車載用SoCの拡大を目指すルネサス、目標達成を阻む課題解決に全力(2/2 ページ)

» 2011年11月09日 00時00分 公開
[朴尚洙,Automotive Electronics]
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製造/マーケティングでも変革

 ルネサスは、R-Carを開発する上で製造面についても新たな取り組みを進めている。車載情報機器向けSoCは、高い処理能力を求められるため、最先端プロセスを用いて製造されることが多い。合併前の2社の製品であれば、EMMA Carは現在の鶴岡工場(山形県鶴岡市)で、SH-Naviは那珂工場(茨城県ひたちなか市)で製造していた。中でも、那珂工場でのみ製造していたSH-Naviが、東日本大震災によって同工場が被災した際に供給不足に陥ったことは記憶に新しい。

 これらに対してR-Carは、中位品の「R-Car M1」と最上位品の「R-Car H1」について、TSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)に前工程のウェーハ処理を委託している。製造プロセスは45nmプロセスを採用した。TSMCは45nm/40nm世代において40nmプロセスを採用していることから、この45nmプロセスはTSMCがルネサス向けにカスタム開発したものか、両社が共同開発したものと考えられる。なお普及品の「R-Car E1」は、鶴岡工場の40nmプロセスを用いて製造している。ルネサスは、東日本大震災による那珂工場の生産停止を受けて、1つの製品を複数の工場で生産できるようにする「マルチファブネットワーク」の構築を進めている。TSMCでR-Carの製造委託を開始したことにより、車載情報機器向けSoCについてもマルチファブネットワークを構築できる可能性が開けた。

 売上高を伸ばすにはマーケティング面での取り組みも必須である。ルネサスは、マイコン事業と、アナログICや電源ICを扱うアナログ&パワー(A&P)事業の売上高を拡大するため、各事業部などに分散していたマーケティング機能を2011年4月に設立したマーケティング本部に集約した(EE Times Japanの参考記事)。このマーケティング本部では、車載情報機器向けSoCや車載マイコンに加えて、A&P事業が扱う車載向けアナログIC/電源ICのマーケティング機能も集約された。つまり、車載ICのマーケティングを一括して行える体制が整ったことになる。

 合併前の2社、そして2011年3月末までのルネサスでも、車載情報機器向けSoCや車載マイコンを扱う部門と、車載向けアナログIC/電源ICを扱う部門は、自動車メーカーや車載機器メーカーなど顧客がほぼ同じであるにもかかわらず、一体になって動くことは少なかった。これは、マイコン、A&P、SoCと、製品別で縦割りになっている事業体制に起因している。ルネサスのマーケティング本部で自動車情報システム技術部長を務める平尾眞也氏は、「A&P事業と一体になったマーケティングが行えるようになったことは、SoCを含めて車載IC事業のさらなる成長を目指す上で極めて大きな意味がある」と述べている。製品展開でも、R-Car自身の消費電力を最大で20%削減できる専用の電源IC「R2A11301F」を投入するなど従来とは異なる施策を進めており、車載情報機器向けSoCの成長に向けたルネサスの本気度を見てとれる。

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