出世するべき? いいえ、しません!?TwitterからあふれたCAEの本音語り(4)(3/4 ページ)

» 2011年09月02日 13時28分 公開
[小林由美@IT MONOist]

――「セクショナリズムをぶっこわしていかないと、結局、僕らは最後に消滅するよ」――つまり、“経営者にとってよく分からない”間接部門のままでは、いつかコストセンターと見なされてカットされてしまうことは必至だと南山氏は言う。欧米やアジア圏では、CAEやCADで高い付加価値を出している企業が多いのに、日本の企業はそれでいいのか。ともかく、セクショナリズムの話は、南山氏たちの長野企業仲間の議論の中でも、必ず問題として挙がるという。

水出2

セクショナリズムの議論はすごく面白くて、そこ(長野企業仲間の議論)には設計者、経営層の人たちもいたんだけど、……後もう1つ、何だっけな? あ、製造か。それでグループ討議してね。


南山2

本当は、僕らがそれを社内でやんないといけないけど……、やれない。僕はその議論の中で、シミュレーションの担当をして、いろんな話をしてるんだけど。セクショナリズムもあるし。シミュレーションとか3次元設計を通じて、それをやっていかなければいけないなと思ってる。


いま僕は一番下っ端で、ボトムアップで何とかやろうとしているんですけど、結局、リーダーシップと政治力みたいなのが必要ですね。


南山2

そうそう! キーを握っている人を変えないとね。


CAEをやっていた上司もいるんですけど、「このままCAEやってても、これ以上、上にいけないな」って自分で感じてると思うんですよね。それでルートをすっと変えたり、開発の方に戻ったりして。


僕らは、偉くなるべきか

――「解析専任者は偉くなれない論」、ここで再燃。

水出2

さっき(第1回参照)「CAEの担当は偉くなれない」って出たけど、「偉くなるってこと」を自分は目的にしてないから。


南山2

ま。それは俺もそうだけど……。別にいいんだ、俺。


水出2

「偉くなれなくてもいいや」って思うんだよね。偉くなろうと思っている人たちって、偉くなることに主眼が置かれちゃってるから、問題をスルーしたりするじゃないですか。だけど、自分の思っているところは、「CAEを使って設計者を楽にしてやりたい」「自分とこの会社の商品が、トラブルなくお客さまに渡って、お客さんが喜んでくれる」こと。そういう物を作り上げる土台の部分が、設計だったり、仮想検証(CAE)だったりするけど、そういう部分を自分が握っている。「だからいいじゃん」っていう想い。……もちろんこれ、人それぞれ違うし、もちろん「偉くならないと」っている人もいると思うよ。


南山2

偉くなりたい人は、この道(CAE)を歩んじゃダメなんだよ〜(笑)。極論言っちゃうと。これで偉くなろうって時点で、「お前、何か間違ってるぞ」と。


水出2

そうだよね、うん。


JIKO

逆に、偉くならないとできないこともあるじゃないですか?


南山2

ん、それはある。


JIKO

偉くなりたいわけじゃないんですけど……、いまのように平のままでいると、やれることってすごく限られてて。やっぱり、ある程度は。


後ろ盾が、いないんですよね……。


水出2

後ろ盾か。“自分で”っていうのでなく、上とは握らなきゃダメよ? 上とは握って、(付加価値の)「見せる化」のようなことをやる 。そうすると上も分かってくれるんだよ。


南山2

「お前が言うなら、しょうがないなぁ」って。


水出2

「こっちの稟議は通さないけど、これはしょうがない、通してやろう」とかね。


南山2

それは大事だよね〜。


水出2

稟議を5個とか10個とか持っていくわけですね。ダメ元ですよ。「2勝1敗でいいや」みたいな話で。


発言力を高める?


南山2

「仲間を募る」というか、「上司を仲間に」というか、志半分ぐらい分かってもらう。実は僕、稟議持って社長室行かないんですよ。上司(役員)が行ってくれるから。「俺が話しとくから」って。僕は、上司の成果でいいと思ってる。

何ていうのかな……。「僕らがちゃんと(CAEの)付加価値を出す」と、「それを心意気に感じてくれる」っていうのをちょっとずつでも、ね? 水出さんとよく、『百匹目の猿』の話をするんだけど……、100匹目の猿をあきらめちゃいけないんだよ。地道にやっていれば、仲間は出てくるよね、社内に。1人でも2人でも。仲間じゃなくても、駆け込み寺がそこにあるって気付いてくれる人が出てくる。そうやって、「猿が100匹集まって」くれば、社内で認知されるわけで、そうすると上だって黙っていられないよね?


『百匹目の猿』現象

ある思想を持つ人がある程度の数のグループを形成すると、そのグループと接触したことがない人たちにまで伝わるとされる現象を指し、自己啓発分野で語られることがある。宮崎県の幸島にいる猿が始めたイモ洗いの習性が、海外に生息する猿にも広まったという説に基づく概念だが、その説については科学的に解明されているわけではない。



水出2

まだ(僕らは)臨界点に入ってないですよね。でも、『百匹目の猿』の話はすごくいいと思うんですよ。僕は100匹目じゃなく、1匹目になりたいなと思う。でも皆、1匹目なんですよ。みんな1匹目であって、その仲間が寄ってきて、100匹目に来て、臨界点が来て、「よし! やっぱりCAEだな!」っていう……。そういうのをCAEだけじゃなくて、いろんなところで1匹目になって、……何ていうか、そういう心意気は、忘れたくないよねっていう。


南山2

皆、1人で戦っているんだと思うけど……。


JIKO

社内でも1人1人が点になってるのを、この会のように集めて、点にして、面にして、それが立体になって、と広がっていくという。


南山2

やっぱり、「モチベーション」「やる気」だよね。

そして「(自分が)偉くなる」んじゃなくて、「誰かが偉くなってくれればいい」。人間ってさ、お金だけじゃない。皆が誉めてくれればいいじゃん」っていう部分もある。


――しかし、家には養わなければいけないカミサンやコドモがいる。査定の時期は少々複雑になるもの。それでもやはり、たくさんの人が喜んでくれる成果を求めたい?

土橋2

“モチベーション”というのは非常に強いと思うんですよね。長野の皆は知っていると思うけど。私の会社の社長は、大学時代に解析を学ばれていたこともあり「土橋が検討しているのはどんなものか」とご自身でもCAEを見られた上で、導入を決めてくれました。たまたま私の会社の場合はそういう感じでしたが、つまり私たち中小企業にとっては、これ以上ない後ろ盾がいるんです。


南山2

土橋さんとこはね、いっつも、うらやましいよ〜。


土橋2

逆に、それは自分にとってはものすごい……、大きな期待を背負ってる。「ミッションとして何がやりたいか」って、ゴールを定めて、「どう行ったって、必ずここには、何が何でも行くぞ」っていうところを揺るがせないことが大事ですね。


JIKO

最終的なベクトルは、変わらない。


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