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» 2011年09月05日 15時29分 公開

マイクロモノづくり 町工場の最終製品開発(13):溶接職人だけどデザインコーディネーター (2/2)

[宇都宮茂/enmono,@IT MONOist]
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 参加メンバーは、Tokyo Designers WeekやDesign Tideに出展したインテリアデザイナー、プロダクトデザイナー、グラフィックデザイナー、建築家、木工&金属加工職人である宇賀神氏など多岐に渡る11組17人です。

 そして、展示会出展をきっかけに生まれたこのチームで、プライベート展示会を開催しています。デザイン展示会の開催期間中、展示会場周辺のお店やギャラリーなどを、個人的に借り受けて、クリエイターやデザイナーなどが自由に展示します。欧州では既に流行になりつつあるスタイルなのです。

 出展作品だけではなく、出展する空間のデザインも含めたものが作品という作りになっていて、展示してある物をその場で販売もします。出展する商品は、この展示会に合わせて製作した「新作」を中心に、木や金属、フェルト、陶器など多種多様な素材を使った「どこでも手に入る商品ではない! いつでも手に入る商品ではない!」オンリーワンの商品を展示しています。2011年の秋にも開催されるので、興味のある方は来場してみてはいかがでしょうか。

photo DESIGN HEARTの展示

加工屋が取りまとめるデザイナー集団

マイクロモノづくりにおけるバリューチェーン(enmono社資料より)

 最後に、今回の宇賀神氏の事業について、マイクロモノづくりのフレームワークに当てはめて整理してみましょう。

 まず社長自らが企画をし、資源確保のコーディネートも行い、試作品も作り、さらに展示会などに出展して、幅広いマーケティング・販売を行っています。また展示会では販売と同時にお客さんや出展者の声を直接聞くことで、また次の製品の構想を得ています。エンドユーザーやデザイナーさんたちとのコミュニケーションが直接可能なことで、強いつながりを得ることになります。

 このように、社員5人の町工場の社長がデザイナーさんや加工業者さんを取り仕切ってプロデュースすることで、マイクロモノづくりを実践しているのです。デザイナーさんや加工業者さんをしっかり巻き込めるのも、社長自身がデザインを勉強し、その理解を深めるとともに、溶接職人としてモノづくりの本質に向き合っているからこその信頼関係だといえます。モノづくりの本質に向き合っていなければ分かりにくい部分を、阿吽(あうん)の呼吸で取り仕切るからこそ、マイクロモノづくりが実現可能なのでしょう。

 この事例で重要なのは、試作品の費用は宇賀神氏自身が持っているということです。「資金をどう調達するのか」、これがマイクロモノづくりの肝になってくるのです。

 企画の源泉である発想というものも、なかなか自分1人では産み出すことができません。そこでenmonoは、おおたグループネットワーク(OGN)と組んで、「発電会議」という、町工場が製品開発の種を見つけるための、オープンな商品企画会議を定期的に行っています。こちらへの参加も、「何を作るのか」というニーズ探しの一助になるのではと考えています(関連リンク参照)。


Profile

宇都宮 茂(うつのみや しげる)

1964年生まれ。enmono 技術担当取締役。自動車メーカーのスズキにて生産技術職を18年経験。試作メーカーの松井鉄工所にて生産技術課長職を2年務めた。製造業受発注取引ポータルサイト運営のNCネットワークにて生産技術兼調達担当部長として営業支援に従事。

2009年11月11日、enmono社を起業。現在は、製造業の新事業立上げ支援(モノづくりプロデューサー)を行っている。試作品製造先選定、部品調達支援、特許戦略立案、助成金申請支援、販路開拓支援、プレゼン資料作成支援、各種モノづくりコンサルティング(設備導入、生産性向上のためのIT化やシステム構築、生産財メーカーの営業支援、生産財の販売代理、現場改善、製造原価、広告代理、マーケティング、市場調査、生産技術領域全般)など多岐にわたる。

Twitterアカウント:@ucchan

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