開発に取り組んだ。KJ4シリーズの印字性能が1分当たり50mであるのに対して、今回発売したUV硬化システムのインク硬化特性は前述の通り、1分当たり最高80mである。

 同社は2つのパターンで、ラベル印刷市場への売り込みを考えている。まず1つは、同社の業務用インクジェットヘッドとUV硬化システムを組み合わせて提案するパターンである。「パネル印刷の分野では、多品種を少量だけ印刷するニーズが高まっている。このようなニーズに対して、当社の機種は最適だと考えている」(同社)。

 もう1つは、UV硬化システムだけを既存のラベル印刷システムに導入するパターンである。既存のラベル印刷には、オフセット印刷や樹脂凸版印刷、フレキソ印刷といった手法が広く使われている。こららの既存のシステムでは、インクを硬化させる光源としてランプ光源が広く使われており、これの置き換えを狙う。

 今回採用したLED光源の波長は385nm、寿命は1万5000時間である。一般的なランプ光源の寿命は1000〜1500時間程度だった。「光源の電源を細かくオン/オフできるのもLED光源の特徴だ。必要なときだけ点灯させるという使い方ができる」(同社)。照射領域の面積が異なる3機種を用意した。面積が110×48mmの「KVL-S05E-G3」、220×48mmの「KVL-S09E-G3」、220×24mmの「KVL-S09E-G3S」である。

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