急拡大するエネファーム需要に応えて政府補助金が復活スマートグリッド

東日本大震災以降、エネファームに対する需要が急増したため、政府の補助金予算が2011年7月に尽きた。資源エネルギー庁は新たに約4500台分の補助金を用意し、需要に応える。

» 2011年10月04日 16時00分 公開
[畑陽一郎,@IT MONOist]

 家庭向け燃料電池「エネファーム」の政府補助金が復活した。

 エネファームを対象とした「民生用燃料電池導入支援補助金」の募集が、2011年10月3日から始まり、エネファーム1台当たりの補助金上限額が85万円*1)と定まった。2012年1月31日まで募集を続ける。

*1)民生用燃料電池導入支援補助金 交付規程が2011年9月30日に改正されている。(補助対象機器費(税込み)−23万円)×0.5+補助対象工事費(税込み)×0.5という式で、補助金額を計算する。例えば機器費が270万円、工事費が20万円の場合、補助金の額は、130万円を超える。この場合は上限の85万円となる。

なぜ補助金が必要なのか

 エネファームとは、都市ガスやLPガスを燃料電池に通じて発電し、発電時の排熱でお湯も作り出す住宅用のコージェネレーションシステム機器の統一名称(図1)。

エネファームの構造 図1 エネファームの構造 エネファームは燃料電池ユニットと貯湯ユニットからなる。図に示した燃料電池ユニットでは、都市ガスやLPガス(図右「都市ガス」)から水素(図中央上「H2」)を生成し、空気中の酸素(「空気ブロア」)と反応させて電力(図左「DC」)を取り出す。その際の反応熱で温水(図右下「温水」)を作る。図はパナソニックの製品。

 エネファームを取り付けることで、一戸建て住宅4人家族という一般的な家庭の消費電力(450kW/月、給湯1200MJ/月)の最大7割をまかなうことができる。しかし、価格が270万円程度と高価だ。耐用年数(10年)を考慮に入れると、光熱費の節約に役立つかどうか、判断が難しい場合もあるだろう。

 そこで、経済産業省資源エネルギー庁は、エネファーム技術の改善と低価格化を推進するため、燃料電池普及促進協会(FCA)を通じて、補助金を支給してきた。

 同庁は補助金上限額を徐々に引き下げている。例えば、エネファームの一般向け販売が始まった2009年は、機器の価格が346万5000円だったのに対して、補助金上限は140万円だった。2011度の第1期は105万円、今回の第2期は85万円と下げている。機器価格が下がっているためだ。

エネファーム需要が急増

 2009年度の補助金交付決定台数は全国で5030台、2010年度は4985台である。ところが、東日本大震災以降、エネファームの需要が急増し、2011年7月7日に補助金交付金決定台数が8133台に達し、2011年度の予算86億円*2)を全て使い切ってしまった。当初予定していた期限を待たずに、同日で補助金の申し込み受付を終了した経緯がある。

 今回、資源エネルギー庁の他の予算を利用する形で、新たに39億円を用意した。

 経済産業省の2012年度予算の概算要求では、エネファーム支援のために、96億円を要求している。「自立した市場の確立を促すため、2012年度の補助金の上限は85万円よりもさらに引き下げる方向性である」(資源エネルギー庁燃料電池推進室)。

*2)経済産業省資源エネルギー庁の補助金は、エネルギー対策特別会計に分類されている。再生可能エネルギーの導入支援とクリーンエネルギー自動車や燃料電池の普及支援策は、エネファーム向け以外にも、以下の10種類がある。住宅太陽光発電導入支援対策費補助金(349億円)、新エネルギー等導入加速化支援対策費補助金(130億円)、再生可能エネルギー熱利用加速化支援対策費補助金(35億円)、ガスコージェネレーション推進事業補助金(23億3000万円)、クリーンエネルギー自動車等導入促進対策費(291億7000万円)、中小水力開発促進指導事業基礎調査委託費(5000万円)、中小水力・地熱発電開発費等補助金(11億8000万円)、地域エネルギー開発利用設備資金利子補助金(400万円)、中小水力発電事業利子補給金助成事業費補助金(1億5000万円)、バイオ燃料導入加速化支援対策費補助金(8億9000万円)。

 なお、政府の補助金以外に、エネファームに対する自治体助成金制度を設けている地方自治体もある。FCAでは60の自治体についての情報をまとめている。


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