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» 2012年04月18日 14時50分 公開

中小企業連携とSNS活用の実情(2):コマ・コマ・コマ――優等生から“はみ出しモノ”まで (4/4)

[小林由美,@IT MONOist]
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今橋製作所

 難形状や難削材の加工を得意とする今橋製作所(茨城県日立市)はシンプルなSUS303製コマで参戦。今回の形状はシンプルだったが、同社は技術者教育の一環で、複雑な3次元モデリングと切削加工にも挑戦している。

今橋製作所のコマ
アロワナのオブジェ:SolidWorksで全てモデリングし、切削加工した

大物ターニングの菊池精機(チーム名)

 菊池精機(茨城県日立市・那珂市)のコマは純銅製。つまみ部には赤い輪ゴムを巻き、接着剤で固めた。同社は、そのチーム名の通り、大物ターニング加工を得意とし、普段はこのコマの数百〜千倍以上ものサイズの部品を製作している。

菊池精機のコマ

茨城の“はみ出し者 3”

 以下では、あまりに個性的なアプローチを取り過ぎてしまい、もはや、さまざまな意味における“ルール”からはみ出しそうになっていた3チームのコマを紹介する。

【危険過ぎ】「TEAM:BADCOMPANY MITO」小島工具研削所+アサヒ精工

 小島工具研削所とアサヒ精工は工具メーカーであるが故に、工具(エンドミル)を作るプロセスと全く同様に、超硬を使い、グラインダー(CNC工具研削盤)による研削のみでコマを製作した。コマ外周側面は、ねじれ角60°のエンドミル(10枚刃)になっている。ケンカになったときには、相手のコマを“削って”バランスを崩し、弾き飛ばせるように考慮したということだ。

 当然、子どもが手の届かない場所に保管しなければならない。

エンドミルコマ:痛そう

 記者も実際に手に持ってみたが、結構、痛い。大人であっても、気を付けて扱わなければ指を切る恐れがある。

 危険なコマではあったものの、よく回るものに仕上がっていた。

【反則疑惑】「TEAM ねじ」赤津工業所

 赤津工業所の持ち込んだコマは、以下。

赤津工業所のコマ

 同社はネジメーカーだが、コマにはあえてネジは使わなかったという。真ちゅうで製作し、その軸部には軽量化と滑り止めを兼ねた穴を幾つか空けた。

 このように柄の長いコマだが、これを指だけでつまんで回すのは、至難の業だ。そう、これは竹トンボを回すように、両手で回すタイプのコマ……。コマ大戦は、「指で回す」というルールが明示されていたものの、「片手ではないと駄目」というルールはなかった。

 ひとまず、茨城予選の参加許可は下りたようだ。しかし「反則ではないのか」という参加者たちの目からくるプレッシャーの中だったせいなのか、赤津工業所の取締役統括部長 赤津浩史氏は緊張してしまい、うまく回らず初戦敗退してしまった。

 そもそも「指」ではなく、「手のひら」を使って回していたので、やはり反則だったのかもしれない。

 ちなみに、ネジの製造方法そのままで製作したコマもあった。赤津氏が言うには、先のコマの方が性能がよかったということだ。

赤津工業所のネジコマ

【回らない】「寸止め倶楽部」水戸精工

水戸精工「女体コマ」

 樹脂精密切削加工を得意とする水戸精工が持ち込んだのは、透明アクリルを切削して作ったコマ。インデックスロータリー(回転式割り出し位置決め装置)で切削加工した。

 このコマは、女性の裸体の上半身が描かれている。美しく仕上がったものの……、全然回らなかった。真ちゅうを底に埋めてみたもの、それでも駄目だった。もはやコマではなく、単なるオブジェと化していた。

 次回は、華麗なコマを、華麗に回してくださることを期待したい!

コマ大戦とSNS

 コマ大戦に訪れる人たちの多くが、SNSの交流とオフラインでの出会いは、あくまでセットだと考えているようだ。SNSというのは、電話やメールなどと同じコミュニケーションのための一手段(ツール)でしかない。SNS上だけでは当然、真の交流は生まれない。頻度は少なくても構わないので、とにかくオフラインで会うことを前提にSNSを利用している。

 SNSで交流する人たちがオフラインで一斉に会うきっかけを作ったのが、コマ大戦だ。

 コマ大戦は、製造業をめぐる多種多様な業種の人たちが集まる、いわゆる異業種交流会の役割も担っている。しかし単に、異業種交流といっても、集まったメンバーに共通の目的や関心ごとがなければ、そこでひとまずあいさつをして終わってしまう場合も多い。

 コマ大戦に参戦するには、何らかの手段でコマを製作し、持ち寄らなければならない。見る側も、参戦する人たちに興味があるからこそ、観戦しにくる。また、モノづくりにかかわる人だからといって、コマ大戦という“かつての製造業にはなかった雰囲気(ノリ)”のイベントを好むわけではない。

 つまり、コマ大戦には、「モノづくり」という共通の関心ごとを軸にして、かつ比較的価値観の近い人たちが集まってくることになる。なので、“その場限りのあいさつ”では終わらず、交流はその先も続いていく可能性は高くなる。実際、いままで接点がなかった地方の異業種団体同士がつながり、新たな交流が生まれている。イベント後の交流の継続でも、FacebookなどのSNSが一役買っている。SNSを使えば、離れた地方同士の人たちも、無理のない範囲で日々の交流を継続することができる。

 横浜、茨城で開催したコマ大戦の取材を通じて、小さなコマがきっかけとなり、日本全国のモノづくりに携わる企業や組織、個人のネットワークが新たに構築されていく、あるいはもともとあったネットワークが密になっていくことが体感できた。

 次回は、中小企業SNSシンポジウム内の講演や、「製造業的復興支援プロジェクト」、中小企業のSNS活用議論の要点など紹介する。

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