「ねじなめんなよ」――社長一人だけで始めた製品開発マイクロモノづくり 町工場の最終製品開発(12)(2/3 ページ)

» 2011年08月17日 13時00分 公開
[宇都宮茂/enmono,@IT MONOist]
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ねじ屋とITが出会ったら?

 浅井製作所は、浅井氏お一人の会社です。そのため、工場に常に張り付いている必要があり、外回りの営業活動ができません。従業員を雇うほどの余裕もありません。そういう状況ということもあり、インターネットやソフトウェアなどのITツールは、必要不可欠だったといいます。そのため、PCなど触ったこともなかった町工場の親父が、一念発起してチャレンジし、いまではさまざまなITツールを使いこなすようになり、会社の運営を全て1人で行っておられます。

photo 浅井氏のPCとFacebookページ

 Webページに情報を掲載・発信することで、自社のことを知ってもらい、コンタクトを受け、工場見学に来ていただき、そして発注してもらいます。納品、伝票発行などの業務も、廉価なソフトをダウンロードし、それを自らカスタマイズして業務を実施します。

 これら一連の流れを、やる気になれば誰でも全て1人でこなすことができるのです。ですが、「Webページがあれば売り上げがアップする、Facebookをやればもうかる、なんていうのはありえない」と浅井氏は言います。「かといって、儲からないからやらない、というのでは未来がないのでは」とも。

 今や無料で使えるITツールがたくさんあるので、自力で使いこなせば、経費はかかりません。また、ネットに対するリスクもしっかり学習すれば、減らせます。実際、浅井氏はネット上でのお作法など、ネットで知り合った仲間たちとの勉強会で、失敗事例などを学び合うことで身に付けました。その程度勉強もしないのでは、いまの時代、とてももったいないことではないでしょうか。

 また、浅井氏は、「自分のノウハウはいつでも教える」と言っています。むしろ、「しっかり学んでもらい、自分と一緒に業界を盛り上げてほしい」というのが望みなんだそうです。なので、読者の中で興味のある方は、ぜひFacebookなどで、話しかけてみてはいかがでしょうか。

ねじの可能性

 浅井氏の企画する製品の中に、ねじを使った指輪があります。浅井氏自身は、「このようなものにニーズがあるなんて思わなかった」そうですが、ある方からそのアイデアをもらい、ひとまず製作してみたところ、予想外に「欲しい」というお客さまが多かったとのことです。

photo 浅井製作所のねじ指輪

 そして、デザインフェスタ(記事最後に関連リンク)で、ねじ指輪を出展してみたところ、その売り上げは想定以上にあったといいます。「展示会に出ることのメリットは、お客さんとコミュニケーションを取ることができ、新たな製品企画のヒントを得られること」(浅井氏)。

photo 浅井製作所の展示:「ねじなめんなよ」は、浅井氏の意気込みと、「ねじを“なめる”」を掛けたキャッチ

 バーチャルで知り合うお客さんとリアルに接する、あるいはリアルに接したお客さんとバーチャルで接することで、ソーシャルメディアでのコミュニケーションが活性化していくという効果があるのです。

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