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» 2011年09月07日 16時50分 公開

全てのステンレスは、さびる!甚さんの「技術者は材料選択から勝負に出ろ!」(4)(2/3 ページ)

[國井良昌/國井技術士設計事務所(Active Design Office),MONOist]

 さて本題に入りましょう。甚さんいわく、「『人類初! 急激に使用された材料である!』と知って、有頂天になってステンレスを使うな!」とは、どういう意味でしょうか?

 今回良君と会う前、甚さんはエリカちゃんからの以下のようなメールをもらっていました。

良

ちょっと……、手羽先とホッピーってどういうことですか? 僕、誘ってもらっていませんよ!?


 近年、「ボルタの電池(または、腐食電池)」を形成する「電食」と呼ぶ腐食の現象で、破損や火災などのトラブルが続出しています。そして、その事件の材料が「ステンレス」がダントツです。

 それでは、事例を見てみましょう。

 図1は、複写機の「熱定着器」近傍における配電部と、そこで発生する事故の例です。「熱定着器」とは、皆さんがコピーされた用紙を複写機から取り出すとき、ほんのりと暖かいことに気が付いているかと思います。それは、黒い「トナー」と呼ばれる粉を熱と圧力で用紙に印加して「定着」させているからです。これを「熱定着器」と呼びます。

図1 図1 ステンレスのさびによる複写機の火災事故:「ついてきなぁ!材料選択の『目利き力』で設計力アップ」(日刊工業新聞社刊)より

 熱定着器にはAC100Vの大電流が供給されるのですが、その大電流がスパークして火災事故となりました。その過程を以下に説明します。

 図1において、

  1. 電源からステンレス板を通して、AC100Vを配電部まで供給
  2. そのAC100Vを熱定着器へ供給するために、銅板へ導通させる
  3. そのために、ステンレス板と銅板をねじで共締めした
  4. 配電部周辺は通常、水蒸気が発生し、結露しやすい環境下であった
  5. 結露により、ステンレス板と銅板との間で「腐食電池」が形成
  6. その結果、ステンレス板が腐食(電食という)
  7. ステンレス板のAC100Vが銅板へ導通されず、スパークが飛んだ
  8. 近くにあった可燃性樹脂のハンドルレバーに引火
  9. 火災事故発生
  10. 社告・リコールを実施し、損失額は数百億円となった

*上記の事例はフィクション(架空の事例)です。

甚

実はよぉ、これはオイラみてぇな金属加工屋にとっては常識中の常識でよぉ。「常識」だからこそ、義務教育の中1で習ったのよぉ?

オイ、オメェも覚えてっか? あん?


良

甚さん! もちろん覚えていますよ。僕は、中学でも学年トップですから。デヘェ……。これはですねぇ……。


 これは、中学のときに「ボルタの電池」と教わりました。年代によっては、小学5〜6年で学習する内容です。「ボルタの電池」は、「腐食電池」とも呼ばれます。学問的、技術的には、後者の呼び名がお勧めです。

 さて、図2を見てみましょう。筆者が中学校で学んだ「ボルタの電池」の復習です。

図2 図2 ボルタの電池の原理:アレッサンドロ・ボルタ(Alessandro Volta)はイタリアの物理学者・電池の発明者

 何度も、テストに出ましたね!

 「ボルタの電池」のキーワードは「イオン」と「腐食」です。実験道具として、以下に示す物を用意しましょう。

  1. 電解質溶液:水道水に食塩を溶かす
  2. 電線
  3. 豆電球、もしくは圧電素子の電子ブザー
  4. 亜鉛板と銅板
  5. 4.の代わりにアルミ板と銅板
良

甚さん! ここからは、やはり僕が説明します。

上記の電解質溶液の中に2種類の金属を入れて導線で結びます。例えば一方を亜鉛、もう一方を銅とすれば銅がプラス、亜鉛がマイナスの電極となり、銅から亜鉛の方へ電流が流れます。

電流とは「逆方向への電子の流れ」でもあります。つまり、亜鉛電極で電子が発生し、銅電極で電子が消費されます。

金属の腐食というのは、このような「電池」が構成される反応が起こり、その金属の表面がイオン化して溶け出すことです。このとき腐食するのは必ずマイナス極側の金属であり、もう一方の金属では腐食は起こりません。

このような電池を「腐食電池」といい、前述の現象を「電食」といいます。これから分かるように、異なった種類の金属を組み合わせて使うのは慎重にしなければいけません!


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