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» 2012年04月05日 11時55分 公開

S&OPプロセス導入 現場の本音とヒント(4):ウチだって「普通の活動」ができなくて倒産寸前だったんデスヨ (2/3)

[S&OP-Japan研究会,@IT MONOist]

問題の根はどこに?

 「アレが1つの大きな転機デシタネェ」

 Pさんは、この話に基づいて1990年代半ばにおけるOKメディカル社の課題について整理してくれました。

(1)部門および国の間で大きな壁が存在していた それぞれの部門・国の間で情報を含めた連携がないまま独自の計画策定を余儀なくされ、計画未達成が続くことで相互不信の状態に陥っていました。

(2)問題発生時に迅速に対応するための体制が構築されていなかった 何年も同じような事象が発生していたにもかかわらず、組織として問題を放置することとなり、結果として計画達成に大きな影響を与えるようになっていました。

(3)全社戦略と各部門・各国との計画・活動が連動していなかった 当時のOKメディカル社は、グローバル戦略として生産拠点最適化を試行し始めた時期でした。しかし、戦略自体が全社に浸透していなかったため、実際には国レベル・部門レベルの活動とは計画段階から既にリンクしていない状況でした。

(4)部門・各国間でのコミュニケーションが不足していた 各部門(営業部門・生産部門など)や各国(グローバル本社・日本法人・オーストラリア法人)の間で、問題の話し合いや情報共有するような定期的な会議体などはなく、コミュニケーション不足の状態にありました。

転換期の見誤りがリーダー企業が倒産の危機に

 「ホントに、アノときに会社として迅速に対応がデキていれば、ネ……」

 Pさんはこのように言うと、その後の同社に訪れた危機について語ってくれました。まとめると次の2点がポイントのようです。

なぜ問題解決が遅れたのか?

危機感が欠落した経営トップ

企業の根幹に関連する課題が山積していたにもかかわらず、当時OKメディカル社は以下のような理由から、危機感に乏しく、むしろ改革には消極的な考えを持っていた経営陣が多かったことから、変革は遅々として進まなかったのです。というのも、当時のOKメディカル社は次のように、今まで通りの方法で、一見「うまくいっている」状況だったからです。

  • 業界をリードする企業の一角を占めていた
  • 研究開発型企業として強烈な成功体験を有しており研究陣に対して自信を持っていた
  • 自社開発の世界トップ製品を含む大型製品(年商1000億円超製品)を複数有していた
  • 無借金経営に加え高い売上高営業利益率など財務内容が優れていた

業界再編の流れに乗らない経営方針

当時、この業界では、「有望大型製品中心の拡販モデル」が確立され、将来の有望開発品を有する企業の“丸のみ”を狙った「規模追求型買収」による業界再編の嵐が吹き荒れていました。一部企業による寡占化が急激に進んでいった時期でしったが、対してOKメディカル社は独自路線を歩み、業界他社には追随しなかったのです。



 このように「課題の先送り」となったことは企業としての「転換期」を見誤る結果となりました。結果、1990年代まで業界をリードする企業の一角を占めていた同社は、2000年代半ばにはトップ5からも陥落する事態を招き、一部のアナリストの間では「このままでは倒産するのでは?」とまでささやかれる状況に陥っていました。

 Pさんによると、「そこまで苦境に追い込まれて、やっと会社のトップは重い腰を上げたノデスヨ……」と悔しそうに語りました。

OKメディカル社の改革とS&OPプロセスの導入

 OKメディカル社では、このつらい経験をきっかけに、S&OPプロセスを導入した課題解決を目指すことになったのです。

バリューチェーン上の課題チェックリストで見てみると

 Sさんも、その日持ってきていた『S&OP入門 グローバル競争に勝ち抜くための7つのパワー』にある「S&OPの7つのパワー」の図を基に、当時のOKメディカル社の課題を確認してみました(「S&OPの7つのパワー」についてはこちらの記事にも掲載されています)。

 チェックリストと対比すると、当時のOKメディカル社では、4つの課題が該当していたようです。それぞれの項目は次の通り。

  1. グローバル調整力
  2. 俊敏力
  3. 戦略実行力
  4. クロス・ファンクショナル力

ビジネス要件を整理すると

 Pさんによると、これらの課題を解決するために、OKメディカル社における重要なビジネス要件は以下のようにまとめられたそうです。

新製品の研究段階の初期から各製品の販売終了までをカバーできるプロセスの構築 同社のビジネスにとって根幹である研究開発を含めた全社的かつ将来を見据えた総合的な業務プロセスの確立が求められていました。

グローバル市場に対応した生産拠点再構築を可能とすること 同社は当時80超の国・地域に製品を提供(現在100超の国・地域)していましたが、高コスト体質が顕在化してきており、グローバル全体を視野に入れた生産体制の見直しが急務となっていました。

確実な需要マネジメント・供給マネジメントを保証できるプロセスの構築 生命関連製品である製品の安定供給は、医療関連企業にとっては絶対的な責務であり、どんな理由があっても供給維持を図れる体制が求められていました。

 ここで、OKメディカル社の課題を解決に導き同時にビジネス要件を満たすプロセスとして、S&OPが導入されたということでした。

事例研究:OKメディカル社のS&OPプロセスの概要

 Pさんは、OKメディカル社に導入されたS&OPの現状について話してくれました。

全世界統一システムによるデータ収集の仕組みを確立 業務システムが各国別々に作られていたことが原因で、情報伝達がうまくいっていなかったことを反省し、レガシーシステムから、経営陣が適時に確実な決断ができるようにする目的で、統一したシステムへの移行が進行しています。財務・生産・販売・購買・人事・予算などを総入れ替えするものです。

グローバル全体でバリューチェーン・マネジメントの仕組みを確立 新製品開発から顧客への供給〜製品ライフサイクル管理までを組み合わせた一気通貫のプロセスを確立しつつあります。

新製品開発をS&OPのプロセスに取り込み、製品導入に関連する活動を集約 研究開発部門主導の開発品進捗管理、開発ポートフォリオによる優先付け、マーケティング部門主導のマーケティング戦略、生産設備などの能力も含めた供給計画やトレーニングを含む準備活動までを、機能的に役割分担しています。新製品の発売までを一括管理する仕組みを構築しています。

各国・地域とグローバル部門の連携による販売計画調整機能 グローバル・マーケティング部門による各国・地域で設定された販売予測のモニタリングおよび実績に基づく生産部門との調整機関としてS&OPプロセスを活用しています。

生産ネットワークの再構築 アメリカ・ヨーロッパ・アジアの3拠点に原材料などの在庫を一括管理するネットワークを構築し、国レベルでの対応からグローバルでの中央集権体制を確立しています。

生産ネットワークへの外部製造設備(アウトソーシング)の組み込み 欠品を起こさないための柔軟な生産体制の確保を進めています。

優先サプライヤとの戦略的提携関係の強化 グローバルおよび地域/各国単位でのサプライヤ選定と協働作業が進めやすい体制を構築しています。

グローバル財務・予算管理部門主導による計画モニタリングと調整活動 必要に応じた年次計画変更提案と経営会議への提案をスムーズに実現できるようにしています。

本社CEO主導の経営会議による経営判断と直結 全部門のトップが参画することで、人財計画・財務計画・戦略など全社の経営関連事項の決定プロセスおよび各部門間に跨る課題解決機関として機能しています。

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