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» 2012年07月20日 17時00分 公開

3次元CAD環境導入企業に聞く:やっぱり2次元、といってはばからない社長はなぜ3次元CADを導入するの? (2/2)

[原田美穂,@IT MONOist]
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『原寸図』職人でなくても図面が引けないといけない

 北海道はメガソーラー設置が盛んな地域の1つだ。MONOistでも過去に幾つかのメガソーラープロジェクトを紹介している。

 双葉工業社は、北海道に拠点を置く企業だ。従業員数は約100人、北海道内に3つの工場を持つ。送電用の鉄塔や道路標識なども手掛ける一方で、メガソーラーのような大規模な太陽光パネル設置用の設備も製造している。従業員のうち、設計を手掛けるのは15人ほどだという。

 今回の取材では双葉工業社 はまなす工場 設計課 主任で、一級建築士/一級建築施工管理技士である武川昌史氏に応じていただいた。

双葉工業社 はまなす工場(同社Webサイトから) 同工場では設計・加工・組み立てまでの一貫生産を行っている

 「北海道の気象条件は梅雨や台風とは無縁なため、全国的に見ても日照時間も長い。太陽光パネルの発電効率が高いとされる涼しい温度環境にあることも有利」だという。とはいえ、北海道といえば冬は降雪がある。

 降灰、降雪のある地域での太陽光発電パネル設置にはさまざまな課題があることは、MONOistの他の記事で紹介している通りだ。降雪のある北海道では、いくら日照時間が多くても、太陽光発電パネルに雪が積もっては発電できなくなってしまう。

 「太陽光発電パネルは、地域ごとに最大効率となる角度がおよそ分かっています。本州の多くは角度30度程度ですが、北海道の場合はおよそ40度。角度が40度あれば、気温が低い北海道ならではのパウダースノーでは、雪が積もってしまうことはまずありません」

 これだけ聞くと、なんとも良好な発電環境と思えるが、逆にそのために検討しなければならない要素もあるという。

 「雪はパネルに貼り付いて積もらない代わりに、基本的にパネル設置面の下に落ちて積もっていきます。北海道で太陽光発電パネルを設置する際には、下に積もる雪に対応しなければ、埋もれてしまうのです。ですから、設置する際は高さを1.5から2メートル程度にしなくてはならないのです」

 なるほど、それでは足場を高くすれば済むだけのはずのようだがそうではないようだ。

 「一般的な太陽光発電設備は、地面すれすれに設置していますよね? 東京なら扇島にある設備などが知られていますが、あれは本当に地面に近いところに設置しています。地上0.5〜1メートルくらいでしょう。それはなぜか。風の力を避けるためです」

 扇島の太陽光発電設備については、過去に記事で紹介している通りだ。その際の画像をあらためて掲載しておこう。画像を見ても分かる通り地面すれすれに設置されている。扇島の場合は、海に面していることから、風の影響が大きい。

扇島 東京電力の扇島太陽光発電所(出典:東京電力)、初出

 パネルに角度があるため、背面からの風に弱い。背の高い設備にパネルを設置するとなれば、それだけ風に煽られることになる。それゆえに、強度は他の太陽光発電設備向けのものよりも高めておく必要がある。しかし、強度を高めるためにはより多くの材料が必要となるのではないだろうか。

 「その通りです。より強度を高めるには素材を肉厚にしたりする工夫が必要です。しかし、やみくもに肉厚にしてしまえば原価が高くなってしまいます。強度とコスト、この両方の折り合いをどこで付けるかは、シミュレーションの力を借りて検討しようと考えています」

特命主任 3次元化推進に動く

 そこで、3次元図面を使ったシミュレーション活用を進めているところなのだという。同社では3次元図面は以前から使われていたのだろうか?

 「当社もいままでは2次元図面が主流でした。建築材料の場合、『原寸図』という工程がどうしても必要です。従来、2次元で描いた図面を原寸で描き起こす際には、原寸書き専門の職人が起こしていました。しかし、職人の高齢化が進んでいる状況で、年々その人口は減少しています」

 北海道内で、原寸図を描ける職人は数えるほどだという。これは、この地域だけではなく、全国的に問題となっていることなのだそうだ。

 「原寸図を作る際は、大きな部屋の床に紙を置いて、本当に寸法通りに作る。この図面をまともに描くには、多くのノウハウが必要なのです」

 鋼材などを加工して納入する同社で、もっともあってはならないこととされるのが「誤作」だそうだ。作ってみたはいいものの、顧客の用件に合わないなどの手戻りが発生する。

「自社工場内で誤作に気付けばまだいい。しかし、顧客の現場にモノを持って行って誤作が発覚するといった事態は絶対にあってはならないことなのです。しかし、いくら熟練した職人であっても、人間にミスや見落としはつきもの。誰もが原寸図を作れて、かつ見落としがないようにするには視覚的にも分かりやすい3次元図面化は必須だと考えたのです」

 今回取材に対応いただいた武川氏は、そもそもAutoCADユーザーだった。12Jのころから使い続けているという。

 「3次元CAD環境を整備するミッションを負って双葉工業社に入社したのです」

 双葉工業社の3次元CAD導入計画に合わせて参加した武川氏は、同社主力製品が太陽光発電パネル向けの設備であることから、迷わず、クリーンテックパートナープログラムの利用を提起したそうだ。

 現在導入を開始したところなので、利用者全員の3次元CADの設計環境を整える計画。「今後はプロジェクトごとに2次元と3次元を並行して使っていき、徐々に3次元化を進めていく」という。

 武川氏は、3次元化の利点として次の点も強調した。

 「3次元でデータがあると、客先での説明に不自由することがなくなると期待しています。どうしても、込み入った説明を言葉だけで理解していただくのが難しくアイデアがあってもなかなか伝わらないことがあるのです」

双葉工業社が製造する太陽光パネルの架台部分の3次元CAD図面(資料提供:双葉工業社)
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