かわいい素材に黄泉(よみ)がえる廃棄物たちマイクロモノづくり 町工場の最終製品開発(19)(2/3 ページ)

» 2012年03月21日 12時50分 公開
[三木康司/enmono,@IT MONOist]
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廃棄物→ソーシャル・マテリアル(素材)へ

 ナカダイが、既存の産業廃棄物処理と別で立ち上げた事業が、リマーケティング事業です。リマーケティング事業の一貫として作ったWebページ「モノ:ファクトリー」にナカダイによりきれいに分別されたリサイクルの廃棄物製品が、Webサイトを通じてオンライン購入できる仕組みを持っています。

産業廃棄物処理をデザイン化したモノ:ファクトリーのホームページ
とても産業廃棄物とは思えないキレイな素材。ネット販売している。
モノ:ファクトリーの考え方、産業廃棄物から新しい価値への変換

 Webページのキャッチコピー「発想はモノから生まれる」という言葉から分かるように、クリエイターやデザイナーなどに「これだけきれいな、“決してゴミとは思えないような”廃棄物」を見てもらい、実際に手に取ってもらい、そこから新たな製品を生み出してもらおうという試みなのです。

 先ほどご紹介したように廃棄物の分別に対し、非常に神経を使っていたのは、それらを「製品として使ってもらう」ためでした。丁寧に分別し、もう一度命が吹き込まれるための準備というわけなのですね。

「モノ」として世の中に生み出された目的をまっとうさせる

 ナカダイ前橋支店では8年前から、中台支店長を中心として、廃棄物を再販するリサイクル事業をスタートしたということです。前橋支店で処理をする廃棄物は、メーカーの生産過程で、ほんのちょっとした不具合で「不良品」の烙印を押されてしまった、汚れも、匂いもない、ほぼ新品の部品や、不良在庫になってしまった製品です。

廃棄物の中からきれいに分別され、次の「命」を吹き込まれるのを待っている「素材」に囲まれて、事業について語る中台氏。

 中台氏は、廃棄物のことを「この子」と呼びます。

 まるで人間の子どもに声を掛けるように、ちょっと愛おしい感じで、きれいに陳列された素材を扱うのです。

「この子は、本当は車やテレビなどのいろいろな製品になって世の中に出ていく運命だった。でも、ほんのちょっとした運命のいたずらで、ゴミとしてウチに来てしまった……。それを何とかもう一度、世の中に送り出して、別の人生を送らせてあげたい。この子にモノとしての別の価値を与え、人生を全うさせてやりたい」――この中台氏の思いが、現在のナカダイのリマーケティングの事業理念を象徴しています。また私自身は、その思いに「死んだ人が黄泉(よみ)から次々に帰ってくる」ような感動を覚えました。

 それが、ある意味非常に地道だけれども、社会的意味のある活動「モノ:ファクトリー」を支える原動力であるということを感じ取ることができました。

 中台氏のお話を聞きながら、工場見学をさせていただいて、廃棄物をどれだけ「丁寧に」分別するのかが、ナカダイの事業の本質であるということも感じとりました。

 一般の産業廃棄物業者は、分別などにあまり力をいれていないということ。一方ナカダイは、分別に徹底的にこだわり、「ゴミ」ではなく、「製品・商品」として廃棄物を極力、世の中に送り出していこうという強い意思でもって動いているのです。

ナカダイの素材一覧

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