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» 2012年01月19日 10時57分 UPDATE

FPGA Watch(8):激動の2011年を振り返り、FPGA業界の“新時代”を占う (2/2)

[堀内 伸郎 日本アルテラ株式会社,@IT MONOist]
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機能、性能、消費電力への挑戦(2):プロセッサシステムとしてのアプローチ

 多機能化、高性能化、低消費電力化は、FPGAのみならず半導体チップメーカーの共通のチャレンジです。いま、プロセッサSoC側とFPGA側のそれぞれのアプローチに面白い現象が起こっています。

 プロセッサ側は、高い性能が必要となるアプリケーションには高性能なコア、そうでないアプリケーションには性能を抑えた低消費電力のコアというように、プロセッサコアの種類を多様化することで対応しています。また、デュアルやクアッドなどマルチコア化による高性能化も当たり前になっています。さらに、汎用プロセッサコアとグラフィックス専用プロセッサ(GPU)を組み合わせるというアプローチを発展させ、汎用プロセッサと専用プロセッサの多種プロセッサ構成による高性能化も登場し、ハイエンドコンピューティング、スーパーコンピュータにおける革新が起きています。

 実はこのアプローチ、専用プロセッサの部分をFPGA(カスタムハードウェア)に置き換えれば、FPGAとFPGAユーザーであるハードウェア設計者にとっては従来行ってきた手法だといえます。プロセッサ性能が不足する場合や処理量をオフロードしたい場合に、その処理をハードウェアに委託するわけですが、ここで考えなければならない課題として、ハードウェアで実現する(設計する)経験や人材を有しているかどうかという点が挙げられます。

 これに関連して、アルテラが「OpenCL(Open Computing Language)」に対する取り組み(研究開発プロジェクト)を発表しました。OpenCLは、C言語プログラムの中で高速化したい処理を並列化し、その処理を複数のプロセッサ、または専用プロセッサに分担するためのC言語の拡張とAPIを標準化するものです。ソフトウェアの並列化とハードウェア化により、動作周波数を下げて性能を上げるというアプローチを自動化する試みです(図4)。

OpenCLによるソフトウェアの加速化 図4 OpenCLによるソフトウェアの加速化

 また、DSPの分野では、アルテラからFPGAによる浮動小数点のデジタル信号処理設計に向けたハード(FPGA)とライブラリ(回路)に加えて、モデルベース設計ツールのサポートも開始されました。浮動小数点演算のハードウェア実装は困難だという従来の考えを覆すもので、コンパクトなハードウェアによる演算性能の加速化が可能になっています。

ハードウェアのためのC言語ベース設計

 C言語とハードウェアが関わる設計ツールの議論の際、気を付けなければいけないのは、ハードウェア設計者のためのツールかソフトウェア設計者のためのツールか、という点です。特に、入力にC言語を用いる高位合成ツールについては、C言語という言葉から「ソフトウェア技術者がハードウェアを生成できる」という誤解や、その誤解に伴う落胆が起こりがちです。先に述べたOpenCLのアプローチは、ソフトウェアをいかに並列化して、加速させるかというソフトウェアの視点です。

 一方、C言語による高位合成は、ハードウェア設計の効率を高めるハードウェア設計者のためのツールです。つまり、現在多くのロジック設計者が使用しているRTLという設計記述レベルや、論理合成のための言語であるVerilog HDLやVHDLの高位に位置するものです。

 このC言語ベースの高位合成ツールにおいても、2011年に新たな動きがありました。

 まず、FPGAではザイリンクスが「ESL(Electronic System Level)」ツールベンダーのAutoESL Design Technologies社を買収し、同社の「AutoPilot」という高位合成ツールの販売を開始しました。同社の製品との統合は2012年以降になると思われます。

 一方、日本のNECからは同社の高位合成ツール製品であるCyberWorkBenchのFPGA対応版が米国で毎年開催されているDesign Automation Conferenceで展示され、後日プレスリリースされました。FPGA対応版では、アルテラとザイリンクスのFPGA製品をターゲットにして最適化されているとのことです。

 このようにハードウェア設計の視点からも、FPGAは大規模なASICやSoCで長年議論されている高位レベルの設計手法にシフトする土台ができ始めており、この流れは2012年以降もますます加速化していくと思われます。

機能、性能、消費電力への挑戦(3):装置レベルのアプローチ

 本稿では「機能、性能、消費電力への挑戦」について、FPGAデバイスレベル、プロセッサシステムレベルの2つの視点で述べましたが、最後に“装置レベル”における新たなアプローチにも触れておきましょう。

 高速な信号伝送を追求していくと、「光伝送」という手段に行き着くことになります。光伝送は、主に通信インフラの基幹システムで使われています。光を使うことにより、高速化とともに配線の簡素化、低損失による信号品質の向上、さらに低消費電力化が大幅に有利になります。余談ですが、従来は通信インフラなどで使用される特殊なものと考えられていた光伝送は、今後は広い範囲で私たちの周囲に登場するものになりそうです。インテルが提唱し、アップルがいち早く採用した「Thunderbolt」の次バージョンは光伝送を用いた10Gbpsの帯域幅を実現するものだそうです。

 超広帯域システムにおける光伝送の課題として、光通信デバイス(または、モジュール)が占める面積とコストが挙げられますが、それに加えて光通信デバイスと半導体デバイスとの接続が依然としてプリント基板上の銅配線で行われるために、信号品質、配線面積、消費電力に対して限界になってしまいます。

 このような課題に対して、アルテラは、光接続を備えたFPGA(光インターコネクトFPGA)のアプローチを発表しました。100Gイーサネット、またはそれ以降の超広帯域な通信システムやクラウドコンピューティング時代となり、大容量化が重要となるデータセンターでは、消費電力の課題が既に限界に近づいています。光伝送を行うFPGAデバイスが、このような基幹システムの機能と性能のブレークスルーとなることが期待されます(図5)。

光インターコネクトFPGAのイメージ 図5 光インターコネクトFPGAのイメージ


 新年(2012年)第1回目となった今回は、FPGAを取り巻く昨年の動向を振り返りながら、今年以降の可能性について述べてきました。

 FPGAは今後も継続的に進化していきます。新しい技術や機能の融合により応用分野が広がり、またユーザーの選択肢も広がっています。日本の強みであるユニークなアイデアを伴った、世界的に競争力のあるシステムの開発に、FPGAを効果的に利用して頂きたいと願っています。(次回に続く)

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