無理をせずにEVの走行距離を伸ばすには環境技術 記事ランキング(3)

@IT MONOist 環境技術フォーラムでアクセスが多かった記事(電気自動車関連)を紹介します。今回の集計対象期間は、約1年間、2011年1月1日〜12月27日です。

» 2011年12月27日 19時30分 公開
[畑陽一郎,@IT MONOist]
無理をせずにEVの走行距離を伸ばすには 長距離移動が可能なラクダ

 @MONOist 環境技術フォーラムに掲載された「電気自動車」(EV)関連の記事のうち、2011年にアクセスが多かった記事を紹介しましょう。上位10件を見ると、ほとんどがEVの走行距離を伸ばす取り組みに関する記事でした。



「SIM-LEI」の謎に迫る

 ランキング第1位第2位第4位を占めたのは、SIM-Driveが2011年3月に発表したEV、先行開発車第1号「SIM-LEI」関係の記事でした*1)

*1) 表には現れていないが、第11位の記事もSIM-LEI関連だ。

 EVの欠点だといわれるのが1充電当たりの走行距離。走行距離を伸ばそうとすると電池搭載量が増え、コストアップ要因につながります。電池は重いため、電池の量を増やしていくと、「電池で電池を運ぶ」状態になってしまい、自動車として意味がなくなります。

 SIM-LEIの電池搭載量は24.9kWh*2)。これで333km走ります。現時点で、商用車における電費性能世界一(関連記事)のホンダ「フィットEV」は電池搭載量20kWh、198km走行。フィットEVと比較しても、SIM-LEIの開発努力が光ります。

*2) 日産自動車「リーフ」の電池搭載量は24kWh、三菱自動車の「i-MiEV」は16kWh(10.5kWhのグレードもある)。

 電池の容量を増やすのでなければ一体何を改善して走行距離を伸ばしたのか。SIM-LEIの記事が注目を集めたのは、このような疑問にある程度答えているためでしょう(図1)。

図1 SIM-LEIとSIM-Driveの清水浩社長 東京モーターショー2011でのプレゼンテーションの様子。図右のボードにあるように、現在は先行開発車事業第3号への参加団体を募集している。第3号の開発テーマは「モーター利用の効率化、空気抵抗の低減、転がり摩擦の極小化」という王道をいくものだ。

燃費記事が注目集める

 記事ランキングから読み取ることができるもう1つの傾向が「燃費」です。第3位の記事が扱った無線充電、第5位の記事が取りあげたキャパシタ、第6位の記事の主題である軽量化、いずれも燃費を改善する技術です。

 走りながら充電できれば、見掛け上の燃費は無限大になります。道路などの交通インフラ自体が太陽電池を使って発電し、それをEVへ無線充電で送ることができれば、ドライバー個人のメリットはもちろん、国全体のエネルギー収支改善に、より役立ちます。

 第5位はキャパシタを採用してこれまでは取りこぼしていた運動エネルギーを回収する取り組みを紹介しています。こちらは無線充電のような未来の話題ではなく、2012年には量産車に搭載される技術です。マツダはクルマへ段階的に電気デバイスを導入する「ビルディングブロック戦略」を採っています。第1段階の「アイドリングストップシステム i-STOP」の導入がほぼ完了し、次は「減速エネルギー回生システム i-ELOOP」だからです(図2)。

図2 マツダの「雄(TAKERI)」とキャパシタユニット 東京モーターショー2011に出典したもの。キャパシタユニット(図右下)は、日本ケミコンの円筒型電気二重層キャパシタを10本(5本×2)重ねた形状を採る。雄のエンジンルームの左前方にキャパシタユニットを置いた。60km走行時にアクセルから足を話すと、7秒でキャパシタユニットがフル充電状態になる。各種ランプやメーター、MCU、燃料ポンプなど車内の電装品にキャパシタユニットから電力を供給することで、実用燃費が約10%向上する。通常のガソリン車は燃料の約10%を発電に利用し、これで電装品を動かしているためである。

 また、車体の軽量化の動きからも目が離せません。炭素繊維強化樹脂(CFRP)を使ったクルマというと、これまではレーシング用の一品モノという扱いでしたが、今後はEVの興隆と軌を一にして普及期に入りそうです(CFRPを扱った解説記事)。

 なお、冒頭で紹介したSIM-Driveの先行開発車事業第2号の開発テーマの1つは「(CFRPなどの)化学素材による車体の軽量化」です。


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