インタビュー
» 2012年03月08日 11時00分 公開

「コンセプトモデル」が次代の製品を創造する――シチズンのモノづくり麻倉怜士のモノづくりジャパン(3/3 ページ)

[麻倉怜士,@IT MONOist]
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デザイナーがこだわった「スパイラルパーツ」

麻倉氏: SATELLITE WAVEはデザインも特徴的ですね。文字盤の円周部や時分針、そしてケースやウレタンのバンドにアクセントを与えているグリーンが印象的です。

杉浦氏: デザイナーの思いを的確に代弁できるかどうか分かりませんが、GPSって宇宙とつながっている感じがありますよね。「宇宙」「地球」「人工衛星」といったテーマが時計のディテールや全体の印象にかなり盛り込まれています。一番特徴的な部品はスプリングのようなスパイラルパーツでしょう。GPS電波を活用した時計なので、電波を受信するアンテナをイメージしています。実際には機能部品ではないのですが、デザイナーはこのスパイラルパーツを本当にアンテナとして機能させたかったようです。技術的にちょっと無理でしたね(笑)

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麻倉氏: “機能”はないけど“意味”はあるというわけですね。バンドも含め、トータルにデザインされていますよね。GPSという技術とデザイナーの世界観を融合して、モノとして具現化するのには苦労が多かったでしょうね。

photo 技術開発本部 開発センター 商品開発部 商品開発課 開発グループの齋藤明洋氏(外装担当)

齋藤氏: GPSという機能とデザイナーから出てきたデザイン、2つのやりがいがあるものが上がってきて、できませんとは言えません(苦笑)。ですので、できる、できないの判断が難しかったです。実際にそのギリギリのラインのものがいくつかあったのですが、なるべく最後まで頑張り、近いところまでやっていこうと心掛けました。

麻倉氏: 「これはできない」と思ったんだけど頑張っちゃったとこってどこですか?

齋藤氏: スパイラルパーツです。デザイナーの思いをカタチにした、でも機能のないパーツというものは、時計部品として作るのは初めてでした。ガラスを作る、ケースを作る、バンドを作るというのは従来のものを発展させていけばある程度イメージできるのですが……。特にバネで伸縮するような小さな部品に、緑色の塗装を施すのが難しかったですね。縮んだ時でも塗装が追従して美しさを損なわない、といった部分です。ここでも、塗装で試行錯誤した過去のコンセプトモデルでのノウハウが生かされました。

麻倉氏: 塗装でもコンセプトモデルの技術が横展開できるわけですね。他に苦労された点は?

齋藤氏: ガラスですね。SATELLITE WAVEを横から見ると、スパイラルパーツが見えるよう透明になっています。また、金属リング自体が浮いている感じを出すために、透明のスペーサーを1枚入れています。このような処理のために規格外のサファイアガラスを使っているのですが、そのサファイアガラスの加工も規格外だけに苦労しました。さらに透明なパーツを接合してキレイに見せるという部分もこれまでなかったので、各パーツの接着にもさまざまな苦労があります。

麻倉氏: SATELLITE WAVEは予約段階で限定数量990台を全て完売してしまうなど大変好評でした。今後はどんな時計を作りたいですか。

八宗岡氏: SATELLITE WAVEで追求した「技術と美の融合」を推し進めていきたいです。例えば、昔のソーラー腕時計は電卓についているようなソーラーパネルを時計に貼り付けただけだったものでしたが、いまのエコ・ドライブはわれわれが見てもどこにパネルがあるのか分からないほどです。これは技術と美の融合の代表例でしょうね。電波時計も登場当初はアンテナがドンと真ん中にありましたが、最新モデルではアンテナも小さくなり普通の腕時計と変わりません。これも技術がデザイン性に歩み寄っているといえるでしょう。こういった技術と美の融合のために、コンセプトモデルはとても重要な存在なのです。



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