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» 2012年01月12日 11時20分 公開

小寺信良のEnergy Future(12):電力を変える蓄電システムの底力 (3/4)

[小寺信良,@IT MONOist]

大型蓄電システムに求められるもの

 蓄電システムは、規模(分野)が3段階に分かれ、それぞれに求められるものが違う()。

分野 目的 要求ポイント
家庭用 節電・停電への備え 価格、柔軟性の高い充放電
産業用 ピークシフト 設置コスト、安全性
発電施設用 供給電力の安定化 大容量、長寿命

 家庭用は、電力利用料の差が大きく、季節によっても時間帯によっても変動する。ほとんど使わない時間帯があったかと思えば、契約量ギリギリまで使う瞬間があるなど、小電力から大電力まで瞬時に出力が変えられなければならない。

 産業用はある程度電力需要の見込みが立てやすいため、ピークシフトへの利用が期待される。さらに自社での発電との組み合わせや売電時の安定化のためにも使われる。

 発電設備用は、再生可能エネルギーの発電施設での電力安定化のために使われるが、蓄積する電力量がとてつもなく大きくなる。このため設備設置面積などを考えれば、高密度の蓄電が必要になる。

3種類の電池が使える

 大規模蓄電システムに利用できるもので、実用化されている二次電池は3種類ある。鉛蓄電池、NAS電池、リチウムイオン電池だ*1)。これもそれぞれに特徴がある。

*1) このほかニッケル水素二次電池も有望だ(関連記事:関西電力が国内最大のメガソーラー、蓄電池を使った出力安定化も試みる)。

 鉛蓄電池は、電池単体のコストが安いのがメリットである。工具類やUPS(無停電電源装置)などでよく使われており、製品としてかなりこなれているため、安全性は高い。ただし寿命が短いので、数年で交換が必要になる。また重いため、大容量を準備するとなると設備としての建設費、設置費がかさむ。

 NAS電池はあまりご存じの方は多くないと思うが、大エネルギーを蓄積可能な電池で、日本ガイシが実用化した(関連記事:日本ガイシ、NAS電池を用いた電力調整事業に参加)。負極にナトリウム(Na)、正極に硫黄(S)を使うため、NAS電池と呼ばれる。既に風力発電、太陽光発電の安定化で実績がある。エネルギー密度、重量などで鉛電池に比べてメリットがあるが、常に温度を300度に保っていなければならないので、まず専用の建屋が必要だと考えるべきだろう。

 特性もちょっと変わっていて、大容量が蓄電できるが、一度に大電力を放出できない。逆に言えば安定した一定出力を得るのに向いている。

 リチウムイオン電池は既に各所で使われており、おなじみだろうが一応同じ視点でおさらいしておくと、小型・軽量というメリットがあり、寿命も長い。また少量から大量の放電が可能だ。ただし電池単体のコストは高い。

 従って今回、三洋電機が開発した蓄電システムは、産業用から家庭用、大きくてもメガソーラー施設ぐらいで、それ以上の発電所用の大容量設備は視野に入っていない。その規模になるとNASの方がメリットが大きいという。

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