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» 2012年03月28日 17時43分 公開

EVベンチャーの試作第2号車が完成:SIM-Driveが走行距離351kmの小型EVを試作、大型車並みの車室容積を確保 (2/2)

[朴尚洙,Automotive Electronics]
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新構造アッパーボディとCRPP採用のドアで軽量化

 重量は1580kgで、SIM-LEIと比べて70kg軽くなった。軽量化の要因は2つある。1つは、コンポーネントビルトイン式フレームと組み合わせるアッパーボディに「スチールスペースフレーム」と呼ぶ新構造を採用したことだ。スチールスペースフレームでは、鋼管内部に高圧を注入して、複雑な形状を一体成形できる。このため、SIM-LEIで採用したモノコックボディよりも軽量で剛性が高く、部品点数も削減できるという。SIM-WILのアッパーボディの重量は、SIM-LEIの409kgよりも49kg軽い360kgとなっている。ねじり剛性も、SIM-LEIの28.7KNm/度と比べて25%増の36.1KNm/度まで伸ばすことができた。

 軽量化のもう1つの要因は、前方と後方のドアにおけるCFRP(炭素繊維強化プラスチック)の採用である。SIM-LEIのドアは鉄製で、1枚当たりの重量は60kgだった。一方、SIM-WILのドアは、これより44%軽い33kgとなっている。

「SIM-WIL」のアッパーボディの構造CFRPを採用したドア 左の図は、「SIM-WIL」のアッパーボディの構造である。右の図では、ドアにCFRPを採用したことによる軽量化の効果を示している。(クリックで拡大)

 SIM-WILの外形寸法はBセグメントと同等ではあるものの、ホイールベースは2950mmと高級セダンに匹敵するほど大きい。一般的に、自動車は、ホイールベースが大きいほど最小回転半径は大きくなる傾向にある。そこで、フロントサスペンション構造を改良し、Bセグメントの車両と同等クラスの5.4mという最小回転半径を実現した。この他、前軸と後軸の荷重配分を前軸寄りに改め、タイヤサイズも1インチ増の18インチにして、操縦安定性と乗り心地を向上したとしている。

「SIM-WIL」のシャシーの仕様ホイールベースと最小回転半径の比較 左の図は、「SIM-WIL」のシャシーの仕様である。右の図は、ホイールベースと最小回転半径の比較である。SIM-WILは、実線で示された他車の平均値よりも最小回転半径が小さい。(クリックで拡大)

 インホイールモーターは、内部構造を見直して、SIM-LEIの課題となっていたトルクリップル(初動時の回転ムラによる振動)を大幅に低減した。モーター1個当たりの出力は、30秒定格が65kW、連続定格が20kW。このモーターを、4個の車輪全てに組み込んでいる。0〜100km/hの加速時間は5.4秒で、SIM-LEIの4.8秒よりも長くなっているものの、「中級スポーツカー並み」(SIM-Drive)としている。最高時速は180km/hである。

 走行エネルギー源となる2次電池は、総容量が35.1kWhのパナソニック製のリチウムイオン電池パックを搭載している。このリチウムイオン電池パックの電池セルは、ノートPCなどに用いられている18650サイズ(直径18mm×高さ65mm)のものを使用している(関連記事)。電池パックの出力電圧は304V。SIM-LEIでは、高い充放電速度や長いサイクル寿命を特徴とする東芝の「SCiB」を用いていた。「パナソニック製のリチウムイオン電池パックは容量の大きさが特徴となっている。電池パックを組み込むためのスペースはSIM-LEIとSIM-WILはほぼ同じだが、総容量はSIM-LEIの24kWhの1.5倍近い35.1kWhまで増やすことができた」(SIM-Drive)という。

「SIM-WIL」の可搬型充電器 「SIM-WIL」の可搬型充電器(クリックで拡大)

 また、スーツケース型の可搬型充電器を新たに開発した。この可搬型充電器に、SIM-WILに装備されているCHAdeMO規格に準拠する急速充電コネクタと、100V/200Vの家庭用電源を専用ケーブルで接続することにより充電が行える。SIM-LEIは急速充電にだけ対応していた。満充電までの充電時間は、急速充電が3時間、可搬型充電器を使った200V充電が12時間である。

 これらの他、34の参加企業/機関から47種類の技術が提供されたという。

「SIM-WIL」に提供された技術の概要 「SIM-WIL」に提供された技術の概要(クリックで拡大) 出典:SIM-Drive

 また、第3号車の開発には、26の企業/機関が参加する予定。開発期間は2013年3月までの1年間である。清水氏は、「積水ハウスや橋本総業、三井不動産、三菱電機といった、住宅/設備関連の企業が、エネルギーのスマート利用の観点で参加している。第3号車はEV単体としての性能に加えて、エネルギーのスマート利用についても“ハイパフォーマンス”であることを目指して開発を進めたい」と述べている。

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