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» 2012年02月22日 13時55分 UPDATE

テクニカルショウヨコハマ 2012 レポート(2):コガネイは、TRIZを使って本気でコマ設計していた (2/2)

[小林由美,@IT MONOist]
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あえて、思いを込め過ぎない!?

 シンコウギヤー・カキタ製作所連合は、歯車メーカーと精密切削メーカーの共同チームだ。同チームは、決勝戦まで進出。おしくも由紀精密チームに敗れ、準優勝となった。

 コマ大戦当日、シンコウギヤーの社長である梅澤隆司氏が回し手として参加する予定だったが、別件で参加できなくなり、急きょ、同社の若手エンジニア 斉藤琢哉氏が回し手に。コマ設計・製作を主に担当したのは、カキタ製作所 代表取締役の柿田孝之氏。

「ギヤ型のコマはありだと思っていたんですが、実際、こうしてコマ大戦に参加してみると、次回も“それはない”と思いました」(斉藤氏)。

「本当にやるとしたら、かざりで付ける感じですね」(柿田氏)。

 本気で勝つためには、ギヤ型は不利になってしまう。次回、開催されるなら「デザイン部門」か「コミック部門」があるといいのかもしれない……。

yk_coma20122_07.jpg シンコウギヤー・カキタ製作所連合のコマ

 ともあれ、コンセプトは「緻密なやっつけ」。最初はSUS製で作ろうとしていたものの、30個ぐらい試作をしたら材料が切れてしまい、SK材に変えたところ、SUS製よりも“いい感じ”で回るように。最後に、工場にあった黒染めのスプレーを吹いて、できあがり。コマの出来は「上出来。言うことなし」とのこと。

 「自分の気持ちをコマに込め過ぎると、いろいろクセが付いてしまうので……」と、柿田氏は言う。

 当日使ったコマは、幾つか作ったもののうち、回し手である斉藤氏が「回しやすい」と選んだもので、柿田氏がベストだと思ったコマではないという。そもそも今回は、「誰が回しても、きちんと真っすぐ回る」コマづくりを心掛けたとのこと。

 以下は、柿田氏が大会を終え、Facebookに投稿したコメントだが、その心情をよく表していた。

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「ガンダリウム合金製」、だそうです

 記者が個人的に気に入ったコマがこちら。美しいカラーが入っている静岡ものづくり連邦のコマ「静岡レンジャーコマ」だ。静岡ものづくり連邦は、静岡県内(やや駿河湾寄り)のモノづくりに携わる人たちが、「静岡県の活性化のために何か企んでやろうと」と集ったグループだ。

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 この3色(トリコロール)は、知る人ぞ知る『機動戦士 ガンダム』の「連邦軍カラー」。材質について記者が尋ねると、「ガンダリウム合金です!」(機動戦士ガンダムに登場する架空の材料)との回答したのは、同グループに属する金型メーカー エムアイモルデの代表取締役 宮城島俊之氏だ。

 「で、材料は何ですかね」ともう一度宮城島氏に尋ねたところ、「あ、SKD材(合金工具鋼材)です」とのこと。「……地球の材料で代替えするなら、ですが」。

 トリコロールカラーの部分は、1つ1つ手塗り。形状は、中央付近をへこませて軽くし、外側を重くするオーソドックスな慣性ゴマとした。

 コマの出来はよかったものの、当日、回し手だった宮城島氏が緊張してしまったらしく、手が滑って初戦敗退してしまうことに。クリタテクノの黒田氏が言ったように、まさに精神面が勝敗を左右してしまった例だ。

 試作品には、静岡らしく「ミカン型」「富士山型」も存在した。こちらも、やや“じゃじゃ馬”な挙動ながら、きちんと回るコマに仕上がったということだ。

yk_coma20122_08_2.jpg コマの試作品

 静岡ものづくり連邦は現在、2012年3月17日に葛西臨海公園で開催する第2回 レッドブル・ボックスカートレースに挑戦しようと車両を鋭意製作中だ。

震災に負けず、“変なこと”をしてみよう

 モノづくりの街 茨城県日立市から、金型メーカー 光和精機製作所 代表取締役の佐藤貴之氏が参戦……しようとしたものの、業務の都合で会場に来られず。代理でコマを回したのは、当日に司会を務めたエコックス 代表取締役 椙田祐司氏。

yk_coma20122_13.jpg 左から、大同製型 代表取締役社長の鈴木雅紀氏、エコックス 代表取締役 椙田祐司氏、由紀精密 八木大三氏
yk_coma20122_14.jpg 光和精機のコマ

 光和精機が製作したコマの材質はモリブデン(比重10.28)。佐藤氏は後日、コマ製作について、以下のように語った。「タングステン合金や焼き材のチームが多いのを想像して、あえて比重は軽く(鉄の7.8に比べれば重いですが)、“変な材料選定”という差別化にこだわりました。また、今までの(業務)経験から、『かなりショックを吸収しそうな感じ』でしたので、モリブにしたというのもあります。カタログにもある通り、高価な材料なので、製作員数は2個。モリブは切削性が悪く、1個は加工途中で刃物が折れてしまい、使い物にならずにゴミとなりました」

 光和精機のある日立市は、2011年3月の東日本大震災では震度6強の揺れに見舞われた。いまも、たまに震度4や3程度の地震がある。震度6では加工機が傾き、震度5では水平がずれてしまうそう。

 佐藤氏は、被災当時から製造業仲間とともに、FacebookやTwitterを利用し、地元の復興支援や企業間連携に取り組んでいる。

真夜中の一発勝負

大同製型 代表取締役社長の鈴木雅紀氏の自己紹介

yk_coma20122_12.jpg 大同製型のコマ

 検査ゲージを設計・製作する大同製型は、あえて職人のテクニックが要求される汎用旋盤でコマを製作。コマ大戦前日の夜中に30分で作ったコマだそう。まさに、“一発勝負”。仕上げには、テフロンスプレーを吹いて、摩擦を減らしたとのことだ。

 「実は、ウケ狙いでホッシー君のような形状のコマをワイヤーカットで製作しましたが、あまり回らなかったのでやめておきました……」と大同製型 代表取締役社長の鈴木雅紀氏。

美しいアヤメローレットのコマ

 業務の都合で当日参加できなかった斉藤製作所 齋藤浩尉氏のコマは、アヤメローレットの入ったコマ。業務の都合で、製作に時間を掛けることができなかったにもかかわらず、第4位に。代打の回し手は、心技隊の事務局長 エムエスパートナーズ 代表取締役 伊藤昌良氏。

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 コマの素材は、工場にあった残材のSUS316。試作は2個(2種類)、重めなタイプと軽めなタイプ(当日はこちらを採用)を製作したということだ。

 斉藤製作所では、ヨーヨーブランドと協業し、オリジナルのプロ向けヨーヨーの製作もしている。ちなみに同社は、お笑い芸人の桜塚やっくんの実家としても知られている。

 第3回(次回)は、コマ大戦で優勝した由紀精密、会場で話題になったチタン製 逆さゴマを設計した「おちむら金属」、「ケズルンジャー」など、さらに個性的な面々が登場する。


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