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» 2012年04月13日 11時15分 UPDATE

3次元って、面白っ! 〜操さんの3次元CAD考〜(10):「妖精眼鏡」で遊んで考える、3Dデータのビジネス (2/2)

[水野操 ニコラデザイン・アンド・テクノロジー/3D-GAN,@IT MONOist]
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クリアすべき課題

 妖精眼鏡にも、当然、課題があります。一番の問題は「マネタイズ(お金に変えること)が難しい」ということです。これが出来なければ、ビジネスにはなりません。

 AR自体は珍しいものではありません。「ちょっと何かが見えた」くらいで、お客さんはお金を払ってくれません。おまけに、ARのアプリケーションを普通に開発すると結構な開発費用が掛かります。つまり、金をかけた割には、その費用の回収が難しいのです。技術的には実現可能でも、費用対効果が出づらいのですね。

 そういうわけで、「お金の問題をクリアすること」が、ARアプリの事業化には必要です。

3D-GANとしてのこだわり

 もう1つ、3D-GANとしてのこだわりもありました。もちろん言うまでもなく「3D」です。多くのARアプリでは、例えば、アプリのカメラで“現実世界”を写すと、写真に映ったお店や建物にふせん紙のようなサインが現れたり、あるいはそこからWebページに飛べたりというものです。

 前者の場合には、正直、「面白みがあるかどうか」という問題もありますが、そもそも「3D」という趣旨に沿いません。後者は、「別にQRコードで良いのでは?」という話ですね。

 もっと言えば、そもそもARアプリでは、“もともと3次元”であるこの現実を「さらに拡張しよう」としているわけです。つまり、“3次元のモノ”を“拡張する”わけですから、拡張のためのネタは「やっぱり3次元データでないと」というところにこだわったわけです。

アプリケーションとデータの分離

 妖精眼鏡のアプリとしての特徴としていえるのは、

「“アプリケーションの部分”と“データの部分”を分離した」

というところでしょう。

 ある日、自分のコンテンツをAR化したいと思ったとき、一般的なARアプリの場合では、何をしなければならないか。

 単に“表示すべきデータ”を準備する(オーサリング)だけではなくて、“アプリケーションそのもの”も準備しなければなりません。なので、あっという間に開発コストが膨れ上がってしまうのです。

 妖精眼鏡なら、“アプリケーションの部分”はApp Storeからダウンロードするアプリによって共通化できます。なので、やるべきことは「表示したい3次元データのオーサリング」だけです。

 そうすると、どうなるでしょうか。例えば、ARを使って自分たちのプロモーションをしたい場合なら、広告を出すよりも、自分のARコンテンツを実現した方が安価になるのです。

 つまり、数あるARアプリの中における差別化の第一点は、「汎用性である」といえそうです。

妖精眼鏡の使い方

 ここでちょっと、妖精眼鏡の使い方を説明しましょう。流れとしてはこんな感じになります。

 使うのが初めてという方は、まずアプリのダウンロードからですね。

yk_3d10_06.jpg

 このアプリでは、後から3次元データをダウンロードして追加していくことで、ユーザー側はアプリさえ持っていれば、いろいろなものを見られます。

 また、3次元データを提供する側にしても、妖精眼鏡をプラットフォームとして使えば、「データのオーサリング」と、「データをダウンロードさせるためのサーバの用意」だけで済みます。

 データを“見る側”と“見させる側”、いずれにしてもARを使うためのハードルが下がると言えそうです。

yk_3d10_06_2.jpg

やっぱりココも違う

 前述したように、3次元データを使ったARは、妖精眼鏡が別に初めてというわけではありません。だからこそ、技術的にこだわった点があるのです。

 どんなアプリでも反応が鈍いと興ざめですから、表示の速さ、レスポンスの良さにこだわっています。実際に他のARアプリと比較しても、表示速度については優れているようです。

 あと、もう1点が、3D-GANが「コンテンツホルダー(作品制作者)に近いところにある」ということです。ARアプリで最終的に大事になるのは、「コンテンツの力」。やっぱり、人は面白いコンテンツに惹(ひ)かれるんです。

 3D-GANという場所には、皆さんも知っているかもしれない有名なコンテンツホルダーの皆さんが、ふらっと訪れることも少なくないのです。

まずは遊んでみてください

 妖精眼鏡は無償アプリです。気軽にApp Storeからダウンロードして遊んでみてください。マーカーは、妖精眼鏡のWebページからダウンロードできます。


 3次元データの良いところは、1つのソースから、いろいろなことができることでしょう。また、人によっては「妖精眼鏡」を試している間に、「自分だったらこんな風に活用できる」というアイデアが出てくるかもしれません。

 「3次元データを使うと、こんなことができるんだ!」という気付きになればうれしいです。

今後の展開は?

 妖精眼鏡は、ARアプリですがB2Bのビジネスのプラットフォームとしても機能します。ということで現在、3D-GANでは、この妖精眼鏡を使ったビジネスができるような環境を整えています。それから、2012年6月に開催される「デジタルサイネージ ジャパン 2012」にも出展します。

デジタルサイネージ:電子看板のこと。

 最後に、妖精眼鏡の楽しいビジネスの話題を1つ紹介します。

 先日、BSジャパンの『ギルガメッシュLIGHT』にレギュラー出演している石原夕里朱さんの全身スキャンをして、3次元データ化するという“妖精眼鏡がらみ”の仕事がありました。

 状況としてはこんな感じです。ちなみに「掲載しても問題なし!」とのことなので、サービスして写真付きです。どうりでアテンドした相馬さんの顔がニヤついていたわけです……。

 ちなみに、このスキャンを担当したのは、3D-GANの会員企業 ゼネラルアサヒです。

yk_3d10_07.jpg スキャン中……
yk_3d10_08.jpg 処理されるデータ
yk_3d10_09.jpg ついにARに!

 で、この3次元データがどうARビジネスにつながるのか? といえば、こういうことです。

 雑誌にギルガメッシュLIGHTの番組のプロモーションのページを掲載します。そしてそのページにARのマーカーも同時に掲載しておくというわけです。それに妖精眼鏡をかざせば、「おーっ!」っていう感じで、彼女が現れて誘ってくれるのです。「じゃあ、その番組を見よう!」ってことになりますね。

関連リンク:
ゼネラルアサヒ

 ということで、今日も3D-GANは、徹底的に「3D」にこだわっています!

筆者より:新しい会社始めました

 突然ですが、ワタクシ新しい会社を設立いたしました。「マルチ・ディメンション合同会社」という会社です。あ、もちろんニコラデザイン・アンド・テクノロジーも健在ですので念のため……。この新会社では、もっと3次元データを活用するためのサービスをビジネスのコアに据えてやっていきます。おかげさまで、既に3次元プリンタまわりのビジネスなども動き出しております。今後は、もっとその分野で面白いお話を皆さんにお伝えしていけるのではないかと私自身期待しております。



yk_mizuno.jpg

Profile

水野 操(みずの みさお)

1967年生まれ。ニコラデザイン・アンド・テクノロジー代表取締役。首都圏産業活性化協会(TAMA協会)コーディネータ。外資系大手PLMベンダーやコンサルティングファームにて3次元CADやCAE、エンタープライズPDMの導入に携わったほか、プロダクトマーケティングやビジネスデベロップメントに従事。2004年11月にニコラデザイン・アンド・テクノロジーを起業し、オリジナルブランドの製品を展開しているほか、マーケティングやIT導入のコンサルティングを行っている。著書に『絵ときでわかる3次元CADの本』(日刊工業新聞社刊)がある。




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