連載
» 2012年02月28日 14時50分 公開

S&OPプロセス導入 現場の本音とヒント(1):悪夢のような“製販調整会議”を何とかしたい! って思うことありませんか? (2/2)

[S&OP-Japan研究会,@IT MONOist]
前のページへ 1|2       

……で、三つどもえのつな引きの結末は?

 営業は顧客の都合、需要予測の難しさと製品ミックスが変ったことを理由にする。

 需要予測が当たらないのは公然の事実となっており、需要精度の検証は行われず、この問題が良くなる気配は見えない。

 うがった見方をすれば、在庫責任を顧客や外部の要因にすることで、社内の誰かに責任が及ばないようにする仕組みが確立したのかもしれない。

 しかし現実的には顧客の要求から製品の数が増え、仕様が複雑になり、経済が不透明な状況になった現在、会社が生き残っていくためにもこの無責任体質を何とかしたい。

 営業担当が「製販調整会議」で交渉を突破できず供給ができなくなれば顧客は自衛のために競合の製品を買い、当社は信用とシェアを失う。

 さすがにこのような状況になれば担当者は管理者へ上申して最悪の事態を防ぐことを考える。

 このような火が着いてしまったオーダーの処理は大きな手戻りになるばかりでなく、別の犠牲者を出して「製販調整会議」をさらに負のスパイラルに落とし込んで行く。

製品ライフサイクル上の問題

 製品の終了や新製品のリリース時期には別の問題が出てくる。例えば新製品の量産試作やリリース前の積み増しをどのタイミングにどのくらいの優先順位で入れるのか? とにかく目の前の販売量を確保することが最優先の状態では新製品投入にめどが付かない。残念ながらそれを経営陣に判断してもらうオフィシャルな仕組みもない。

 また、逆に需要が弱くなった状態で工場の生産を止めるのか、戦略的に在庫を作るのかの大英断などできるハズもない。

 工場が目指す主要な指標は単位当たりコストを下げること。つまり工場の容量いっぱいまで効率よく動かすことだから需要の真の確度にかかわらず作るものがあればどんどん生産する。売れない製品在庫が積み上がる。

 毎年期末に痛みとともに在庫処分をすることになるが、何の知恵も教訓も得られていない。

 いろいろな課題を抱えながら目先の販売数量と納期を守るため、来月の生産計画を作り工場を回すため、「製販調整会議」は迷走する台風のように混沌としながらも大きなエネルギーを振りまきながら通り過ぎて行く。

Sさんの会社の製販調整会議が抱える課題:まとめ

 ここで当社の「製販調整会議」の課題を整理してみよう。

1.担当者が全体を見ず、個別製品の納期厳守のために行う

2.直近の製造と調達の順序を考慮して計画を作る

3.担当者間の調整に終始し責任の所在がはっきりしない

4.目先の対応が優先され新製品の投入や撤退などの調整が難しい

5.優先順位が会社にとってベストなものなのか検証されない

6.需要予測の精度、不良在庫の理由については曖昧にされ検証されない

図1 SCM業務の現実的ストレス 図1 SCM業務の現実的ストレス(SCCOR S&OP研究会の資料を基に作成)

ヒントになるかもしれない本を見つけた

 先日会社帰りの書店である本*を手にとってパラパラ読んでいたら目からウロコの記述を見つけてしまいました。なんでも欧米ではS&OP(Sales & Operations Planning)プロセスという枠組みがあり、このへんの調整をうまくやっているらしい……。

 この「製販調整会議」に代わる仕組みは「統合された調整活動」というサブプロセスに置き換えられるということのようだ。うちの状況もS&OPのプロセスでなにが解決できるのか考えてみたい。


* 松原恭司郎『S&OP入門―グローバル競争に勝ち抜くための7つのパワー』(日刊工業新聞社、2009年)


本の内容をかいつまんでSさんなりに解釈してみる

 この本によるとS&OPのプロセスでは販売デマンドは「需要マネジメント」プロセスの中デマンドマネジャーが、供給計画は「供給マネジメント」プロセスの中で供給マネジャーが作る。また新製品の開発・リリース計画はプロダクトマネジャーが作る。

 これらの情報を三者が持ちより、「統合された調整活動」プロセスの中で年度予算、直近のアウトルック、会社や事業部の戦略に基づく優先順位をベースに数量だけでなく、財務評価を見ながら調整するとのこと。

 と、いうことは調整された内容についてはそれぞれのマネジャーが自部門へ持ち帰り部門内へ展開するということか?

 ギャップが埋まらず調整できなかった内容については、経営トップの意思をオペレーションに反映する仕組みである「MBR:エグゼクティブ・ビジネス・レビュー」に諮るため、解決策として幾つかのシナリオを作成するとある。

 これなら全ての製造・販売などに係る課題は会社やビジネスの戦略や経営トップの意思が反映されたものになり、責任の所在も明確になる。これだけでもグッドニュース!

 販売(営業)担当者はデマンドマネジャーと、生産計画担当者は供給マネジャーと入念な打ち合わせを持ち、ベクトルを合わせておくことができるし担当者間の不毛な利害の対立を最小にできるかもしれない。これは期待してもいいかな?

 ここで、現行の製販調整会議とS&OPプロセスの相違点を比較して新しい製販の関係が調整される様子をイメージしてみよう。

項目 製販調整会議 S&OPプロセス
プロセスオーナー 製造、販売(営業)の担当者または管理者 経営トップ
目的 直近の納期厳守 中期の需給バランスの確保
マネジメントレベル 業務レベル 戦術レベル
活動形態 単独の会議体 一連のビジネスプロセス
計画対象期間 計画タイムフェンスの内側 計画タイムフェンスの外側に重点を置き、一般に18〜24カ月
管理対象の粒度 製品(エンドアイテム) 製品ファミリー
管理単位 ミックス(生産や調達の順序) 数量と金額評価
タイミング 月次以下 月次
カバーするアクティビティ 直近の販売、製造と調達 中期的なアクティビティを含む需要と供給に加え、製品の上市・撤退、設備投資、アウトソーシングなど
表 Sさんのイメージした製販調整会議とS&OPプロセスの相違点(出展:松原恭司郎『S&OP入門―グローバル競争に勝ち抜くための7つのパワー』)

 残念ながら全ての生産設備で需要と供給がバランスすることなどまずない。

 必ずどちらかに振れて売る物がないか、製品在庫の山ができるかということになる。

 せめてその振れ幅をできるだけ小さく状況に合わせて素早くコントロールすることが要求されているのではないか?

 しかも責任のある人たちが明確なルールと仕組みを使って。さらに毎月苦労している担当者の負担も大幅に下げることができればこんなよいことはない。

 でもこんな話は上司の工場長には相談できないし……。

 今度飲み友達としてお世話になっている営業統括本部長のOさんにオフラインでちょっと相談してみよう!

編集部から

S&OPの考え方を厳密に定義すると、Sさんの理解だとやや相違はあります。しかし、Sさんのような課題を持つ方にとって、S&OPに触れる最初の「きっかけ」として、このようなとらえ方はあながち間違いではありません。共感された方はこの連載を継続して読み、理解を深めることをお勧めします!


MONOist「S&OP」関連記事一覧へ MONOist「S&OP」関連記事一覧へ
前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.