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» 2012年03月14日 07時30分 公開

「平常時の取り組みが災害時に役立つ」、通行実績情報マップの成果と課題が示唆ITSの防災活用に向けて(2/3 ページ)

[朴尚洙,Automotive Electronics]

地図への書き込みで情報を把握

 次に、国土交通省で千葉国道事務所の事務所長を務める遠藤和重氏が、東日本大震災における初動対応について説明した。

 千葉国道事務所は、5つの出張所で分担して千葉県内の国道を管理している。東日本大震災の発生直後には、全出張所がパトロールを開始。大規模な液状化現象が発生した浦安市などを管轄する船橋出張所を除いて、地震発生から6時間以内にパトロールを終えている。船橋出張所も、自転車に乗り換えるなどして、12時間以内にパトロールを完了した。さらに、36時間以内には、被災個所を仮復旧し、交通規制を解除している。

 このように、千葉国道事務所では、管理対象の国道に関する対応の手際は良かったと言える。遠藤氏は、「災害時の対応については平時から訓練しているので滞りなく進めることができた。震災当日、私自身はさいたま市で会議中で千葉国道事務所にいなかったが、副所長の指揮の下きちんと対応できた」と振り返る。

千葉国道事務所の遠藤和重氏千葉国道事務所で集約した千葉県内の被災/通行規制情報を書き込んだ地図 左の写真は千葉国道事務所の遠藤和重氏。右の写真は、千葉国道事務所で集約した千葉県内の被災/通行規制情報を書き込んだ地図である。(クリックで拡大)

 問題になったのは、国道以外の道路、高速道路や県道の被災状況に関する情報共有である。NEXCO東日本が管理する高速道路や千葉県が管理する県道の被災/通行規制情報は、路線名がどこにあるか分からないことも多かったため、地図に書き込むことで情報把握を図った。「千葉県は道路の被災や通行規制は数十カ所で済んだので地図に書き込むことができたが、東北地方や茨城県では難しかっただろう」(遠藤氏)という。また、千葉国道事務所では、千葉県外の被災/通行規制情報を手に入れられなかったことも問題になった。関東地方の情報は関東地方整備局に集約されていたものの、その集約した情報が事務所に配信されなかったのである。

 首都圏直下型の大地震が予測される中、これらの問題を解決するための取り組みも始まっている。2011年4月には、道路区間にIDを割り当てることで道路に関する情報を共有しやすくする区間ID方式が一部の道路に適用された。また、地震発生時における関東地方内での連携を目的に、防災関係の35機関が参加する関東防災連絡会が2011年秋に発足している。

「電子国土」の活用に向けて

 続けて、国土地理院で地理空間情報部長を務める村上広史氏が、災害時における通行規制情報の集約と地図データ上への反映に関する取り組みを紹介した。

 国土地理院は、東日本大震災の影響によって通行が規制されている道路の情報を集約している。この情報集約では、道路管理者から送られてくる情報を手作業で地図データに落とし込んでいた。村上氏は、「通行規制情報の表現方法や形式が異なるので、総合的に状況を把握したり、情報集約を自動化したりするのは困難だった」と強調する。

国土地理院の村上広史氏 国土地理院の村上広史氏

 東日本大震災から約半年が経過した2011年8月の台風12号の際も、手作業で通行規制情報は集約するという状況に変わりはなかった。村上氏は、「国土地理院が作成している2万5000分の1縮尺の地図は、『電子国土基本図(電子国土)』という地理/位置情報システム(GIS)として利用できる状態になっている。しかし、各行政機関において、GISを活用したシステムを構築するための予算が不足している。たとえシステムがあっても、地図情報の処理をGISで行うためのスキルが定着する前に担当者が異動してしまう。このため、紙地図で地図情報を処理する業務形態から脱却できない。平常時に紙地図ベースで地図情報を処理している以上、災害時にGISを使った対応は不可能だ」と指摘する。

 そこで国土地理院は、行政担当者がGISを扱いやすくするように、Microsoftの「Excel」で作成した帳票データを地図データ上に変換して載せられるツールを提供するなどしている。村上氏は、「行政担当者は、どのような部署を担当する場合でも役立つExcelの利用法には習熟しているので、Excelベースのツールを提供することにした。こういった施策により、行政機関における電子国土の浸透を進めて、災害時における通行規制情報などの情報集約を早急に行える体制構築を実現したい」と意気込む。また、2012年度中に、電子国土のタイル形式をGoogle Mapsと同じものに変更することも明らかにした。

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