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» 2012年07月27日 11時20分 公開

雑談・品質工学 長谷部先生との対話(2):タグチメソッドで人を作る、技術を育てる (2/3)

[杉本恭子,@IT MONOist]

「今日のメシと明日のメシ」

――人材育成となると時間がかかりそうですね。

長谷部 基本の機能を見いだすセンスや、どの単位で試験をするかといったことは、経験が必要ですよね。失敗しながら経験を積んでいくことで、技術力がアップして「他社にはできない」ことができるようになる。そこまで行くには時間がかかります。でも時間がかかるということも重要なんです。他社が同じことをするにも、やっぱり時間がかかりますからね。すぐまねできるようなものは競争力がないっていうことです。やっていることは分かるけど同じことができない というのが、一番競争力があるわけです。難しいから、得たときの競争力は大きい……、というぐらいの覚悟が必要ですね。

――でも、いま製品を作らなきゃならないという現実もあると思いますが。

長谷部 現実的に稼ぐのとは、狙いが違います。今日のメシと明日のメシって言う感じですかね。

 人を育てて、技術を育てるから、明日のご飯が食べられる。でも今日ご飯を食べるためには、いまあるものをうまく組み合わせて何かしなきゃいけない。それはどちらかというと品質管理の方です。主婦のように有り合わせで今日はなんとかする。だけど明日からの分は、「あんたがんばって稼いできてよ」っていう話。品質管理と品質工学は両方必要です。今日のメシと明日のメシですから。誤解しやすいけど、意味が違います。

――即効性のある策として、海外での生産なども行われていますね。

長谷部 工場を海外に持っていくのは、まねのできることだから、競争力がなくなるのではないかと思っています。国内でも、下請けの会社に「丸投げ」して、社内に分かる人がいないということがありますね。それは、技術力がなくなっている、「技術の空洞化」です。

 タグチメソッドの記事が読み続けられているというのは、そのあたりの危機感の表れかもしれませんね。品質工学はいままでの品質管理とは違う観点なので、何かあるんじゃないかということでしょうか。

TQMと“棚を埋める”仕事

――「品質管理」という言葉でまとめて語られることもあるように思います。

長谷部 品質管理を担当している人たちの中には、「いままでの品質管理だけではどうもうまくいかない、市場のクレームがなくならない、何かおかしい……」と思っている人たちがいます。いままでのやり方にプラスして、何か別のことをしなきゃいけないと。だから品質管理の話の範囲が広がってきているんですね。そういう意味では、「昔の品質管理」+品質工学ということになるでしょうか。それは、TQM(Total Quality Management)、品質経営です。

 技術者はよく「棚にもうない」って言いますよね。

 要素技術を棚に入れておいて、棚から取り出してモノを作るんだけど、棚が空っぽになっちゃったら作りようがない。だから棚から使って作るのと、棚を埋める作業と両方が必要なんです。

 棚の技術を使って作るのが、いわゆる商品設計、システム設計です。理想的には、既に分かっている棚の技術だけで作れれば、信頼性の高い製品ができるわけですね。その棚に入れるまでの開発をちゃんやりましょうというのが、フロントローディングです。でも棚にいい技術がなくなると、組み合わせた後にいじっちゃう。だから、おかしなことになるわけです。

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