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» 2012年04月01日 00時00分 公開

エイプリルフール、そして技術の無駄遣い:童心に返る――春のおばかモノづくり祭 (2/4)

[小林由美,@IT MONOist]

何でも板金化したくなるの

 神奈川県川崎市の板金加工業 リ・フォースの椛沢英一氏は、板金屋の性(さが)か、身の回りのものを“何でも板金化”したくなってしまうそうだ。いわゆる、職業病である。

 ある日、友人(忍さん)が東京マラソンに出ると聞いて、応援グッズを用意した椛沢氏だが、やはりそれも板金製だった(実話)。

リ・フォース 代表取締役 椛沢英一氏と、「忍さん応援旗」

 この応援旗は、SUS430 2B(t=0.3mm)と、SUS430 2B(t=1.0mm)で製作。「風が吹いてもなびかない。雨にも負けない。二の腕のシェイプアップにもいかが?」(椛沢氏)。

 次に、漫才の“ ツッコミ”で活躍するハリセンも板金化してみた。こちらは、アルミ(5052S t=0.5mm)で製作。

板金製 ハリセン

「階段状に90度曲げを繰り返し、直剣で深く追い込んでから、手で曲げ込みました。最後に持ち手部分を万力で圧縮して作成し、そこにガムテープを巻いて完成。最後が手曲げになるので、薄板軽量化のためにアルミを採用しました。作業時間は15分程度でした」(椛沢氏)。

 これで頭を軽くたたくと、「ぼよんっ」となる。軽くたたく分には、痛くない。しかし、漫才の現場で使ったら、ちょっとした事件になるかもしれない……。

豆知識:直剣とは、要はパンチの一種です。
ハイレグ直剣パンチ、ほか(Ai-Link:アマダ)


編集部注:一部は実話ですが、基本的にネタです。工程に関する記述は本当です。

退屈な会議のお共に

 3次元造形や3次元データ作成のサービスを提供する長野県の企業 トレソル。同社 代表の藤岡潤一氏は、RP(ラピッドプロタイピング)を使って個人的に花瓶を作ってみたり、自宅の水栓を修理してみたりと、日常でも3次元データを積極活用している。もはや、同氏にとって3次元データは、生活において欠かせないものなのか。

トレソル 代表取締役の藤岡潤一氏

 さて、そんな同氏でも、製作するにはさすがに「ちょっと、おばか過ぎるかも……」と、躊躇(ちゅうしょ)したものがあったそうだ。

 「この企画をきっかけに、中断していた、あるモデルを完成させました」と話す藤岡氏。その名は、「めびうすりんぐ すりーでー」。リング状のかごがまさに、メビウスの輪になっており、その中を鋼球がころころ転がるというおもちゃ。「子どもの頃、よく紙で作ったメビウスリング。表が裏になって、裏が表になって、またまた表が裏になって……という感覚を、最新ツールを使って実現しました」(藤岡氏)。

 退屈な会議には、この「めびうすりんぐ すりーでー」をぜひ持参したい。これをいじくりながら、「こんな無駄な会議やめてください。この金属玉をどうやって入れたのか、考えている方がまだ有意義です」と無言の訴えを込めてみるなどいいかもしれない。

 3次元CADでモデリングした後、3次元プリンタ(STRATASYS社「uPrint Plus」)で出力。内部の鋼球はインサート造形(造形後に入れたものではなく、一緒に造形したもの)。

鋼球のインサートってどうやるの?

 藤岡氏が、ちょっと気になる、鋼球のインサート造形の方法を教えてくれた。

1.球体を置きたい場所はサポート材で埋まってしまうので、その部分には3次元CAD上で球体と同じ径の円柱のモデルをマルチボディーで作っておく。

 円柱の高さは後に出てくる「フタ」の厚み分の寸法(a)を足す。

 高さ=2r+a

2.円柱の上面まで造形したらポーズ(一時停止)するように造形ソフトで設定しておく。このポーズの間に円柱を取り出す。円柱には、サポート材が外れやすくする工夫をしておく(uPrint Plusは、サポート材が外れやすく改良されており、その特性を生かした)。

3.円柱を取り除いた後、空間に球体を入れる。それから造形を再開するが、球体を入れただけではその上の空間には積層が続かない(窪みになっているため)。そこで「フタ」が必要になる。この窪みに収まるような形状をサポート材で形成するようなモデルを別で造形しておく。

 このはめ込むサポート材のフタの形状は、「半径r」「高さ=r+a」の円柱から、半径rの半球をくりぬいた形状ということになる。フタも後で溶かして取り除くので、サポート材とした。

4.後はフタをして造形再開。完了後サポート材を除去する。

「今回の作品には、窓があるのでフタはモデル材でもよかったかも。周りのサポート材が溶ければフタが宙に浮くのでこの窓から取り出せますね」(藤岡氏)。



関連リンク:
トレソル

編集部注:ネタですが、技術概要は本当です。

モノづくりの“あるある”

 製造業の部品調達・流通を支援するの商社のエムエスパートナーズ(横浜市鶴見区)。日々、加工業と製品メーカーとの橋渡しをしながら、さまざまなモノづくり事例を見てきた伊藤昌良氏だが、その中には「えっ、これ、売れると思ってるの?」と思う設計や製品企画もあったという。

エムエスパートナーズ 代表取締役 伊藤昌良氏

 本企画のため、伊藤氏が手掛けた製品は、以下。製造業の“あるある”を集めたというものだとか。皆さんは、これが一体何モノか、想像がつくだろうか?

これは何か

 その答えは、「お守り」。そして、用途は「あなた次第」だという……。「事務所にある不良品を寄せ集めて作りました。『売れないB2Cの典型例』です!」(伊藤氏)。

同社の紹介資料

製品概要

◇製品外形

全長=172mm、最大外径=φ21mm

◇構成部材と材質:※主に余り物

  • カウンターウェイト:A5056B
  • マルチラバー:NBR
  • ゴールデンシャフト:SUSXM-7

◇販売想定コスト(単価):3500円(500本単位で発注すれば、1500円)

 カウンターウェイトのカスタム、オリジナルデザインも対応可能。



「『下請けから脱却だ! B2Cで売り上げ伸ばすぞ〜』って意気込んで開発を始めたけど、外注費を払うと、もうけが減るからって、自社だけでできる製品を作ってみた。そしたら、こんなものができた……。どうやって使ってもらおう……、売れるかどうかなんて市場に出してみなきゃ、分っかんないよねぇ? ――そんな風にならないように……。売れない自社商品開発の典型例として、机の上に置いて日々反面教師として、間違った自社商品開発に陥らないようにするために。効能バッチシなお守りです。なお、副次的な効能として、開発のアイデア出しで行き詰ったときや、残業が続いて疲れがたまったときには『肩たたき』『足ツボ押し』として利用できます」(伊藤氏)。

 もう1点は、アルミパイプ製 鍋敷きだ。

アルミパイプ製 鍋敷きだそうです

「熱伝導率が高いから、鍋敷きの断熱効果が薄い! A1050の引き抜き材φ9.53×t0.9(mm)のアルミパイプを使用することで、軽量化が実現しました。ただ1つの利点は、軽いので持ち運びに便利なこと」(伊藤氏)。鍋敷きになっていない。


編集部注:ネタですが、構成部材に関する記述は本当です。

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