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» 2012年10月12日 10時00分 公開

ここはジャブローか!? 巨大ロボ工場に潜入:「いつかガンダムを作るんだ!」――西淀川の町工場でオヤジたちの思いが1つに (3/3)

[三月兎,MONOist]
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4mロボットはデカイ、どこで組み立てるかそれが問題だ

 こうした数々の課題を熱意で解決してきたプロジェクトメンバーたち。4mロボットのお披露目を、西淀川ものづくりまつり2012で行うと決め、開発のスピードも加速した2012年の春。新たな課題に直面しました。

 「4mにもなるロボットを一体どこで組み立てるのか!?」――。

 プロジェクトが発足して以来、坂本さんは研究所を三木製作所の3階に移しましたが、あくまでも普通の事務所。天井までの高さは4mもありませんし、そもそも3階ですからそこで組み立てるにはムリがあります……。

 定例会で「どうしましょうかねぇ」とメンバーが顔を見合わせていると、金増さんがあっさりと問題を解決してくれました。それまで2箇所に分かれていた自社工場を引越ししたのです。新たな工場は敷地面積が広く、入り口は4mロボットが歩いて出て行けるほどの高さを確保しています。

 「たまたまね。引越ししようかなーって、考えていたんですよ」と金増さんは笑いますが、自分の工場内に鎮座するはじめロボット43号機を眺める表情を見ていると、ホントは狙って引っ越したのでは? と疑ってしまいます。

新淀川堤防から、吉則工業を撮影 画像17 新淀川堤防から、吉則工業を撮影。奥に見えるはじめロボット43号機が、今にも歩いて外に出てきそうだ

 6〜8月は、急ピッチでロボットの組み立て、動作チェックが進みました。8月4日には、はじめロボット43号機の整備をする場に、筆者も同席することができました。この日は、気温が35℃を超える真夏日。冷房が行き届かない工場内で、汗だくになりながらも全員が満面の笑みでロボットのボルトの増し締めを行っていました。

手分けしてボルトの増し締めを行う開発メンバープロジェクトマネジャーを務める三木製作所の三木繁親さん (左)画像18 手分けしてボルトの増し締めを行う開発メンバー/(右)画像19 プロジェクトマネジャーを務める三木製作所の三木繁親さん。長期間にわたる自主参加プロジェクトが継続できたのは、三木さんの手腕と人柄による

 筆者が、間近で見るはじめロボット43号機の大きさと存在感に圧倒されていると、坂本さんは笑いながら言いました。「4mなんて小さいですよ。タンカーだって、新幹線だって何百mってサイズですから。川崎重工では、こんな小さいモノ作ったことがありません」。

存在感に圧倒された 画像20 工場内で間近に見る巨大ロボットの存在感に圧倒された

 こう言われると思わず納得してしまいますが、やはり、これだけ大きなロボットが町の小さな工場で製作されているのかと思うと、心底「スゴイ!」と思わずにいられません。

 はじめロボット43号機のフレーム製作を担当したニシザキ工業の西崎義継さんは「町工場は、部品を作って納めるのが仕事になるから、製品を作り上げる喜びがなかなか得られないんです。モノづくりの原点である“作る楽しさ"を若い社員に伝えたかった」と、プロジェクトに参加した動機を話してくれました。

金増さん 画像21 「自分の工場に巨大ロボットがあるのが、うれしいですよ。いつか、はじめロボットがここから歩いて町に出ていったら……」と金増さん

 プロジェクトマネジャーを務める三木さんは、「いやぁ、全員がただ働きですからねぇ。何も強制はできません。でも、作りたいから、楽しいから、作るんですよ」と破顔一笑。「大きなモノを作るときには、小さなことを積み重ねていくんですよ。そうすれば必ずできます」と坂本さん。ここにいる皆が笑顔に満ちています。

 何の役にも立たないロボットをなぜ作り続けられるのでしょうか。冒頭で紹介した4mロボットプロジェクトのポスターはこう続けています。

……ガレキ除去もできない。でも、ここにいるだけで夢をカタチにすることを教えてくれる。


 そう、これが答えです。そして――、この思いを胸に、挑戦し続けるプロジェクトメンバーたちは、口をそろえて次のように語っていました。

 「一人じゃできませんよ。だから、皆で作るんです」。

4mロボットプロジェクトのポスター 4mロボットプロジェクトのポスター

2013年の完成に向けて

 はじめロボット43号機は、来年(2013年)の完成に向けて、上半身と外装設計の見直しに取り掛かりました。当初のデザイン画では、コックピットの出入りが難しく、腕と頭部の可動域に干渉する可能性があったため、デザインも変更になったそうです。

 また、現在は静歩行でゆっくりとした歩行ですが、センサーの見直しやソフトウェアを改良し、動歩行できるようにし、歩行スピードも上げていく予定。操縦形式は、最終的に下半身はジョイスティック、上半身はマスタースレイブ方式を採用し、直感的な操縦を可能にする計画だそうです。


 はじめロボット43号機が完成するまでに、これからも数々の課題が予測されますが、その中でも一番切実なのは資金確保です。「誰か、5000万円くらいで購入してくれませんかねぇ」と三木さんは頭を抱えます。

 そこで、スポンサーおよびサポーターを募ることにしたそうです。個人法人問わず、1口3000円からプロジェクトに協力できるとのことです。これに関連し、来月(2012年11月3日)、はじめロボット43号機を開発している吉則工業で、サポーター向けイベントの開催が決定しています。当日は、ロボットの歩行デモンストレーションや試作パーツの展示などが予定されているそうです。「いつか、ガンダムを作りたい!」というこの大きな夢に賛同される方は、イベントに足を運んでみてはいかがでしょうか(詳細は、はじめ研究所の公式Webサイトにて)。

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